こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
近年では「うつ病」は心の風邪とも呼ばれるくらいに認知度が上がり、世間的にもうつ病を聞いたことがある人は増えてきました。
うつ病は、いつ・誰がなってもおかしくない心の病気で、心理士としても必須知識です。
✓うつ病のことをよく分かっていない
✓気分が落ち込む以外にも症状はあるの?
✓うつ病の人にどんな対応ができるの? など
今回は、うつ病に焦点を当てて、その特徴や対応についてざっくり解説します。
心理系大学院受験生の人にとっては院試や資格試験で頻出、現場でも必須知識なので本記事で紹介するポイントはすべて覚えておきましょう。
また、そうでない人もうつ病の特徴や対応を予防知識として読んでみてください。
当事者の人にも新しい知見はあると思うけど、対応メインではないのでそこだけ注意してね
こんな人におすすめ!
・うつ病について興味がある人
・心理職を目指している人や心理士
・うつ病の予防知識を得たい人
・身近にいるうつ病の人への対応を知りたい人
※心理系大学院受験生は必須!
うつ病の分類※勉強したい人向け
うつ病(depressive disorder)は、気分の落ち込みや意欲・関心の低下などが主症状の気分障害です。
病名いくつか出るけど一般の方は「ふーん」でOK(ただし専門家目指す民は覚えるべし)
もともとは気分障害として、うつ病や躁病(気分がハイになりすぎる病気)、躁うつ病(気分の波が激しすぎる病気)などが大きな分類として統一されていたが、現在の精神疾患の分類と診断の手引き『DSM-5』では、①うつ病は抑うつ障害群、②その他は双極性障害および関連障害群に分かれている
男女比は1:2で女性に多いとされ、発症は子どもや思春期~中高年まで幅広くみられます。
著名人がうつ病になった話がどんどん出てくるね
身近に感じる分、うつ病の名を被ったビジネス(カウンセラー)が流行っているから要注意
うつ病と似た分類には、慢性的な抑うつ状態が2年以上続く気分変調症や、女性にみられる生理前の気分の落ち込みなどの月経前不快気分障害(PMDD:Premenstual Dysphoric Disorder)があります。
PMS(月経前症候群)は聞いたことある人多いのでは!身体の目立った不調はなくて心の不調がメインの場合はPMDDかも
産後うつや季節型うつなど、あらゆる状況に応じてうつ病は発症しやすいため、あなたが思っている以上に身近な病気と思われます…。
うつ病の基準
気分の落ち込みで有名なうつ病ですが、基本的な症状は抑うつエピソードと言い、以下9種類のうち5つ以上が2週間以内にみられ、続きます。
①ほぼ1日中・毎日の気分の落ち込み(※必須)
②ほぼ1日中・毎日、興味や喜びを感じない(※必須)
③明らかな体重の増減(1ヶ月で本来の5%前後)
④ほぼ毎日不眠または過眠
⑤ほぼ毎日精神的な焦りや活動力の低下
⑥ほぼ毎日の疲労感
⑦ほぼ毎日の無価値観や大げさすぎる自己嫌悪
⑧思考や集中の続かなさ、決断のできなさ
⑨死にたくなる、自殺を計画する
体重や睡眠もうつ病のバロメーター!!!
3大欲求(食欲・睡眠欲・性欲)で分かる心の健康(マジ)
子どものうつ病の場合は、気分の落ち込みではなく怒りっぽい様子が見られたり、成長期のはずなのに体重が増えない影響も。
また、日内変動といって、気分の落ち込みの波は朝が重く、夕方になるにつれて軽くなってくるという症状もあります。
\ 睡眠のゆるい話 /
うつ病になりやすい性格
心理学的にうつ病になりやすい病前性格がいくつかあるので紹介します。
「こういう性格の人がなりやすい」という知識をもつことで、仮に自分が当てはまる場合でも予防意識をもつことができるので要チェックです(心理系大学院受験生は覚えよう)。
①循環気質
クレッチマーの性格気質論の1つで、体型は肥満型、性格としては社交的、活発などエネルギッシュな気質の人が挙げられます。
「気質」は性格が形成される前の因子で、経験や環境からの影響などで形成されていくのが「性格」というイメージ
エネルギー切れでうつになりやすいのかもね
②執着気質
下田光造が提唱した気質で、性格としては堅物で、律儀、責任感が強い、完璧主義な傾向があると言われるものです。
また、自分の生真面目さを他人にも求めやすく、周りとうまくいかないときに心を閉ざしやすい特徴があります。
日本人あるあるな気質かも
③メランコリー親和型性格
ドイツ人のテレンバッハが提唱した病前性格で、執着気質と似て真面目で責任感が強いと言われるものです。
人に尽くしやすく、頼まれごとは断りづらい、ルールや道徳を大切にするという面が特徴的で、いわゆる貯め込みやすい性格と言えます。
日本人あるあるパート②
ストレスも便秘も溜めてもろくなことないから出してけ
全体的に、やはり真面目な人がうつ病と関係あると考えられるので、適度に力を抜く術を身に着けていけたらと思います。
うつ病の原因は特定困難
うつ病になりやすい病前性格はありますが、うつ病の原因は特定されておらず、本当にいろいろな原因が考えられます。
内因性(身体の原因)なら、血縁者にうつ病の人がいるとうつ病になりやすいため遺伝要素があると言われています。
脳の神経伝達物質でモノアミン系とされる幸福ホルモンのセロトニンなどの分泌異常が原因として、モノアミン仮説も有力。
日光浴びたりハグでセロトニン増やすのだ(?)
心因性(心の原因)なら、うつを発症しやすい元々の素質+個人のストレスの限界値突破=うつ発症という、ストレス脆弱性モデルもうつ病の原因として有名です。
ストレスへの対応は身につけたいね
外因性(環境からの問題)なら、大きなケガや薬の副作用なども考えられます。
気分が落ち込むなどうつ病の症状に気づいたら、いつ頃から症状があるか、何か心当たりはあるかを丁寧に振り返ることをおすすめします。
思考停止で落ち込みたくなるけど、相談するなり振り返りも大切だぞ
人の心は環境の影響を受けやすいんだね
うつ病への対応
うつ病への対応は以下の3つが有効とされています。
✓薬物療法(用法容量を守って薬を飲もう)
✓心理療法(カウンセリングしてみよう)
✓休養(心身安全に休もう)
薬について抵抗を感じる人も多いですが、副作用など説明を聞いて、医師の指示を守っての服薬は効果があると言われているので、気分の浮き沈みに苦しむ場合は検討してみてください。
セロトニンの分泌異常をサポートするSSRI系(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)のパキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ、ルボックスなどが有名
抗うつ剤は効きはじめるのに時間かかりやすいらしい
焦るけど、うつ病は時間かけて改善していく病気なんだね
少し怖い話かもしれませんが、うつ病は自殺リスクや再発・再燃リスクが高い特徴があるため、死にたい気持ちが強い場合や自殺未遂をしたことがある場合は、医療機関に相談して入院治療も選択肢の1つです。
入院によって、心も身体も安全に過ごす期待ができます…!
Q:休むって何すればいいの?
きちんと寝て、ストレスなことから一旦距離を置いて、できれば心理士と話しながら過ごし方を決めてみてください。
うつ病は真面目で頑張り屋さんな人がかかりやすい病気で、「休んでられない!仕事しなきゃ!休んでいいって言われても何すればいいか分からない!」という人も多いです。
筆者もカウンセリングでよく言われるセリフTOP3
まずは「休むことが大事」って話からスタートしますぜ
休むって意外と難しいですが、仕事がストレスなら休職して距離を置いてみたり、よく寝る・運動してみるなど消費しきった体力と気力を回復させる時間を作ってみてください。
もしも趣味ややってみたいことがあればこの機会にやってみてもOKですが、休む時期に頑張りすぎては休みにならないので、だからこそ専門家と相談しながら過ごし方を考えることをおすすめします。
アニメとかドラマとか無限視聴で過ごしてもいいかも
また、うつ病の人はいろんなことを悲観的に考えてしまう傾向もあるので、本人の気持ちを尊重する支持的な対応を心がけてみてください。
「治療のために休め!」って指示的対応とか「もっとポジティブに考えないと」って否定的対応はNG
not 指示 but 支持な!!!
良かれと思ってついアドバイスばかりしてしまう人もいますが、うつの人を追いつめやすくなるので、落ち込む気持ちを聴いてあげられる対応の方が安心しやすいと思われます。
あと、有名なのが『うつ病の人に頑張れはNG』。
「やっぱ自分の頑張りが足りないんだ、もっと頑張らないと…」「こんなことすら頑張れない自分なんて…」など、うつの気持ちを強めて本人を焦らせる可能性が高いです。
周りは「何かしてあげなきゃ」よりも「気持ちが楽になれるように話し相手になろう」スタンスの方がいいかも
もちろん、落ち込む話を聴き続けることはとてもエネルギーがいる行いなので、「メンタルクリニック行ってみる?」など医療機関につなげる関わりも、うつ病の人と周りの人のためになる対応ですよ。
心の病気は専門知識のある心理士とつながるの推奨(○○カウンセラーではなくて)
ちなみに、心を健康に保つポイントは下記記事にあるのでこちらも参考にどうぞ。
おわりに:うつ病の予防知識を身につけよう!
うつ病は心の風邪とも比喩され、誰がなってもおかしくない心の病気ですが、身体の風邪のように数日で治るものではなく、改善には長い時間が必要です。
すぐ良くなったと思っても様子は見ようね!
気分の落ち込みや興味・意欲などの低下をはじめとした違和感が2週間以上続くようなら、もしかしたらうつ病になりかけているかもしれません。
うつ病の原因の特定はできていませんが、人は元々発症しやすい素質をもっており、個人の限界を超えるストレスを感じたときに病気が発現するというストレス脆弱性モデルが有名です。
生きていくうえで完全にストレスをなくすことはほぼ無理ですが、理不尽な人間関係や、自分の心身を削ってまでする活動など無理する必要はありません。
予備知識をもって日頃から適宜息抜きしよう
また、うつ病に近づいた場合は、下記3つの対応が有効です。
✓薬物療法(用法容量を守って薬を飲もう)
✓心理療法(カウンセリングしてみよう)
✓休養(心身安全に休もう)
どれも、心と身体を休めるための対応ですね。
もっとラクに生きて良いんやで
真面目で抱え込みやすい人はうつ病になりやすいとも言えます。
困ったことや不安なことは日常的に吐き出せるようになるのもアリです。
参考書籍
正直うつ病って心の病気の中では身近なこともあってか、ビジネス意識のマインド本やめちゃくちゃな本が多いのでおすすめを挙げにくい。
(本音が記事になってるけど大丈夫か)
心理士的には界隈で有名な1冊を紹介しておきます。
個人的には薄くて読む気になれるのも高評価。
筆者そればっかやんな
カウンセリングの中でもうつ病に有効とされる認知行動療法に焦点を当てた本で、当事者だけでも身内と一緒にでも読み進めやすいです。
落ち込みやすい考え方を変えるためのワークもついているので実用的なのも良し。
気になる人は読んでみてね
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