こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理士としてカウンセリングをする際に、困りごとを話す側としてカウンセリングを受ける際に、どちら側にも起こりうる現象があります。
✓この先生なんだか父親みたいで嫌な感じ!
✓この患者にはよく思われたいな…
✓この患者は申し訳ないけどちょっと受けつけないなぁ… など
カウンセリングに限らず、対人関係で必ずと言ってもいいほど起こりうる相手への個人的感情は『転移・逆転移』という現象です。

まず起こることならスルーでも良くね?
このような感情から人間関係がもつれたり、感情的になりすぎて人の話に共感できないなど、実は転移・逆転移は人の話を聴くことを難しくしてしまいます。

援助者は何とかしないとまずいよ!
今回は、転移・逆転移がどんなものか、どう対応していけばいいかをかみ砕いて解説していきますよ。
日常の対人関係で特に気にする必要はないかもしれませんが、知っておくと対人関係や自分を冷静に分析しやすくなるので、勉強しておいて損なしです!
・心理職や人の悩みをよく聴く人
・対人関係や自分を冷静に分析したい人
・人間関係でいつも感情的になってしまう人
・転移・逆転移について興味がある人
※心理系大学院受験生は必須!※超頻出ワード※
転移・逆転移とは
転移はクライエント(相談側)が援助者に非合理的な感情を向けることで、逆転移は援助者がクライエント方向に向けることを指します。
その人本人への感情というより、「この援助者(クライエント)は過去の誰々に似ていて…」といった重ねた感情です。

「親と同じこと言いやがって!」みたいなイメージ
日常的な対人関係でも、心理士のどの流派・理論でも生じうるので、援助者側は転移・逆転移が起こっていることに気付けるようになることが大切と言えます。

対話している自分たちを眺めるような感じ
転移(transference)
転移は精神分析の概念で、元々の意味合いは『幼い頃に両親に抱いたものの抑圧した感情を、今目の前にいる援助者に向ける』ことです。
転移には①陽性転移と②陰性転移の2種類があります。
…クライエントが援助者に対して愛情や尊敬などポジティブな感情を向けること。
例:患者がカウンセラーのことを好きになる。カウンセラーに過剰な憧れをもつ。
…クライエントが援助者に対して敵意や反抗などネガティブな感情を向けること。
例:カウンセラーに対して何だか反発したくなる。

相談する側からすれば、話聞いてくれる相手に対して何か思うのは当然なような…

せやな
転移は、人との関係ができるとまず生じる現象ですね。
逆転移(Counter transference)
精神分析では、逆転移にはカウンセラーの個人的なコンプレックス(葛藤)が含まれていると考えます。
なので、ある程度転移されるのはまだ良くても、逆転移は良くないものとされていました。

相談乗る側がきちんと話聴けないとはこれいかに!

聴く側も人間だから許して
転移に反応して起こる逆転移もありうるという考えで、今では逆転移に気づいてカウンセリングに活かす考えが主流に。
逆転移にもポジティブ・ネガティブの両面があります。
・何を話しても否定してくる患者にやたら腹立つ
・患者に恋愛感情を抱いてしまった など

人間だもn
転移・逆転移が起こるとまずいの?
転移・逆転移はカウンセリングに限らず、日常のコミュニケーションでもよく生じる現象です。
「そんなに気にしなくても良いんじゃ?」と思うかもしれませんが、カウンセリングや真剣な話を聞く場合には転移・逆転移が話や関係性を邪魔してしまう可能性があります。
たとえば、転移が生じ続けるとこんなことも。
・患者「友だちとか恋人みたいに、カウンセラーと一歩踏み込んだ関係になりたい!」
→人に話せない相談相手としての境界線が崩れて、冷静な話がしづらくなる
・患者「カウンセラーに好かれたいな。良いこと言えばもっと褒めてくれるかな?」→うつなどしんどい時でも「調子いいです!」と無理してポジティブを演じてしまったり、本当はしんどい気持ちを話せなくなってしまう など
日常会話はともかく、カウンセリングという人に話しづらい話をする場で『相手への思いが強まって本来話したいことが話しづらくなってしまう』のは致命的です…。
転移が続いてしまうと、最悪の場合クライエント側の状態が悪くなってしまうこともあります。

患者「絶好調です!(はぁもうまじ憂うつ死にたい。でも言ったら嫌がられそうはぁぁあ)」

学生が先生を好きになって一線超えようとすると、今までの関係がぎこちなくなるのもやな
・カウンセラー「なんだかこの人、話聴けば聴くほど可哀そうになってきた…。カウンセリング関係も長いし、ちょっとは良い思いしてほしいな…」
→本当は聴く方がクライエントのためになるだろう大事なネガティブ話を聴こうとしなくなってしまう
→個人的な感情が働きすぎてクライエントと自分を重ねてしまい、相手の思いを聴けなくなったり、自分自身がダメージを受けすぎてしまう など
逆転移だと、カウンセラーの個人的な要因でカウンセリングが停滞してしまう可能性があります。

これではクライエントのニーズに合わないね

自分が話しているのに友人から「分かる―!私も~でさぁ!」って語られると萎えるやつ
ポジティブに見える転移・逆転移だけでなく、もちろん(?)ネガティブな転移でもカウンセリングや関係性は崩壊しやすくなります。

個人的に嫌いな相手と関係性は続きにくいよね
日常の対人関係なら嫌いな人とは離れるでもいいかもしれません。
しかし、専門家(を目指す)ならそんな個人的な感情でクライエントを選んだり振り回すのは…いかがなものでしょうか。

自分が相談する側ならそんなカウンセラー嫌だね
転移・逆転移への対応


(無理じゃね…?)

今でも、熟練者から精神分析受けて、自己分析進めるのもよし

※もちろん訓練は必要
カウンセラー「〇〇さんは、私に良く思われたいと思って、調子の良いことを言い続けているように見えます。本当に言いたいことを言いづらくなっていませんか?」 など

結構ストレート発言で言いにくいかも!

たしかに、日常場面でもはっきりこう言ってくれる友人の方が信頼できたりするかも
おわりに:遠慮は相手のためならず
人が人に向ける個人的な感情を転移・逆転移と言い、好きなどポジティブな面もあれば嫌いなどネガティブな面も両面あります。
大切なことは以下の3つです。
✓転移・逆転移が生じたと思ったら認める
✓実際に会話の中で転移・逆転移について扱う
日常会話で意識する必要は少ないかもしれませんが、
・日常的に悩みを聴くことが多い人
・真剣に人の話を聴きたい人
・人間関係を大事にしたい人
自分や人ときちんと向き合いたい人は、大切な3点を覚えておきましょう。
相手に対する同情や好感、嫌悪感など、感情が生まれるのは当然のことです。
ですが、相手を想ったつもりが相手のためにならないこともありますし、相手に遠慮することで話を遮ってしまうこともあります。
聴き手になるなら、自分が相手を刺激する可能性とその責任をしっかりもちましょう。

特に専門家(を目指す人)はね
転移・逆転移に気づく練習として、色々な話を続けるのもありですね。
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