こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人は不満や矛盾していることを嫌う生き物で、それらがあればどうにかしようとする心理が働きます。
今回は、不満や矛盾を正当化する心理である認知的不協和理論について解説します。
✓理不尽な仕事を割り振られたから正当化した
✓恋人がだらしなくて嫌だけど尽くしてしまう
✓すぐ浮気する自分だけど何故かあまり罪悪感がない など
結果の良しあしはともかく、良くない環境や要求に対して人は考えや行動を変えやすい一面があります。
人の考えや行動を変えたいときの参考にもなるので最後までご覧ください。
恋愛黒歴史が送るブログです
こんな人におすすめ!
・社会心理学に興味がある人
・認知的不協和理論について知りたい人
・不満や矛盾のストレスから抜ける方法を知りたい人
※心理系大学院受験生・臨床心理士試験受験生は要チェック
認知的不協和理論(cognitive dissonance theory)とは
認知的不協和理論とは、不満や矛盾で生じるストレスを減らすために、不満や矛盾のない状態に認知を変えたり回避したりすることを指します。
言動に矛盾を感じたら合理化する心理かな
たとえば、喫煙者に「煙草は身体に悪いからやめなよ」と伝えてみます。
喫煙者は①喫煙を肯定する自分と②「身体に悪いから喫煙しない方がいい」という否定形の2つの認知に直面し、肯定と否定の相反する状態(不協和状態)になりますね。
気持ちよく行動しづらいやつ
そこで、「煙草よりも大量飲酒の方が身体に悪い」「禁煙する方が精神衛生上まずい」などの認知をもち、喫煙行動を肯定することで不協和状態を解消することができます。
自分の言動に一貫性を持たせることですっきりする感じかな
つまり、状況を合理化したり、自分の考えを正当化するなどして心の協和を図ろうとする心理といえます。
合理化など防衛機制についてはこちらで復習を!
認知的不協和を解消することでストレスや緊張状態を回避することができるので、自分にとって良く働くことが多いと思われます。
しかし、あくまで認知を合理化する心理なので、自分にとっては良くても相手にとっては良くない場合も起こりうることを覚えておきましょう。
「相手に迷惑なんて掛からんやん」という意見も出ますが、煙草なら副流煙など相手にとっては良くない場合も確かにありますので…!
恋愛での認知的不協和理論①
実は浮気する人の考え方で、認知的不協和理論が起こっていることがあります。
▼例
Aさんは、彼女と交際中でも他の異性とデートを頻繁にしていた。
→本命がいるのに本命以外の異性とデート(Aさんにとって矛盾発生)
→矛盾による罪悪感やストレスを解消するために「異性とのデートは浮気じゃないから問題ない!(否認)」とAさんなりに行動の不協和を解消し、良しとした。ちゃんちゃん★
Aさん内では自己完結してるけど良しじゃないんだなぁ;
浮気に対する不協和の解消として「浮気相手を好きになってしまえばいい」という本人なりの不協和解決法もとられやすいです。
暴★論
個人のストレスや不満、緊張状態を解消するために認知を合理化させることは、本人の気持ちの解決にはなりますが『人と話し合う』という解決策を見落としやすくなりがちなので要注意。
\ 浮気関連の記事はこちら /
恋愛での認知的不協和理論②
言動に一貫性をもたせたくなる人の心理につけこんで、自分に好意をもってもらう活用法もあります。
気になる人にちょっとしたお願いやワガママを伝えてみると、相手の中で認知的不協和が起こり、あなたに対して少しの好意を植えつけることもある意味可能です。
▼例
一緒に飲みに行ったAさんから「家まで送って~」とお願いされ、面倒ながらも了承した。
→ぶっちゃけ「面倒」なのに「送ってあげる」という少しの不協和が発生
→Aさんは「同僚だから送ってあげる」「好きか嫌いかで言えば好きな方だし送ってあげちゃう」など合理化して、行動に一貫性をもたせる
「お願いやワガママを聞いてあげるのは、多かれ少なかれ相手のことが好きだから」のように認知させることで、自分に好意をもってもらうという理屈です。
思考のバグを誘え
恋愛に限った話ではありませんが、甘え上手が多くの人から好かれる理由は認知的不協和理論が関係しているとも言えます。
お願いやワガママを伝えて聞いてもらう必要があるので、お金をせがんだり無理難題をふっかけるのは止めておきましょう。
しょうがないなぁと思えそうなお願いがいいね
相手の認知の歪みを狙うテクニックになりますが、お願いやワガママを聞いてもらえたらしっかり感謝も伝えるとより好印象ですね。
恋愛で生じやすい認知の歪みについてはこちらをどうぞ。
不協和を解消する4パターン
自分の言動に矛盾が生じたときに、一貫性をもたせるために新たな認知をもち不協和を解消します。
よくある4パターンはこちら。
① 行動の変更
② 認知の変更
③ 過小・過大評価
④ 新しい認知の追加
自分に矛盾があるときの参考にどうぞ
①行動の変更
現実と理想でかみ合わないときに、理想に近づくように自らの行動を変えるパターンです。
・格好良くて年収高い人と付き合いたいけれどことごとく玉砕→自分を磨いて再アタックを試みる など
ポジティブ人間
②認知の変更
理想と現実でかみ合わないときに、理想を変更するパターンです。
・格好良くて年収高い人と付き合いたいけれどことごとく玉砕→この際年収は多少妥協して格好良い人とのマッチングを続ける など
一応リアリスト思考
③過小・過大評価
言動の矛盾が生じるときに、過小か過大評価をして認知を落ち着かせるパターンです。
・交際相手が他の異性と頻繁にデートしていると発覚→「他の異性はあくまでただの友だちだから何かあるわけない」と思い込む(過小評価) など
(震え声)
・交際相手がいるにもかかわらず他の異性と頻繁にデートしている→「いろんな異性と遊ぶのは見る目を養うのに必要だ!」と思う(過大評価) など
開き直りィ!
④新しい認知の追加
別な新しい考えをひねり出すパターンです。
・恋人がいて別れていないのに浮気されていると発覚→執着せず「結婚前に相手のダメなところが分かって良かった。この手の人はもう止めよう」と考え出した など
悟り
自分がしやすいパターンはどれかな?
おわりに:自分の中のモヤモヤは解釈次第ですっきりできる!
認知的不協和理論は、自分の中でつじつまが合わないときの不快感を解消するために、つじつまを合わせようと認知や行動を変えることを指します。
現実をみたり、無視したり、新しい考えをひねり出したり、考え方1つでモヤモヤを解消することは可能なので、いろいろな考えを出してみることが大切です。
また、認知的不協和理論を使って、人に好意をもってもらうことも可能です。
ちょっとしたお願いやワガママは言い得なので甘え上手になりましょう。
ダメなら素直に引っ込めばいいからね~
\ 上手に意見するには… /
なお、認知的不協和を解消する考え方には、自分にとって都合の良い解釈もあります。
Bさんの浮気の理屈とかね!
自分は良くても相手を傷つける場合や、人に相談する選択肢を消してしまう可能性もあるため、モヤモヤを感じたら第三者に相談して客観視することも大切です。
モヤモヤするなぁというときは自分なりの考えパターンを探してみてください。
認知歪ませるんじゃなくて受け止められると良いね
コメント
自分はモテないので恋愛しないというのは認知的不協和になりますか?
よくコスパが悪いと言われます コスパが悪いということに対する社会的評価は低いですが、私はよくわかるのです
学校や職場などどこにいってもすぐに女性と仲良くなれるような人には想像もつかないと思いますが、話しかけるだけでも大変なんです
それは、前述の男性と異なり、私がその女性の仲間であるという感覚を持ってもらうことができないため、同じ学校や職場でありながら、まさに街を歩いている見知らぬ女性に話しかけるのと同じつまり街中のナンパと同じ状態になるのです。もちろん私の自意識過剰という面はあると思いますが、実際「あなたのことをよく知らないので」という理由で何度かお断りされました。
その時は「これから知ってくれればいい」と思ったのですが、どうやら「好きな人がいる」などと同様の「あなたが嫌い」とか「あなたに興味がない」などというと、後で恨まれたりして大変だから体のいい拒絶表現だとわかりました。なぜならその後相手は目も合わそうとしなかったからです。友達どまりという言葉がありますが、友達にもなってくれないわけです。
ちなみに告白したのではありません。挨拶とかそんな感じです。ただ向こうからすれば全く視野に入ってない人間にいきなりというのは脅威だったかもしれません。しかし、私にはそれを脅威にしない方法がなかったのです。
私には浮気もへったくれもないのです。最初の最初を突破できないのですから。
たなかさん
お返事が遅れてしまいすみません。
異性との関わりでとても苦労しているのですね。
他人にとっては些細なことでも、自分にとってはすごく難しいことってありますよね。
質問についてですが、確かに「モテないから恋愛しない」というように自分に一貫性を持たせた認知をしているようですが、認知的不協和かどうかは、たなかさんが「恋愛したい」「異性と仲良くなりたい」と強く感じているかによると思います。
なかなか恋愛に発展できない自分にストレスや不満を感じているようでしたら、認知的不協和が働いているかもしれません。
そうでなく、どこか諦めているような感覚でしたら、それは自分がモテない理由を合理化(正当化)しているかもしれませんね。
告白をしたわけではなくて、「あなたのことをよく知らないので」と断られたり、「これから知ってくれればいい」と思われた部分が読み取れなかったのですが、たなかさんなりに頑張ってみた関わりが少し急接近ぎみだったのかな?と思いました。
ご自身が「できない」と感じることは、さらにハードルが高くなりやすいので、少しでも「異性とあいさつできるかも」などの感覚がもてるといいなぁと思います。