こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
今回は、命の危険が比較的高い摂食障害についてざっくり解説していきます。
多分youが思うより深刻
人や気分によってはつい食べ過ぎて後悔したり、ダイエットで過度な食事制限をする人もいますね。
「摂食障害?あぁ、食べなくなるやつでしょ?」
そんな理解で止まっていませんか?
摂食障害には食べられなくなる拒食も、食べ過ぎてしまう過食も含まれ、過剰になると命の危険も伴います。
心だけでなく身体にも関わるのは本当にまずい
心理職を目指す人は、もちろん障害特性や援助について知ることは必須。
そうでない人にとっても、摂食障害は若い女性に多く見られるため、関係者は予防知識として是非最後までご覧ください。
病気への偏見をなくすことが第一歩!
こんな人におすすめ!
・摂食障害について知りたい人
・摂食障害=拒食だけだと思っていた人
・10~20代の女性やその親など関係者
※心理系大学院受験生は必須
摂食障害(eating disorder)とは
摂食障害は、過度な拒食や過食などの食行動の異常により日常生活に支障をきたす障害で、体重や自分の捉え方が歪んでいることが多い特徴があります。
「痩せている方がキレイ」のような風潮や痩せ願望も影響しており、10~20代の女性に多い障害ですが男性にも見られます。
「キレイになりたい」気持ちは分かるがまずは目を覚まそう
食行動は生命活動の基本でもあるので、摂食障害で体重の増減が大きく起きてしまうと学校生活や仕事、日常の些細な活動さえも難しくなる可能性も…。
摂食障害は特定不能のもののほか、2分類に分けられます。
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神経性やせ症(AN:Anorexia Nervosa)
神経性痩せ症はいわゆる拒食症です。
痩せ願望の強さから、自分が明らかに痩せていることを認識できずにもっと痩せたいと思って食事を拒否してしまうことを指します。
精神疾患の診断マニュアル『DSM-5』の基準はざっくり以下の通り。
①カロリー摂取を極端に制限し、健康な同年代と比べて有意に体重が低い
②明らかに低体重だが体重増加や肥満を強く恐れる。また体重増加を避ける行動を起こす
③低体重や自己評価の歪みによる支障、事態の深刻さへの認識の欠如
「優位に体重が低い」というのは、標準体重の85%以下、BMI指数で言うと18.5未満からが目安になります。
BMI指数=体重÷身長2
標準体重は18.5~25未満
(BMI指数はややぽっちゃりな気がするのは同意)
「太るのが怖い…もっと痩せたい」という思いから自分の体型を客観視できずに、自分の身体のイメージ(ボディイメージ)が歪みやすいため、病識は薄い人が多め。
神経性痩せ症の人はガリガリでもなお「太ってる。痩せたい」と思ってしまいます…。
でも明らかに痩せてしまえば、低血圧や疲れやすさ、女性なら生理が止まったり月経不順になるなどの異常が生じます。
神経性痩せ症は大きく2パターンあり。
✓摂食制限型
…過度なダイエットや断食、激しい運動でとにかく食べずに体重を減らそうとする
✓過食・排出型
…食べ吐き、下剤で自発的に吐こうとして体重を減らそうとする
どちらも命に関わるので危険ですが、過食・排出型では「痩せたいのに大食いしちゃった…」と自分を過度に責めては自殺願望が高まる危険もあるため要注意が必要です。
病気の自覚は薄くても本人も心底つらそうだね…
神経性過食症(BN:Bulimia Nervosa)
神経性過食症は、食欲をコントロールできず通常量以上に無茶食いしてしまうことを指します。
『DSM-5』の基準はざっくり以下の通り。
①普段と違う時間帯にも食べたり、一般的な量より明らかに多く食べてしまう。また、過食時は食べるのをやめたくてもやめられない
②体重増加を防ぐため、食べ吐きや自発的な下剤の利用などをする
③過食と②が3ヶ月で週1は起きている
④体重や自己評価の歪みで心身に影響がある
⑤神経性痩せ症ではない
体重が増えることを恐れて食べ吐きや自己嘔吐、下剤や利尿薬の乱用、絶食、過剰な運動などをすることを代償行動という
神経性過食症は、先に出てきた神経性痩せ症の過食・排出型と似て、体重増加を防ぐための代償行動が共通して見られます。
が、神経性痩せ症では体重が減りやすい一方で、神経性過食症では明らかな体重の減少は見られにくい違いがあるので覚えておきましょう。
また、はじめから過食が目立つかどうかの違いもあります。
過食は「食べるのをやめたくてもとめられない」行為であり、過食後に心の不調を感じる人も多いです…。
・「またやっちゃった…」自己嫌悪
・気分の落ち込み
・過食による便秘や生理異常
・精神症状の悪化で死にたくなる、自傷も…
「コントロールできない意志の弱い自分」が悪いんじゃなくて食行動の異常っていう病気なんよ…
摂食障害の援助とは
摂食障害は体重の著しい低下も起こりうるため、心だけでなく身体へも大きく影響を及ぼす可能性があります。
身体を守るため、必要に応じて入院も大切な治療法の一環と言えます。
今回紹介する方法は下記の4つ。
入院
神経性痩せ症で拒食が激しく、体重が著しく低下してしまう場合や、自己嫌悪や気分の落ち込みで自傷・自殺企図がある場合は入院治療で身体の安全を守る必要があります。
標準体重の70%を下回ったりとか…いよいよキレイじゃないよ…!
生きていくためにも、栄養不足なら点滴を、身体を動かしまくって体重を減らそうとするなら入院で行動の制限を。
栄養指導を受けることもあります…が。
摂食障害の人は「とにかく痩せたい!食べたら太る!太るの怖い!」という思考に縛られているため入院を拒むケースも多々。
入院治療は短期決戦かも
心理教育
摂食障害の人はボディイメージや自己評価が歪み、「病気だ」という自覚がないケースが多いです。
「痩せてキレイになりたいだけなのにっ!」
そのため、拒食や過食、体重へのこだわりや自己評価の歪みなどが病気であると知ってもらう心理教育が重要になります。
・摂食障害について伝える
・食のコントロールが効かないのは意志の弱さでない
・痩せすぎによる身体の違和感を聞く(息切れしやすくなった、無月経になって困るなど)
・体重に囚われて困ることを聞く(痩せたい思考に囚われて何も楽しめないのがつらいなど)
心理教育は病識を持つため、自責してつらい気持ちを軽くするため、治療に前向きになるためなどいろんな意味をもちます。
心理教育を通じて信頼関係を築き、目標体重に向かって改善を目指します。
心理療法
摂食障害の人は「ガリガリなのにまだ太っていると思う」「細くないから私はブスだ」などボディイメージや自己評価が歪んでいることが多いため、歪んだ認知の修正として認知行動療法(CBT)を用いることがあります。
また、摂食障害で他者を巻き込んで双方共に荒れてしまうこともあるため、精神分析的療法でカウンセラーとリアルな対人関係について扱うことも。
心理療法で、食行動の異常による困り感を治療目標としてもち、改善していきます。
家族支援
摂食障害の人の対応をする身近な家族は心身共に疲弊しやすいため、家族への支援も必要になります。
・「拒食・過食は家族のせい?」という罪悪感
・病気を理解してくれずイライラする
・食行動の異常が心配で不眠になる
・家族の拒食や過食について相談できない
・摂食障害への対応が分からない
家族に摂食障害について心理教育をしたり、家族療法で家族の心を支えて摂食障害の改善に向かったり。
家族のせいじゃないし、家族が不安を吐き出すことも大切だね
おわりに:食行動の異常がないか要チェックしよう
人や気分によっては「つい食べ過ぎちゃう」「ご飯あんまり要らない…」なんてことはありますし、特に女性なら「ダイエットで減量してキレイになりたい!」と思う人はたくさんいます。
うつ病など他の精神疾患の影響で食欲不振 / 過多になることも。
でも、多くの場合「これ以上痩せたらやばいかも」「痩せすぎも太り過ぎと同じくらい良くないらしい」などの認識はあるはず。
せやな
摂食障害はむちゃ食いや絶食など極端な食行動の異常があり、ボディイメージや自己評価の歪みも特徴的な障害です。
神経性痩せ症:いわゆる拒食
神経性過食症:いわゆるむちゃ食い
大きく分けると上記2種類ですが、神経性痩せ症はとにかく拒食して体重を減らす摂食制限型と、過食や隠れ食いをしては吐いたり下剤で排出しきって体重を減らす過食・排出型があります。
BMI指数18.5未満からは最早キレイじゃなくて命が危なくなっていくよ…
また、神経性痩せ症(過食・排出型)と神経性過食症は似た症状もありますが違いはこんな感じ。
障害名 | 体重 | 過食 |
神経性痩せ症(過食・排出型) | 減りやすい | 拒食が多く、発症後しばらく過食は見られにくい |
神経性過食症 | 減りにくい | はじめから過食が目立ちやすい |
場合によっては入院治療で身体を守る必要もある怖い障害なので、なるべく医療機関とつながることをおすすめします。
命に関わることはオンラインカウンセリングとかクリニックより病院おすすめ!
体重は減らしたくなるかもしれませんが、身長がある以上一定の体重は生きていくために必要な数値です。
体型のことでもつらくなったら、早めに人に相談してみてください。
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