【心理学の起源】W. ヴントの要素主義と心理学の歴史 | サイコロブログ
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【心理学の起源】W. ヴントの要素主義と心理学の歴史

ヴントの要素主義のアイキャッチ 勉強ノート
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こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。

心理学は近年注目を浴びている学問ですが、いつ・どのように発展し始めたか知っていますか。

闇しあん
闇しあん

心理初心者「あいどんのう」

実は心理学の歴史は浅く、W. ヴントの要素主義という考えがたくさん批判されて発展してきました。

しあん
しあん

ヴントフルボッコ可哀想…

今回は、心理学の始まりといわれるW. ヴントの要素主義とその後の流れの最低限を解説します。

心理学のはじまり方・各学派の誕生をイメージしやすくなるので、心理系大学院受験生はしっかり押さえておきましょう。

そうでない人には、心理学が如何に客観的に心を扱おうとしているかが伝われば幸いです。

闇しあん
闇しあん

心理学 is 科学的学問

こんな人におすすめ!
・心理学の起源が気になる人
・ヴントの要素主義がよく分からない人
・心理学発展の流れをざっくり掴みたい人
※心理系大学院受験生は必須!

心理学のはじまりーヴントの要素主義ー

何かが孵化しそうなたまご

もともと心理学は哲学の一部の扱いで、学問として独立し始めたのは19世紀頃~になります。

しあん
しあん

心理の歴史はまだ浅いね

1879年にドイツのW. ヴントがライプチヒ大学に心理学実験室を創設したのが心理学のはじまりとされています(実験室ができたというよりゼミができた感じ)。

W. ヴントは、G. T. フェヒナー精神物理学(物理的な世界と精神的な感覚の関係性を測ろうとする学問)の影響を受け、生理学的な技術・考えを用いて実験的に人の心を研究することを目指したようです。

しあん
しあん

ヴントは心理界隈で通称「実験心理学の父」

\ ヴントの前はこちら /

心とは何かを研究するにあたり、人の意識に焦点を当てたW. ヴントは、細かな心的要素(意識の最小単位)が統合されることで人の意識(心)は構成されるという要素主義の考えを持っていました。

この考えでは、意識の内容は純粋感覚単純感情に分解ができ、これらが合わさることで1つの対象を知覚できる・意識できるとのこと。

要素主義の説明図

▼よく例になる「リンゴ」で
✓純粋感覚(pure sensation)
…意識的な世界を構築する究極的な単位。「赤い」「丸い」など。
✓単純感情(simple feeling)
…感覚以外の心的要素、感情。「美味しそう」「硬そう」など。

生理学的な一面でいうと、原子や分子のような物質の成り立ち方と同じような理論が意識(心)にも当てはめられると考えたようです。

闇しあん
闇しあん

C+O=CO2的な

蛇足ポイント

W. ヴントは晩年に『民族心理学』を著作。実験心理学だけでなく社会・文化的な分析アプローチも実は提唱していた

意識の観察方法ー内観法とはー

ハートと虫メガネ

W. ヴントの要素主義では、意識という曖昧な概念を客観的に捉えるために内観法(self-observation)が提唱されました。

\ 一字異なれば別物 /

内観法は、統制された条件下で意識を自己観察し、報告してもらうデータ収集方法を指します。

しあん
しあん

(実は結構重要な条件)

内観法を行うにはまず言語化が必要になるため、子どもなど言葉がまだ未熟な人への適応が難しいです。

また、意識の自己観察というのも主観的な体験報告では哲学的になってしまうため認めず、同じ刺激に対して同じ判断・報告する必要があり、被験者側に熟練度を求める制約があります。

しあん
しあん

客観視を求めてもまだ一般化は遠いみたい

内観法を行える被験者は確かに限られますが、

①生理学的な実験を用いて
②第三者からデータを収集する

上記の点から、心の体験をただ考えて終わるのではなく客観性を見出そうとし、哲学との差別化を図ろうとした意味では大きな一歩でした。

心理学の発展ーヴントへの批判ー

NOという棒人形

冒頭でも触れたとおり、心理学はW. ヴントに始まり、W. ヴントが批判されることで発展してきました。

▼主に批判されたポイント
・意識を対象にしたこと
・意識を分解可能と考えたこと

また、内観法についても、被験者の報告が本当なのか確かめる術もなく、やはり客観性は怪しい指摘があります…。

しあん
しあん

客観性もって心理学という学問を独立させようとした功績は偉大!

蛇足

W. ヴントの要素主義は弟子のE. B. ティチナーが受け継ぎ、アメリカで構成主義として心理学研究をした(が、あまり目立ってない)。ティチナーは意識を要素に分解はしても要素の統合には関心を示さず、要素の構成そのものに注目したのが違い(ヴントは意識の統合まで注目している)。

要素主義は、以下の流派を中心に多方面から批判されました。

ちなみに、上記の3流派はW. ヴントの批判後(20世紀前半)の心理学の3大潮流です。

闇しあん
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今回は3大潮流まで

批判①精神分析

W. ヴントの要素主義は「意識」に注目したのに対し、精神分析の祖であるS. フロイト「無意識」に注目しています。

意識だけでは人の心を分析するには不十分で、日常の言い間違いからヒステリーなど精神症状まで無意識にヒントがあると考えています。

闇しあん
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S. フロイト「意識だけじゃ不十分です」

無意識を重要視する中で自由連想法が生まれたり、A. フロイトの児童精神分析や自我心理学など多方面に影響していきました。

批判②行動主義

行動主義のJ. B. ワトソンは、意識はそもそも外部から観察不可能なため、外部から観察できることが重要と主張して「行動」に注目しています。

闇しあん
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ワトソン「観察可能な行動こそ客観的」

J. B. ワトソンは下記記事にも少し登場しているので、心理の勉強中の人はチェックしてみてください(行動主義もまたまとめたい)

刺激(S)と反応(R)で人の行動を説明できると唱えたS-R理論の考えは、B. F. スキナー(行動分析)C. L. ハル(動因低減説)などに受け継がれて新行動主義としてさらに発展していきます。

※動因低減説はまた記事化するかもです

批判③ゲシュタルト心理学

「意識は細かな心的要素に分解可能」とした要素主義の考え方に異議を唱えたのが、M. ヴェルトハイマーらによるゲシュタルト心理学です。

しあん
しあん

ゲシュタルトはドイツ語で全体的な構造を指すよ

闇しあん
闇しあん

同じ字書き続けると急に分からなくなるのはゲシュタルト崩壊

ゲシュタルト心理学では、人の心はただの要素の集まりではなく「要素の総和以上」と考えます。

つまり、心を1つのまとまりとして研究すべきで、要素に分解できるものではないと捉えて要素主義を批判しました。

おわりに:心理学発展のキーワードは客観性!

HISTORYを拡大する虫眼鏡

「心とは何か…心理学とは何か…」と、あいまいな心という概念は長い間主観的に語られ、哲学のうちの1つでした。

が、1879年にW. ヴントが心理学実験室を開設し、内観法という客観的なデータ収集法で意識の分析を試みたことがきっかけで、心理学は学問として発展していきました。

▼W. ヴントの功績
・世界初の心理学実験室の開設
・要素主義、内観法で実験的・客観的な分析を試みた

ただ、心理学が学問として独立する過程にはW. ヴントへの批判が殺到…。

批判されポイント主な批判流派批判ポイント
意識を対象にした精神分析(S. フロイト)無意識に注目
意識を分解可能としたゲシュタルト心理学(M. ヴェルトハイマ-)心の全体性が重要
内観法のやり方・制約行動主義(J. B. ワトソン)観察可能な行動が重要
(批判はほどほどに)

「心とは何か」という問いに明確な回答は難しいままですが、心理学は主観的なものではなくて客観的なデータを基に科学していく学問だと覚えておきましょう。

闇しあん
闇しあん

主観や体験で心理を語る自称専門家には要注意

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