こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人の心は、傷つくのを避けるため無意識のうちに心をガードする機能(防衛機制)をいくつかもっています。
自分の無意識の癖っていうと知りたくなるね
防衛機制は心理系大学院受験生にとっては必須キーワードですし、そうでない人にとっても自分の心の守り方や、自分にとってどんなことがよりつらいと感じるのか自己理解を深める知識にもなります!
✓いつも他人の意見を受け入れられない
✓都合の良い解釈ばかりしてしまう
✓思ったことと逆の態度ばかり取っちゃう など
こんな悩ましい経験は誰にもあること。
年代に適した防衛機制は健康的ですが、幼児が使いやすいガードばかり大人が使っていては不適応を起こしやすいと考えられます。
Q:中身は幼児な成人済み筆者は社会に適応的と言えるか(反語)
今回は代表的な防衛機制を例を挙げながら紹介していきます。
自分の心の守り方を改めて知り、健康的なメンタルライフを送るために新しい防衛機制も意識的に取り入れてみましょう!
無意識の癖だからこそ意識しようとするのが大事!
ちなみにストレスへの向き合い方はこちら。
こんな人におすすめ!
・防衛機制をよく分かっていない心理学専攻の人
・自分の心の安定パターンを知りたい人
・今の自分の心の守り方以外の方法を身に着けたい人
※心理系大学院受験生は必須科目!
防衛機制(defense mechanism)は心のセキュリティシステム
防衛機制は、不快な体験や欲求から心を守り安定させる機能のことで、精神分析の基礎概念の1つでもあります。
精神分析の基本記事を読んだ後の方が分かりやすいかも!
人の心は不安や感情的な状態にさらされ続けると疲れ切ってしまいます。
心を保つために必要なオート機能だね!
防衛機制の多くは、幼い頃の未熟な自我が不安や葛藤に対処するために使ってきたもので、成長するにつれ大人な対応ができるようになることが望ましいです。
いつまでも子どもの「いやいや」は通用しないぞ
子どもながらに「いやいや」が通じなくなるって分かるのかな
生きていくために防衛機制は確かに大切な役割を果たすので、自分に合う心の守り方を身に着けていきましょう。
その人の癖を知れば、カウンセリングや日常の相談の中で相手の心の強度を知る参考にもなるよ
防衛機制って実はものすごく種類豊富ですが、今回は有名どころをピックアップして紹介していきます。
ちなみに紹介する防衛機制のレベル目安はこう。
★★☆☆…未熟。3~15歳にとっては適応的
★★★☆…神経質ぎみ。成人でもまぁあり
★★★★…成熟!意識可能!12歳~あり
使ったらダメではなくて、上にいくほど多用に気をつけようってことね
抑圧(repression)※S, フロイトが提唱★★★☆
抑圧は、自分にとって不快な体験や欲求を意識から無意識下に抑えこむことです。
\意識や無意識の話はこちら/
・大好きな恋人にフラれたことを忘れた
・昔から夢があったが貧困家庭のため夢を心の奥底にしまった
・虐待された記憶の詳細を思い出せない など
抑圧はストレス対処としては適応的な防衛機制ですが、S, フロイト曰く神経症と関係ありと考えられます。
抑圧は無意識に働くからコントロールが効かないのだ
抑圧しすぎると、都合の良いことしか受け取れず自我を弱める可能性がありますね。
抑制(suppression)★★★★
抑制は、自分の気持ちや衝動を意識的に我慢したり抑えたりすることです。
・パートナーがすぐ感情的になってむかつくが、自分も怒っては話にならないため自分の気持ちをぐっとこらえた
・子どもに手を出しそうになったがなんとか我慢できた など
無意識に働く抑圧とちがって、抑制は意識的に行うため心の健康に必要かつ適切な防衛といえます。
大人な対応だね
適切=多用ではないからな!
抑制した後にはきちんと気持ちを吐き出しましょう!
我慢が美徳ではない
抑制+発散までがメンタルにいいかな
反動形成(reaction)★★★☆
反動形成は、満たされない思いが現れるのを防ぐために正反対の言動をとることです。
・好きな子に気持ちがバレないよう意地悪する小学生男子
・小心者か虚勢でイキる など
ツンデレっぽいね
\脱線コラム・ツンデレの話/
大人でもとりやすい防衛ですが、自分の気持ちと正反対の言動ばかりとっていては心は疲弊していきます。
後から謝って本音を言えたりあえて素直さを出す勇気も身に着けていきたいものですね。
投影(projection)★☆☆☆
投影は、自分にとって受け入れがたい考えや感情を、他人が自分に向けてきたものと捉えることです。
・本当は自分が恋人を嫌っているのに「あの人は私のこと嫌っているにちがいない!」と思い込むこと
・実は上司に敵意むき出しなのに、上司が自分に敵意を向けていると考える など
これは自覚難しそう
自分の気持ちを認められず相手のせいにするイメージで、5歳以前など小さな子どもが使いやすい防衛機制。
難しいかもしれませんが、まずは投影があることを知っておきましょう。
やりすぎると自分の気持ちを考えられず、人のせいにばかりする人間になりそうですね…。
自分の性質を相手に押し付けるからレベルとしては子どもな防衛機制
同一化(同一視)(Identification)★★☆☆
同一化(同一視)は、自分にとって受け入れがたい・叶えづらい現実を満たそうと誰かの真似をすることです。
・憧れの女の子その者にはなれないけれど、その子のダイエット法や美容法を真似してかわいい女の子になろうとする
・尊敬する上司みたいになりたくて上司の態度を自分に取り入れる など
投影とちがい、同一化(同一視)相手の性質を自分に取り入れようとできるので適応的な防衛機制と言えます。
これも大人な対応だね
憧れに自分を重ねるだけなら現実自己が見えてないやつな…
\理想と現実の自分の話/
合理化(rationalization)★★★☆
合理化は、自分の行動や納得いかない思いに合理的な理由を見つけ出すことです。
・感情起伏の激しい彼女と交際を続けたかったが「あいつメンヘラだからな」と思って別れた
・イソップ童話:高いところになるブドウを取れないキツネが「あれすっぱくてまずい」と言って去る など
自分の感情・気持ちと行動がかみ合っていないのに納得させる防衛で、認知的(現実の受け取り方的)には歪んでいます。
屁理屈チック
やりすぎると現実をきちんと捉えられず不適応を起こす可能性が。
知性化(intellectualization)★★★☆
知性化は、不安な感情を意識しないためにその感情と距離を置いて知的に判断することです。
・モテない男子が恋愛心理学を学んだり知識武装してちょっとモテた気になる
・病気の告知をされたが病気について調べて不安を減らす など
知性化の結果、知的な理解がきちんとできればいいですが、「優越感を得たい」「人をどこか見下したい」思いが強くないかや、それっぽい知識を調べたけれど本当に理解できているのかを振り返ってみましょう。
知性化やりすぎるとすぐに専門用語でイキろうとするちょっと嫌な人に…ね
合理化は自分以外を歪めて自分を納得させる防衛ですが、知性化では「自分はモテない」「自分は病気なんだ」など、認知的な歪みはなく現実を受け止めた上での防衛という意味では合理化よりもやや大人な対応と言えます。
知性化で得た知識使って実際に行動できればモテるかもね!
急に煽るねΣ
退行(regression)★★☆☆
退行は、受け入れがたい状況になったとき、今より幼い発達段階に戻ることです。
・1人で登校できていた長男が、次男誕生でお母さんに構ってもらえる頻度が減ったため、登校渋りで甘えるようになった
・都合の悪いことが立て続いて、ただ聞くだけ人間になった など
退行は子どもも大人も取りうる防衛で決して悪い対応ではありませんが、わざとやりすぎるのはやや病的かもしれません。
精神分析の過程で治療的に退行が生じるよ
日常的に発達段階戻ってるのは退行じゃなくてただ幼稚なだけね
ぐさぁ!!!
否認(否定)(denial)★☆☆☆
否認(否定)は、不快な現実を拒否することで自我を守ることです。
・推しが万引きしたけど「〇〇くんはそんなことしないもん」と知らないふり
・テストで0点とったが「ぼく0点とってないよ」と言い張る
・ギャンブル依存と言われたが「俺はそんなことねぇ!」と逆切れ など
現実をちゃんと知った・見た・聞いたうえであえて否定しようとするからタチ悪いね…
無自覚も多いのが厄介ポイント
幼児がよくとる防衛なので成人後も頻発していたら…周りへの適応は難しいかと。
認めたら心が傷ついてしまう裏返しであることが多いので、否認(否定)ばかりの人の自我はもろいのかもしれません。
周りに受け止めてもらえる誰かが欲しいかも
昇華(sublimation)★★★★
昇華は、社会的に容認されがたい気持ちを、容認される形で表現することです。
・ヤンキー彼氏がバンドマンになって自己表現の場ができた
・ケンカ大好きマンが格闘技のプロになって力を発揮
・性欲を芸術活動として表現していく など
結果オーライなら適応的!
昇華できずにレベルが子どもなままだと、社会的に容認されない形で表現してしまうことも。
・ヤンキー彼氏が絶好調でつっぱる
・ケンカ上等マンが日常的に問題起こす
・性欲おばけがやらかす など
問題を問題としてそのまま行動化してしまうので要注意。
どうしたら自分の気持ちが合法化されるかを考えようね
補償(compensation)※A, アドラーの概念★★★★
補償は、失敗や劣等感をカバーするために他の望ましい特性・分野を強調することです。
・家庭はうまくいっていないが仕事はとてもできる
・勉強は苦手だけど運動で活躍する など
失敗体験や劣等感などで自分の傷ついた心を回復させるための考え方なので適応的。
些細でも何でもいいから自分がやれることに目を向けるのがポイント
おわりに:自分の癖を知って、新しい心の守り方を知ろう
A, フロイト(アンナ・フロイト)が整理した防衛機制にはたくさんの種類があり、どれも不快な体験や欲求から心を守り安定させる意味があります。
本記事で紹介しただけでも一部で、
・投影…相手に押し付け
・否認(否定)…現実を認めない
★★☆☆
・同一化(同一視)…真似っこ
・退行…子ども返り
★★★☆
・抑圧…無意識に蓋する
・反動形成…正反対の言動
・合理化…都合よく捉える
・知性化…インテリぶる
★★★★
・抑制…ぐっとこらえる
・昇華…結果オーライな表現
・補償…欠点のカバー
既に多い
裏を返せば、人の心の守り方ってたくさんあるってことです。
防衛機制は無意識に働く心のセキュリティシステムですが、幼児を経たみなさんなら「これならできそうかも」と思える防衛を知り、意識するだけでも身に着けていけるはずです。
まずは自分の防衛癖を知り、同じ方法ばかりに頼らず複数組み合わせてみましょう。
自力で心を守るがすべてではないので、どうしてもつらいときは誰かに相談してみるのも大切な心の守り方ですよ。
適度に周りにも頼っていこう
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