こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理学を勉強し始めると精神物理学という単語を目にして、こんな疑問が生まれがち(以下、当時の筆者の心の声)。
「物理学って言うけど心理と関係あるの?」
「勉強しなきゃだめ??」
「ぶっちゃけよく分からん」
だって物理学っていうじゃん(泣)
名前こそ違いますが、実は精神物理学は心理学を科学的学問に近づけた重要な考え方です。
今回は、精神物理学や代表的な人名、用語についてざっくり整理します。
心理学に大きな影響を与えた功績があるので、心理学を勉強している人はせめて流れやキーワードは知っておきましょう。
こんな人におすすめ!
・精神物理学何それ?の人
・見えないものの数値化に興味がある人
・ウェーバーやフェヒナーが混ざる人
※心理学を勉強中の学生・社会人は是非
精神物理学とは
精神物理学(psychophysics)とは、精神と身体の関係性を測定して科学的に解明しようと試みた学問です。
後の実験心理学の基礎ともいえる重要な考えで、ドイツのライプチヒ大学教授のG. T. フェヒナーが創始しました。
心理学のはじまりと言われるヴントも@ライプチヒ…?!
君のような勘の良いガキは好きだぞ
精神物理学の考え・法則は以下の3つが有名(それぞれ式も記載したけどふ~んでおk)。
法則名は関連者
ウェーバーの法則
ウェーバーの法則はE. H. ウェーバーによる重さを弁別する実験から導かれた法則で、精神物理学の考えに大きく影響しています。
弁別…違いを見分けて区別すること
重さの弁別の実験は、ベースとなる重さ(標準刺激)と別の重さ(比較刺激)を比べるとき、どのくらいの重さで違いを区別できるかを調べる実験です。
たとえば、100gと101gの置物の重さの違いは弁別できなくても、100gと102gの置物の重さの違いが分かるとします。
感覚を認識できる最小刺激は閾値といい、その中でも2つの刺激の違いを弁別できる最小刺激を弁別閾(differential threshold)といい、この例で言えば2gが弁別閾。
ウェーバーによると「弁別閾は標準刺激に対して一定の割合になる」とのことで、この法則性がウェーバーの法則。
100gと102gで弁別可能なら200gと204gもイケる的な
人の感覚を数値化したこと、感覚に一定の法則があると唱えたことは後の心理学の基礎とも言えるでしょう。
(ウェーバーの法則って言ったのはフェヒナーだけど)
ウェーバーの法則を表すと
K(ウェーバー比)=Δl(弁別閾)/ l(刺激量)
フェヒナーの法則
フェヒナーの法則(by G. T. フェヒナー)は、ウェーバーの法則の発展ver.です。
ウェーバーの法則では弁別閾に注目し、一定の割合をとる規則性を見出しました。
が、たとえば100gなら2gの弁別閾が、1000gなら20gの弁別閾が必要となるなら、弱い刺激には敏感で強い刺激になるほど鈍くなると言えます(そして、物理的には明確な差でも弁別閾を超えない差は、心理的な感覚では同等ということに…!)。
ぐぬぬ納得いかぬ
フェヒナーの法則では心理的な感覚に注目して、「感覚的な強さは刺激の強さの対数関係になる」という法則を見出しました。
フェヒナーの法則では、弱い刺激なら弁別しやすいためグラフが上がりやすく、刺激が強くなると弁別しづらいためグラフが上がりにくくなるイメージをつかめれば◎
10円拾うより諭吉拾う方がテンション上がるアレみたい
\ 興味があれば /
フェヒナーの法則を表すと
E(感覚)=K(定数)log l(刺激の強さ)
スティーブンスの法則
ウェーバーやフェヒナーの法則で、刺激と感覚に関する法則を見出してきましたが、刺激によっては弱い刺激が弁別しにくく、強い刺激は分かりやすいこともあります。
痛いって感覚とか!
スティーブンスの法則(by S.S. スティーブンス)は、刺激の内容によって感覚と刺激の関係性が変わる法則を見出し、数式化したものです。
スティーブンスの法則を表すと
E(感覚)=K(定数)ln(刺激の強さと感覚毎の指数)
感覚の測定法
精神物理学はE. H. ウェーバーが弁別閾に注目したことから始まったようなもので、彼に注目したG. T. フェヒナーは閾値(感覚の発生を認識する最小値)の測定法を3つ開発しました。
加えて、S.S. スティーブンスがマグニチュード推定法を開発しています。
↑3つよりマグニチュード推定法の方が爪痕でかいかも?
極限法
極限法(method of limits)は、弱い刺激から順に強くしていき(or強い→弱くしていき)、被験者が変化を感じる最小刺激を探る方法です。
弁別閾(丁度可知差異)を探る方法なので、以前は丁度可知差異法とも呼ばれていました。
地道ィ
他の方法よりシンプルで、時間も短く行える反面、刺激を続けて提示するため慣れが生じやすいデメリットがアリ。
恒常法
恒常法(method of constant stimuli)は、実験者がランダムに刺激を提示し、被験者に感覚を判断してもらって閾値を探る方法です。
以前は当拒法とも呼ばれていました。
工夫してみた
ランダム提示なので、他の検査よりも被験者のバイアス(慣れたり予測したりでの反応の歪み)は少ないものの、充分なデータを得るにはかなりの試行回数や時間を要するのがデメリット。
調整法
調整法(method of adjustment)は、被験者が自ら刺激の強さを調整して閾値を探る方法です。
以前は平均誤差法とも呼ばれていました。
実験者「被験者に任せるべ」
上記2つよりさらに簡単な手続きですが、被験者依存すぎるため反応のバイアスが生じやすいのがデメリット。
マグニチュード推定法
マグニチュード推定法(magnitude estimation)は、基準になる刺激の強さを「10」として、次に提示される刺激を数値で答えてもらう方法です。
基準の数値を設けることで、たとえば痛みが半減したら「5」と答えるなど、目に見えない感覚が測定しやすくなったメリットがあります。
今の心理測定っぽい!
おわりに:精神物理学は現代心理学の基礎の基礎!
精神物理学は「物理学」という名はつきますが、目に見えない感覚の数値化を試みて測定するなど現代心理学に発展する基礎の基礎の学問です。
提唱したのはG. T. フェヒナーで、E. H. ウェーバーが弁別閾に注目した実験が影響しています。
▼代表的な法則
✓ウェーバーの法則
✓フェヒナーの法則
✓スティーブンスの法則
▼代表的な感覚測定法
✓極限法
✓恒常法
✓調整法
✓マグニチュード推定法
目に見えない感覚を数値化しようとして、一定の法則を見出した功績は後の心理学に大きく影響しています。
心理って意外と科学っぽいでしょ?
※心理なりに具体的に研究してます
こういった歴史の流れを知っていると「心理学は科学的学問」という意味も理解しやすいのでしっかり押さえておきましょう。
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