こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
PTSDという言葉を聞いたことある人は多いかもしれませんが、具体的にどういった症状・状態を指すか知っていますか?
✓PTSDって名前しか知らない
✓トラウマを思い出すこと?
✓トラウマ…って実際どういうこと?
PTSD=トラウマ??
今回は、PTSDの特徴的な症状や援助についてざっくり解説します。
心理系大学院受験予定の人や心のケアをする人は、PTSDについてしっかり理解しましょう。
何でもかんでもトラウマって連呼する系心理士にはなるなよ
そうでない人は、PTSDという言葉だけ知っている状態からもう少し知って、深刻になる前に相談できるようにしましょう。
こんな人におすすめ!
・PTSDの名前しか分かっていない人
・トラウマを抱えている人
・いじめや事故で傷ついたことがある人
・被災者ボランティアをする人
※心理系大学院受験生は必須
PTSDとは
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)は、心的外傷後ストレス障害とも言います。
自分の命を脅かすほどの強い恐怖や無気力を感じる心的外傷体験(トラウマ体験)の後に、身体的・精神的な症状が1ヶ月以上生じる状態を指します。
症状が1ヶ月以内の場合はASD(急性ストレス障害)と呼ぶ
\ ASD違い /
PTSDはもともとベトナム戦争の帰還兵の後遺症として注目された症状で、以下のような出来事から生じやすいと考えられています。
・戦争体験や災害被害
・(性的)虐待
・事故
・いじめ など
世間ではびっくりするものやグロいものを見て「トラウマだわー」とか言うこともありますが、トラウマって実際にはもっと深刻なイメージ。
筆者はトラウマって軽々しく言えない…
ちなみに、上記のような体験をした=必ずPTSDになるというわけではありません。
PTSDになりやすい人・なりにくい人について詳細は不明ですが、レイプや戦争体験者、レジリエンス(≒心の回復や抵抗力)が低い人の場合はPTSDが生じやすいとも言われています。
人と共有しづらい体験なのもつらいよね
「PTSDになりやすい=心が弱い」じゃねーから!それだけ強い恐怖なのだ!
PTSDの主な症状
PTSDの主な症状には以下のようなものがあります。
①再体験・侵入症状
②回避症状
③認知と気分の陰性の変化
④過覚醒症状
基本的には6歳より上で適応される内容で、6歳以下の場合は、
・心的外傷体験(トラウマ体験)を直接受けるor親に起こった出来事を見聞きする(TVや動画での目撃は除く)
・心的外傷体験(トラウマ体験)を思い出すのではなく、ごっこ遊びとして繰り返す(地震ごっこなど)
・遊びが減る
・引きこもる など
こういった特徴も見られます。
トラウマを再現するようなごっこ遊びはポスト・トラウマティック・プレイと言う
親のDVを子どもに見せるのは虐待かつPTSDのもとにも…
①再体験・侵入症状
再体験・侵入症状は、自分が体験した心的外傷体験(トラウマ体験)を無意識に思い出してしまうことを指します。
・悪夢に見てうなされる
・あたかも今再び起こっているように感じる(フラッシュバック)
・似た出来事から強い恐怖や不安を思い出す など
当時の強い恐怖や無力感を再び感じてしまうことで、震えや発汗、過呼吸などの生理的な症状が見られることもあります。
思い出したくないのに繰り返されちゃうんだ…
②回避症状
回避症状は、心的外傷体験(トラウマ体験)に関係することをとにかく避けようとする状態を指します。
・つらい記憶や考え、感情を避けようと思考停止になる
・関連する人、物、場所、言動、状況など何でも避ける など
「DV彼氏との思い出にある物事は全て避ける」「いじめの加害者を避ける」など。
つらいことを回避すればつらい再体験も回避しやすいかもしれませんが、「買い物に行けない」「公共交通機関を利用できない」など生活に支障が出ることも多いです。
もうあんな思いしたくないんだ…
③認知と気分の陰性の変化
認知と気分の陰性の変化は、否定的・負の感情が生じやすくなることを指します。
・自分や他人、世界に対して過剰に否定的になる(すべて私が悪い、誰も信じられないなど)
・強い怒りや恥、恐怖感などが続く
・何かに興味をもったりやろうという気になれない
・孤独感を感じやすい
・幸せな感覚や満足感を感じ続けられない など
心的外傷体験(トラウマ体験)に関することを思い出せなくなることもあります(解離)。
強いストレスで記憶は飛ぶんよ…
\ 内容は真面目です /
④過覚醒症状
過覚醒症状は、心的外傷体験(トラウマ体験)に関連して過剰に興奮したり反応したりしてしまう状態を指します。
・出来事に関連した人や物に対してイライラなど攻撃性を向ける
・無謀な行動に走る(リストカットなど)
・過剰な警戒
・些細なことにも過度にビクビクしてしまう
・集中しづらい
・寝つけない、寝続けられないなどの睡眠障害 など
身体も疲れちゃうね…
PTSDの援助
PTSDは特に心身共に危険な状態に晒されてしまう精神疾患であるため、第一に安全の確保が重要になります。
クライエントのことを支持や励まして、逃げたくなるトラウマ体験を落ち着いて話せるように信頼関係を築くことが肝です。
信頼関係の形成は心理療法(カウンセリング)全般に言えることでもある
カウンセラーもある意味加害者だからまずは話せる環境作りからな!
安心の獲得や治療のためにPTSDの症状について伝えたり(心理教育)、今の生活での困り感について対処を考えたりすることも有効です。
現在の症状を抑えたり改善したりするために薬物療法を並行することもあります。
心理的な介入
心理的な介入としては以下のような方法があります。
・エクスポージャー
・EMDR
・芸術療法
・(子どもなら)遊戯療法
・集団療法 など
一部は関連記事があるので、分からない場合はそちらもご覧ください!
EMDR(Eye Movement Desensitization of Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)は認知行動療法の1種でF. シャピロが提唱。治療者はクライエントの目の前で一定に指を動かし、クライエントは心的外傷体験(トラウマ体験)を思い出しながら指の動きを追ってもらい、弛緩を促す方法。PTSDに効果的と言われている
いーえむでぃーあーる
本人にとって強い恐怖や無力感を思い出すトラウマを話すというのはとても勇気がいることなので、話をすると症状が強まることも十分ありえます。
なので、トラウマと向き合ったらリラクセーションなどで心身を緩める方法をセットにするのがより効果的と考えられています。
気持ち緩んで大丈夫だよ~って安心を伝えよう
描画や遊びを通して気持ちを表現し、発散したり自分について振り返ったりすることも大切な方法です。
また、集団療法といって他にトラウマを抱えた人と傷ついた体験を共有し、彼らから支持される方法も有効と言われています。
いろんなアプローチがあるね
治療者として関わる側は、好奇心でいろんなアプローチを試すのではなく相手の様子をきちんと見て配慮ある接し方をしましょう(特に初学者)。
おわりに:心身の安心を第一にしよう
PTSDとは、命に関わるほど強い恐怖や無力を感じる心的外傷体験(トラウマ体験)の後に心身に問題が生じる深刻な症状です。
性被害やいじめなど…心に大きな傷を刻みやすい出来事から生じやすいですが、こういった出来事を受けたからといって必ずPTSDを発症する訳ではなく、「発症=心が弱い」訳でもありません。
本当につらい体験をして心身疲弊するのはおかしくないよ
PTSDの主な症状はこんな感じ。
①再体験・侵入症状
②回避症状
③認知と気分の陰性の変化
④過覚醒症状
効果的な援助方法は認知行動療法のEMDRやエクスポージャー、リラクセーションなどいろいろありますが、本人の心身の安全を守るのが第一です。
自分にとって心底ショッキングだった体験は、なかなか人には言えないし落ち着いて話すのも難しいものです…。
援助側は支持したり励ましたりして信頼関係をしっかり築きましょう。
話聞き出すだけ聞いて放置はご法度な!
一般の方ならただ寄り添って相手を肯定するだけでも大きな安心につながると思う
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