こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理士と言えばカウンセリングが仕事内容として有名ですが、カウンセリングを受ける側も心理士を目指す側もこんな疑問をもちませんか。
✓カウンセリングってどうやるの?
✓カウンセリングってどんな立場があるの?
✓何か特別な技でもあるの?
✓聴く以外の介入もあるの?
今回は、カウンセリングの流派の1つ行動療法についてと行動療法で用いられるメジャーな技法を解説していきます。
行動療法はレスポンデント条件づけとオペラント条件づけの考えをベースにするので、まだ知らない人は下記記事で勉強しておくと読みやすくなります。
心理士を目指す人にとっては抑えるべき大切なポイントなのでしっかりインプットしておきましょう。
そうでない人にとっても、行動療法の技法は実践しやすいので不安を少し和らげてみたり、日常生活上で増やしたい行動を増やす・減らしたい行動を減らすのに役立ててみてください。
心理学の中でも行動療法は再現性が高いよ
こんな人におすすめ!
・各条件づけごとに技法を知りたい心理系の人
・人の行動を変えるための方法を知りたい人
・心理学の勉強をしている人
・教育関係の人(先生やパパママ)
※心理系大学院受験生は必須!
長いので情報量パンクする場合は小分けに見てね
カウンセリングの立場(行動療法)
「カウンセリング」という言葉は美容業界などで使われることもありますが、心理士の行うカウンセリングは心理的な問題を解決したり、心理的により良くなれるための援助を指します。
心の病気を一発で治してくれる!は違うよ
心理士の行うカウンセリングは、それぞれが得意とする理論に基づいて行われることが多いです。
主に3大心理療法と呼ばれるのがこちら。
・(認知)行動療法
・来談者中心療法
クライエントの話をしっかり聴くなど基本的な姿勢に共通点はありますが、流派によってカウンセリングで使われる技法は異なってきます。
\ 心理士についてはこちら /
今回解説する行動療法では、人の問題行動を不適切な学習と捉えます。
そして、不適切な学習を消去し、適切な行動を学習(強化)することを目指します。
ようするに、良くないことは止めさせて代わりに望ましいことを覚えてもらう方法だよ
行動療法は心の問題に具体的な行動でアプローチするため、一般でも実践しやすく分かりやすい良さがある一方で、すべての行動を条件づけられる訳ではないという考えもあります。
個人的には、白黒はっきりさせたい人には相性のいい心理療法だと思います。
教師は好きそうなイメージ
行動療法を提唱したのはH. J. アイゼンク
下記では、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけの2つの代表技法を解説していきます。
心理系の人は単語まで覚えて、そうでない人は気になる技法のやり方をなんとなく知りましょう。
レスポンデント条件づけの代表技法
『パブロフの犬』で説明したレスポンデント条件づけはペットのしつけでよく使われますが、もちろん人間への適応も可能です。
小さい子への教育~職場や日常生活上での人に対してまでちょっとした条件づけには最適
言葉が通じないペット・幼児にも使えるシンプルさで、主に不安を少しずつ慣らしていき、和らげる方法が多いです。
・系統的脱感作法
・エクスポージャー(暴露法)
∟フラッディング
★☆☆は個人でもやりやすい、★★☆は難しめ、★★★は専門家に頼ろうです
系統的脱感作法(systematic desensitization)★☆☆
系統的脱感作法はJ. ウォルピが開発した技法で、少しずつ不安や緊張、恐怖に感じることを減らしていき、克服していく方法です。
カウンセリングでも個人でも実践しやすいかな
▼おおまかな手順
①リラックスするための弛緩法を身に着ける
②不安なことを書き出し、低い→高い順に並べた不安階層表を作る
③不安階層表の低いものからイメージ→弛緩法でリラックス
④高い不安までイメージ→リラックスしていく
①筋弛緩法はリラックスすることが目的なので、呼吸法や安心するイメージ、リラックスできる趣味など個人に合った方法をとります。
不安や緊張、恐怖を感じることを小さなことからイメージ+リラックスで少しずつ減らしていく条件づけの方法です。
ベース理論は、不安などを感じたときに同等の安心を得られれば不安を減らすことができるという逆制止です。
閉所恐怖症が「閉所=怖い」以外に「閉所=寝やすい」とか安心もできればOKって感じ
心理系大学院受験生は、J. H. シュルツの自律訓練法やE. ジェイコブソンの漸進的筋弛緩法も、名称くらい知っておきましょう
②不安階層表は、不安なことに0(低い)~10点(高い)の点数をつけて、無理がないように不安の低いものから実践していきます。
イメージがメインなので誰かと一緒にやる方が安心できるかも
不安や緊張、恐怖感などを感じても当初よりも点数が下がったり、その後リラックスできる方法を身に着けられたら徐々に克服していると捉えましょう。
不安を完全になくす観点からは離れよう
エクスポージャー(暴露法:exposure)★★☆
基本は系統的脱感作法と同じで、エクスポージャーの特徴は2つあります。
✓ベース理論は逆制止ではなく、慣れ(馴化)!
不安なや緊張、恐怖感など低いものから順に、実際にその場面にさらして、不安などを避ける行動を減らしていきます。
逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ
不安や恐怖を感じることを体験して克服していく方法なので、エクスポージャーは1人で実践するよりも信頼できるカウンセラーや友人など第3者と行う方が望ましいです。
実践側にとってはイメージよりもハードルが高いので、本人の同意を前提に行いましょう。
覚悟はいるけど慣れるの早そうだね
フラッディング(flooding)★★★
エクスポージャーのやり方で、最初から最大級の不安や緊張、恐怖感などに身をさらして慣らす方法をフラッディングと言います。
いきなりクライマックス
フラッディングには3つの注意点あり。
・カウンセラーなど信頼できる人と行うこと(心の安全)
・本人の身の安全をしっかり確保すること(身体の安全)
フラッディングは他の技法よりリスキーで、必ず克服できる保証もないので、体感ですが使用している心理士は少ないかと…(行動派を専門にしている心理士の元でやるのが更に安心)。
筆者が聞いた衝撃事例は「Gが苦手で克服したい人をGしかいない部屋に数分入れた」。無事成功したらしい…
トラウマの危険もありそうだからやるなら完全成功させたいね…
オペラント条件づけの代表技法
『スキナー箱の実験』で解説したオペラント条件づけは、刺激(S)→反応(R)が基本でした。
レスポンデント条件づけの代表技法よりも手軽に実践しやすく、行動を強化する方法が多いです。
・シェイピング法
・トークン・エコノミー法
・タイムアウト法
日常でやられていることも多いよ
シェイピング法(shaping)★☆☆
シェイピング法は、一度に達成することが難しい目標に対して細かい達成目標を設定し、達成のたびに強化することで徐々に目標に近づけていくことを指します。
RPGの主人公が成長するのは大体これ
ポ〇モンでチャンピオンになるためにLv.5御三家つれてジムリーダー倒して目指すのがまさに
不登校の子どもに対していきなり「登校(目標行動)」を強いるのではなく、たとえば「登校できる時間に起きる」「玄関まで行く」「登校時間に散歩する」「校門まで行く」など。
小分けに設定した目標をクリアしていくことをスモールステップと言います。
スモールステップクリアのたびにご褒美などで強化する方法なので、モチベーション維持もしやすい特徴があります。
スモールステップの組み立て方のコツはこんな感じ。
・難しい目標ほどスモールステップを細かくする
・目標はとにかくスモールで無理なく
・「~しないようにする」否定形は避ける
・「~する」で分かりやすい行動設定にする
人にやるなら相手が納得できるスモールステップ作りを!
トークン・エコノミー法(token economy)★☆☆
トークン・エコノミー法は、好ましい行動をしたらトークン(シールなどちょっとしたご褒美)を与えることで、好ましい行動を強化していくことを指します。
ワイらが強化されている「ポイントカード」のことやで
たとえば「1日1時間お勉強できたら好きなキャラのシール」「1日30分できたら普通のシール」などを子どもに与えて、キャラシールが5枚溜まったら好きなお菓子を買ってあげるなど。
子どもの支援でも、大人にエサをぶら下げることにも効果的
トークン・エコノミー法では「~できなかったらご褒美なし!」などペナルティーは基本与えず、好ましい行動ができなくても「今日はできなかったけど明日からまたやれるといいね」など事実と肯定を伝える方がベター。
自発的な行動を目指すのに脅迫はアウトだねぇ
タイムアウト法(time out)★★☆
タイムアウト法は、問題行動後に誰もいない別部屋に移動させるなどで問題行動の強化を止めることを指します。
悪循環を物理的に断つイメージかな
▼タイムアウト法の例
・教室内で騒いで注目を得ようとする子どもを、別室でしばらく待機させる
・職場でカッとして物を壊してしまう自分が、カッとなるときに別部屋でクールダウン など
理論ベースはオペラント条件づけの負の罰なので、実行すると少し厳しめにも見えます。
子どもなど他人に実行する場合は、嫌がらせにならないように注意しましょう。
恐怖を植えつけることが目的じゃないよね。穏やかに促して退屈に思わせるくらいがポイント
クールダウンは5分程度にしておくと切り替えもしやすくなります。
トイレ行くと無性に落ち着くのは筆者以外にもいるはず
その他、強迫性障害に使われやすい暴露反応妨害法、アルコール依存や摂食障害に使われやすい嫌悪療法もあります(精神疾患も絡むので今回割愛)。
おわりに:問題行動を止める+好ましい行動のセットが重要
行動療法は、心という目に見えない問題に対して目に見える行動を用いるため、分かりやすく再現しやすい良さがある心理療法の1つです。
基本的には問題行動をなくすことと、代わりに好ましい行動を身に着けることがセットです。
怒って終わりにしないよ
理論ベースは大きく2つの条件づけに分けられるため、心理学を勉強している人は分けて覚えましょう。
・系統的脱感作法
・エクスポージャー(暴露法)
∟フラッディング
・シェイピング法
・トークン・エコノミー法
・タイムアウト法
技法の中には信頼できるカウンセラーなど第3者と一緒に行う方が安心できるものもありますが、個人で試せる考え方も多いのでちょっとしたセルフコントロールにも使いやすいです。
シェイピングとか各自でやってる人も多いかな
行動療法に興味がある人は、こちらに詳しく書いてあるので読んでみてください。
一般から初学者まで誰でも読めると思いますが、ボリューミィです。
今日も勉強おつかれさん
コメント