こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
数ある心理療法のうち、原点とも言えるのが精神分析(療法)。
心理系大学院進学希望者や心理士を目指す人にとっては必須級の内容です。
また、そうでない人にとっても「フロイト」の名は聞いたことがあるはず。
(パンピーはアドラーの方が知ってるかも?)
✓精神分析療法についてよく分かっていない
✓フロイトって何したの?
✓精神分析のキーワードと意味って何?
✓カウンセリングでどんなことするの?
今回は心理学の基礎である精神分析療法についてざっくり解説していきます。
精神分析は院試や資格試験で頻出かつ派生の多い学派なので、本記事を最後まで読んで大まかな概念を理解しましょう。
また、心理学やカウンセリングに興味のある人は、フロイトがどんな人かや、カウンセリング(精神分析)でどんなことをするのかのイメージを掴めたら幸いです。
臨床心理学の基本の「き」
精神分析療法(psychoanalytic therapy)とは
精神分析療法は、S. フロイトが提唱した精神分析の考えをもとにした心理療法で、広義には精神分析≒精神分析療法となります(ざっくりと)。
精神分析療法の考えを元に、精神力動的心理療法など派生形も多いのが特徴。
精神分析は、来談者中心療法、認知(行動)療法と並ぶ3大心理療法の1つです。
精神分析療法の考え方では、人の悩みや問題行動は無意識層に抑圧された心的外傷体験(トラウマ)とし、その心的外傷体験を意識しても耐えられる心へと自我を強化していきます。
「ヒステリックになるのは押し殺したトラウマが原因だから、トラウマを受け止められるようになろう」みたいなイメージ
意識すると自我を保てないから抑圧したトラウマを扱うので、想像以上にハード
\無意識や自我の復習はこちら/
S. フロイトは、精神分析をするために自由連想法という方法をとりました。
古典的な精神分析・自由連想法の流れ
自由連想法はS. フロイトが行った精神分析の方法で、現代では多く派生した精神分析の基礎にあたります。
その方法は、クライエントには寝椅子(カウチ)に横たわってもらい、心に浮かんだことを批判や否定をせず、思った通りに語ってもらいます。
S. フロイトは元々、ヒステリーを研究していたJ. M. シャルコーの下で勉強し、催眠による治療を研究していた
なんか怖いし怪しいなぁ
自由連想法は週に3~5回の1回50分で何年か続けるやり方ですが、現在では週1回、対面して行うことが主流です。
今で言うカウンセリング(精神分析療法)だね
自由連想法で語られる内容にはクライエントの無意識が関係していると考え、この無意識を分析していく作業をします。
思った通りに話せと言われても言いづらいこともあるだろうし、気まずくなって黙りそう…
連想を続ける中で話しづらくて黙ってしまう沈黙も、連想していくうちに治療者に自分の親や友人を重ねたり特別な感情を向ける転移も、クライエントの無意識を探るヒントになります。
連想(治療)への抵抗=本人が無意識にたどり着いて、気づきたくない感情に気づいてしまうことへの抵抗と捉える
他にも抵抗には、カウンセリングの無断キャンセルや遅刻という分かりやすい抵抗から、失錯行為(言い間違えやうっかり発現、ど忘れなど)という分かりにくいものまであります。
▼失錯行為…無意識に感じていることが漏れてしまったり、漏れてしまうことを恐れて無意識に抵抗した結果、変なことを言ってしまう
・「これより会議を始めます」と言うはずが「会議を終了します」と言ってしまった
・友人の結婚に対し「おめでとう」と言うはずが「残念」と言ってしまった など
心は正直☆
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抵抗や転移に対して治療者は解釈を伝えていき、この過程を通してクライエントは自己理解を深める(洞察)という流れ。
▼解釈の技法例
✓直面化…クライエントが避けている感情や思考を治療者が言葉にして伝え、クライエントが自分と向き合う作業を手伝う
✓明確化…クライエントが話した内容を簡潔に言い返すことで、自己理解を深めるサポートをする
(図がいつも雑)
人の無意識を探ることも、解釈を与えることも、いくらクライエントが同意したとしても侵襲的(その人を傷つけうる)行為に変わりありません。
心理士としてカウンセリング(精神分析療法)をするときは自分が加害者になりうる意識と相手を尊重する意識はもちましょう。
解釈を受け取ってもらうためには信頼関係(ラポール)、超大事
突然「あなたは~が怖いんですね」とか言われてもテメー何様って思うよな
「精神分析療法=上から目線に解釈してきて嫌」というイメージを持つ人もいるようですが、あくまできちんと関係性をつくったうえで自己理解を深めていく心理療法です。
上から解釈野郎は筆者も嫌
徹底操作(ワークスルー)で自我の強化を目指す
精神分析(療法)では、過去の心的外傷体験や今までの生い立ち(生育歴)を話していくため、当時抑圧した感情や考えを思い出しやすくなります(治療的退行)。
過去志向なんです
日常的に退行するのはただイタイ奴
洞察(自己理解)→解釈を繰り返すことを徹底操作(ワークスルー:work through)と言い、これにより自我の強化を目指します。
トラウマを受け止められるように、少しずつ心の強度を強めていくんだね
自我が強化されると、ヒステリックだったり神経質になりすぎていたり、不安が強かったりなど問題があった頃に比べて安定した心に。
・物事を現実的に考え、捉えることができる
・解離などせず、自分が自分である感覚をちゃんと持てる
・適切な心の防衛ができる など
自己理解を深めていくことにはある意味ゴールがありません。
ズルズルと続けるのではなく、カウンセリング(精神分析療法)の終わりもきちんと話し合うことが大切です。
精神分析療法の適用について
精神分析療法は、問題の原因を無意識に抑圧された体験や感情とし、それらを意識できるように心の強度を強めていく心理療法です。
心の強度を強めていくと言っても、治療に対するモチベーションや、ある程度の知的さ・自我の強さ(弱り切っていないこと)などがあるクライエントに適用しやすいと言えます。
無意識に押し込んだ体験や感情と向き合ったり、意識化したりが耐えられない場合は、無理に精神分析療法で深めない方が時には懸命かもしれません。
自我を何とか保つために心的外傷体験(トラウマ)を無意識に抑圧したという理解もまた可能(若手心理士は話をつい深めることに夢中になりやすいが、ほじくり返さない方が相手のためである場合も)
過去のトラウマとか話すから、治療を進める中で調子が悪くなることもあるよ
問題解決に積極的でない人、心がもろすぎる人にはリスキーかな
もともと精神分析の対象は神経症やヒステリー、心因性の身体症状(ストレスによる腹痛など)でした。
今では不安障害など神経症圏の問題から、パーソナリティ障害や強迫性障害などのボーダー圏まで適応可能とされています(統合失調症など精神病圏には危険)。
おわりに:精神分析療法は自分と向き合う心理療法
精神分析療法は、S. フロイトの理論を応用した心理療法で、臨床心理学の基礎とも言える超重要な理論でもあります。
✓過去志向
✓クライエントの抵抗や転移を扱う
✓直面化や明確化で解釈を伝える
✓クライエントの洞察を促して自我の強化を図る
\超基本理論の解説は見るべし!/
解釈を伝えてクライエントの洞察を促したり、自我の強化を進めたりする心理療法のためか、「精神分析療法=上から目線でいけ好かない」イメージを持つ人もいます。
しかし、心理療法の基本は信頼関係(ラポール)の形成です。
専門家側は、相手の話を聴き、関係性を築いたうえで、過去の心的外傷体験(トラウマ)を受け止められる自我づくりをサポートしましょう。
己と向き合うエネルギーのいる心理療法でした
おすすめ書籍
精神分析の考え方は心理の道を歩む(泥沼にハマる)うえで必須になるため、参考書籍を最後に紹介します。
精神分析に関する本はたくさんありますが、やはり難しいものが多い中、こちらの内容は固くない=他より読みやすいです!
内容自体はボリューミィなので読破すればかなり理解が深まるかと。
最初の方を読めば概要は掴めると思うので、「精神分析、さっぱり…」な人は是非読んでみてください。
イメージつきますように
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