【心理検査】バウムテストとは?実施や分析・解釈の流れをざっくり解説 | サイコロブログ
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【心理検査】バウムテストとは?実施や分析・解釈の流れをざっくり解説

バウムテストとは 勉強ノート
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こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。

今回は、木を描いてもらう心理検査のバウムテストの概要や実施のポイント、分析・解釈についてざっくり解説します。

✓木を描くだけで何が分かるの?
✓実施で気をつけることって?
✓分析・解釈って注目するのは?

バウムテストは実施が容易で子ども~大人まで幅広く使えるパーソナリティの検査です。

心理職を目指すなら身に着けて損ナシなので、心理のたまごは概要をしっかり押さえておきましょう!

こんな人におすすめ!
・バウムテストについて勉強したい人
・心理学の初学者
・実施方法を確認したい人
・分析や解釈での注意点を見直したい人
※心理系大学院・資格試験受験生は必須!

本記事はあくまで概要解説であり、これで所見が書けるというものではありません。

バウムテストとは

草原に生える1本の木と青空

バウムテストとは、(実のなる)1本の木を描いてもらう心理検査(投影法)です。

しあん
しあん

バウムはドイツ語で「木」

闇しあん
闇しあん

バウムクーヘン(木のケーキ)のバウム

スイスの心理学者K. コッホが開発しており、被検者の精神状態やパーソナリティの特徴などを評価します。

K.コッホは職業相談の仕事に従事する傍らで筆跡学に関心があり、筆跡から人の性格特徴や心理を分析する研究をしていたとか。その延長線上で、同業のE. ジャッカーによる職業適性検査を元にバウムテストを考案したという背景アリ。

バウムテストには以下のような特徴があります。

✓言葉のやり取りが苦手な人や子どもでも実施しやすい
✓集団にも実施可
✓数分程度でできる(実施が比較的容易)
✓無意識の自己像が表れやすい

描くのが木なので、被検者の抵抗が比較的少ないのもポイント。

とにかく実施が容易で、テストバッテリーとして使われやすいのも特徴的です。

\ 多面的な理解のために /

闇しあん
闇しあん

解釈には勿論練度が要るぞ

また、バウムテストは描画法でもあります。

木を描くという表現を通してカタルシス効果(ストレス発散のような体験)を得たり、心理療法として用いられたりすることもあります。

しあん
しあん

カキカキ楽しいいい

バウムテストの実施

バウムテストは、A4用紙1枚、鉛筆、消しゴムがあれば実施可能です(時計orストップウォッチも是非)。

しあん
しあん

筆圧も見たいから鉛筆で…!

実施の際は「1本の実のなる木を描いてください」と教示して、自由に表現してもらいます。

制限時間はなく、絵の上手い下手を問うものでもありません。

また、写生でもないので、被検者が思ったように描いてもらいます。

しあん
しあん

質問されても基本は「思ったように描いてください」

実施中、テスターはぼーっとせず以下のようなことに注意しましょう。

・描き始めから終わりまで計測する
・検査時の様子を観察する
・木を描く順番をメモする
・質問もメモする
・消しゴムの使用箇所もメモするetc.

しあん
しあん

行動観察も解釈材料!

また、必要に応じて木を描き終えた後にいくつか質問することもあります(描画後の質問=PDI:Post Drawing Interrogation)。

・これは何の木ですか?
・この木の高さは?
・この木の樹齢は?etc…

他にも、枯れているのか聞いてみたり、傷や穴があればどういった意味があるのか聞いてみたりなど。

心理検査としては解釈の手掛かりに、心理療法としては自己理解を促すきっかけになるとも考えられています。

バウムテストの分析・解釈

複数の木と虫眼鏡

バウムテストの分析・解釈は、色々な側面から得られる情報を総合的にまとめていきます。

また、描かれた木の空間図式の象徴性を解釈するには空間象徴の理論グリュンワルドとボーランダーの空間図式の理論)も参考になります。

闇しあん
闇しあん

絵だけ見る目隠し分析はやめよう

全体的評価

全体的評価では、描かれた木を見てテスターが直感的に被検者の精神状態を捉えようとします。

・自然な印象か、奇妙な印象か
・エネルギッシュか、無気力な感じか
・暖かな印象か、冷たい印象か
・伸び伸びと表現しているか、防衛的な印象かetc…

しあん
しあん

第一印象も大切に

木には被検者の無意識の自己像が表れやすいと考えられていますが、そうとは決めつけず、この木が何を表すのか、意図的なのか無意識的に描かれているのかなどを考慮して見るようにしましょう。

形式分析

形式分析では、どのように描いたかに注目して各特徴から分析していきます。

▼代表的なサイン
・絵のサイズ(大きい、普通、小さい)
・筆圧やストローク(強い、弱い、震え、破線など)
・絵の切断(用紙からはみ出て切断されているか)
・陰影や影(陰影の強さや場所など)
・消しゴムによる末梢の有無(修正回数や場所など)
・対称性(こだわり過ぎないか、過度にアンバランスか)
・透明性(本来見えない部分がどれだけ透けて描かれるか)
・パースペクティブ(鳥瞰図ちょうかんず(鳥が上空から見下ろす感じ)や見上げた絵など)
・詳細さ(具体的か、乱雑かなど)
・絵のバランス(1パーツが強調されていないかなど)etc.

しあん
しあん

いろんな解釈仮説を検討してくよ

内容分析

内容分析では、何を描いて何を描かなかったかに注目して、協調・無視される部分を見て分析します。

内容象徴例
自我の強さや生命力、内的衝動の流れ、感情機能の働きなど
幹の尖端処理感情や内的衝動の流れなど
根と地面現実との関わり方、自我の安定度、無意識の欲求や強さなど
樹皮外界や他者との関わり方など
傷や穴不安やトラウマ経験、性的な関心など
樹冠目標や興味、自己評価、理性面、人間関係への意識的態度など
外界への好奇心や外向性、被影響性など
目標や理想の方向、人間関係での相互作用や円滑さなど
被検者自身や達成感、未成熟性など
幹の尖端処理は超重要

他にも、太陽や動物、花など木以外のアイテムを描いた場合も分析します。

実際は各指標で様々な解釈例がありますが「尖った枝は攻撃的」などを紹介すると1対1の評価につながる恐れがあるので割愛。

闇しあん
闇しあん

バウムに限らず1対1の評価はNG!

また、各指標は年齢ごとに移り変わることも把握しておくと解釈の参考になります。

▼幼児に多い(成人に多い)例
・殴り描きのような木(象徴的、具体的な木)
・1本線の幹や枝(2本線の幹や枝)
・空想的、非現実的な木
・樹冠が小さく幹が長い木
・樹冠の下で生える枝 etc…

何度も言いますが、各指標を全体的に見て評価するのが大切なので「○○な特徴のある木=××な人だ!」のような1対1の判断をしないように気をつけましょう!

【参考】グリュンワルドとボーランダーの空間図式

描画の検査では、描かれたある特徴が被検者のパーソナリティのとある側面に結びつくと考える空間象徴の理論があります。

Grunwaldグリュンワルドの空間図式
…横長の長方形の空間象徴。
左上:受動性の領域
右上:性への能動性の領域
左下:幼児期のトラウマへの固着や退行
右下:本能や衝動、葛藤の領域

Bolanderボーランダーの空間図式
…縦長の長方形の空間象徴。
上:精神領域と未来
真ん中:情緒領域と現在
下:本能領域と過去
左側:母親、女性性、受動性、空想性、過去
右側:父親、男性性、積極性、具体性、未来

Grunwaldはグリュンワルド / グルンウォルド読みも見かけます

どちらも外国の空間象徴なのでそのまま日本に適応できるかは分かりません。

が、用紙のどの領域に描かれたかには何か意味があると考えて、解釈に役立てるのも大切です。

しあん
しあん

これが絶対ではないけど参考程度に活用しよう

おわりに:1本の木から多くの情報を考慮して解釈につなげよう!

木のイラスト

バウムテストは1本の(実のなる)木を描いてもらい、被検者の精神状態やパーソナリティの傾向を評価する心理検査です。

下記のような特徴から、人格検査の中でも気軽に利用しやすい=テストバッテリーしやすいといえます。

✓言葉のやり取りが苦手な人や子どもでも実施しやすい
✓描画への抵抗が比較的少ない(導入しやすい)
✓集団実施も可
✓数分程度でできる(実施が比較的容易)
✓無意識の自己像が表れやすい

分析・解釈も手掛かりとなる本が多く参考にしやすいですが、機械的に「コレを描いたからこうだ」といった1対1の解釈をしないように気をつけましょう。

闇しあん
闇しあん

(n回目!)

描いてもらうのは1本の木とはいえ、そこから得られる情報は沢山あります。

被検者の生育歴は勿論、検査時の様子や検査後の質問(PDI)、各指標を総合的にみて、多くの情報を考慮して解釈につなげましょう。

参考書籍

初学者向けで2冊紹介しておきますので、バウムテストや医療分野に関心のある心理のたまごは参考にどうぞ。

\ 初学者のバイブル /

北大路書房
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薄い本ですが要点がコンパクトにまとまっており、解釈に非常に役立ちます(+安いし初学者は全員コレ買ってもいいレベル)。

イラスト例が豊富で視覚的に分かりやすいのも高評価です。

\ 研究~解釈まで /

著:カール・コッホ, 翻訳:岸本 寛史;中島 ナオミ;宮崎 忠男
¥5,280 (2023/08/16 22:54時点 | Amazon調べ)

K. コッホ著で、バウムテストの多くの統計データからより客観的に見る力が養われる1冊です(原著本は誤訳が目立った歴史があるので解釈の鵜呑みには慎重に…)

読み込むには時間がかかりますが、各指標に対する情報量はかなり多めで勉強する価値は大いにアリ。

しあん
しあん

読者も木描いてみよう

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