こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人が学習し、成長していくには自らの学び以外にも方法がありますね。
✓子どもが教えていないことを覚えた
✓成功者の体験を見聞きして朝活するようになった
✓身内の言葉遣いがどんどん自分に似てきた など
実は、人は自分の体験がなくても学習できる生き物で、他人を見て学習することをモデリング(観察学習)と言います。
今回はモデリングについてと、モデリングを応用した心理療法について解説します。
心理療法と言うとカッコいいけど日常でもよく見られる訓練法かな
モデリングについて知ると、自分や他人の学習や成長を今より1歩進めるヒントが得られます。
「ただ本を読む」「尊敬する人を真似る」よりも1歩踏み込んだモデリングで着実に成長していきましょう。
重要ワードなので心理のたまごは要チェック!
こんな人におすすめ!
・モデリングに興味がある人
・行動心理学の基礎を知りたい人
・子どもや部下などの教育関係者
※心理系大学院受験生は必須
モデリング(modeling)とは
モデリングは、自分が直接経験していないことでも他人の観察と真似で学習できることで、観察学習とも呼ばれます。
提唱したのは心理学者のA. バンデューラで、モデリングの他にも『自分の行動の結果を自分でコントロールできるという感覚』を指す自己効力感(self-efficacy)の概念も提唱
子どもがアニメを見ながら人との関わり方を真似したり、大人が成功者の事例を知って学習していくのは、他人の経験から学んだ結果ですね。
(真似で終わるか学習できているかが問題)
モデリングの実験より
A. バンデューラは、人形(ボボ人形)を使った実験でモデリング理論を提唱しました。
※スルーしてもいいけど結構面白いよ
子どもをA、B、Cの3グループに分け、それぞれに「大人が人形に対してとった行動」の映像を見せる。
Aグループ…人形に対して大人が暴力する映像を見せる
Bグループ…人形に対して大人は何もせず、静かに遊ぶ映像を見せる
Cグループ…何の映像も見せない
その後、人形のある部屋に子どもたちを入れて、行動観察。
B、Cグループに比べて、Aグループは人形に対して攻撃行動(殴る蹴る、暴言など)がはるかに多く見られた。
つまり、他者の言動を見るだけでも人は学習するという結果です。
人は真似っこ大好き
「暴力的な漫画やゲームは子どもの教育上心配だから反対!」という声も聞こえてきそうですし、モデリングを思うと頷けます。
しかし、心配する気持ちは当然ですが、モデリング(観察学習)した人全員が真似するわけではないので注意。
元々アグレッシブな子が影響受けやすいだけかもしれないし、引っ込み思案な子はビビるかもしれない
一概に「暴力的なアニメを見たから子どもが暴力的になった!」とは言えず、周りがグチグチ言うことで暴力行動が強化されるという可能性も…!
止めなさいはやれというフラグ by キッズ
禁止されると余計にやりたくなる心理効果をカリギュラ効果と言い、詳細は下記記事へ!
さて、モデリングはただ見たことの真似ではなく、見た行動を継続的に続ける学習するまでを指します。
モデリングは人が行動し、その行動の良い・悪いなどの評価を知り、その人の行動を自分の中に落とし込むという学習で、理論的には代理強化が働きます。
他人ができたことを自分もできたかのように錯覚するやつ
厳密に言うと見るだけの学習は不十分で、自発的な行動を定着させるには褒めや罰などの強化はつきものです。
① 注意…モデルの観察
② 保持…モデルを見て覚える
③ 運動再生…覚えたことの実践
④ 動機づけ…③を続けるためのフィードバック!
覚えなくていいけど過程はふーんって見て
職場で多い「研修ビデオを流して終わり」や「手本を見せて終わり」だけでは、①、②(せいぜい③)までで、新人の自発性の強化は不十分とも言えますね…。
ギブミ―、フィードバック!
強化や罰など行動心理学の基礎用語はこちらで要復習!
「子どもが直接褒められて親の手伝いをする」など幼い頃は直接強化が多いですが、「周りがお手伝いをするとお小遣いをもらっているから親に交渉してお手伝いをする」など、大人になるにつれ代理強化が多くなります。
モデリングを使った心理療法
モデリングの理論を使った代表的な心理療法として2つ紹介します。
どちらも日常で実践できている人もいるくらいで、難しいことではありません。
具体的な方法の前に、今回は概要を解説します。
興味のある人は本読んでみてね
ソーシャルスキルトレーニング(SST:Social Skill Training)
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、不適切な行動を修正し、人間関係や社会生活を円滑にするためのコミュニケーションを訓練することを指し、社会的スキル訓練とも言います。
コミュ障の期待
まず、その人の目標とするソーシャルスキル(例:挨拶の仕方、謝り方など)を決めて、段階的に達成できるようにプログラムを組みます。
スモールステップは基本
プログラムは、目標となるソーシャルスキルの例を見せてから実際にロールプレイで実践し、即フィードバックで好ましい行動を強化していくパターンが多いです。
・挨拶の仕方
・謝り方
・お礼の言い方
・相手の気持ちを推測する
・複数人での話し方 など
発達障害の人やコミュニケーションが得に苦手な人が関わりやすい方法と言えます。
心理療法といっても誰でもやれそうだね
ソーシャルスキルトレーニングが気になる人は、医療機関や療育センターなどにいる心理士に相談してみたり、読み物もあるので勉強してみてください。
この本は事例が多く載っていて、初心者でもわかりやすい1冊です。
SSTが授業にあると楽しそう
アサーション
アサーションは、他人の意見を尊重しながら、自分の意見もしっかり主張するというアメリカ発のコミュニケーションのあり方です。
人の話を聞けない、自分の意見を言えない日本人は多いよな
アサーションには3つのタイプがあり、『ドラえもん』で例えると分かりやすいです。
② ノンアサーティブ(非主張的)
③ アサーティブ(中立的)
①アグレッシブは思ったことをはっきり言えるタイプですが、相手に対して高圧的な態度を取りやすく、人の意見をあまり聞けず、少し配慮に欠けるタイプ。
ジャイアン
②ノンアサーティブは自分の意見を言いだせず相手に流されやすかったり、言い訳的な関わりになりやすいタイプ。
のびのび太
他人の思いに寄り添えたり、他人を責めない穏やかさは良さでもあり、日本人はのび太タイプが多い文化かもしれません。
③アサーティブは言いたいことを言えて、他人の意見も聞くときは聞けるハイブリットタイプで、人間関係を円滑にするには望ましいタイプと言えます。
しずかさん
ジャイアンタイプやのび太タイプは「どうせ相手は~だし」など相手に対する偏見や思い込みが強いことが多いので、まずはそれらを改善する心理教育を行う場合が多いです。
そのうえで、モデリングとして好ましいコミュニケーションを見せたりロールプレイで振り返ったりします。
自分も相手も平等だよとか、第三者が介入して話し合える場をセッティングしたりでもよき
アサーションで初学者にとっても読みやすいのはこちら。
著者である平木典子さんはアサーションで有名な方で信頼性もあり、イラストが多く読みやすいです。
コミュニケーションでは自分の考えや意見に自信をもつことも大切な要素ですが、「こういう考え方もあるんだ~」と新しい視点を聞き入れる姿勢も超大切。
本を読んで新しい視点に気づくことも立派なモデリングかも。
おわりに:動機づけもしてきちんと学習しよう
人は他人やアニメ、動画などいろいろな刺激を見て学習できる生き物です。
モデリング(観察学習)とは、自分が経験しなくても他人の経験やフィードバックを見て、自分の経験値として学習できることを指します。
他人を見て真似て終わりでは効果半減なので注意
他人を見て、覚えて、真似て、その真似た行動がどうだったかを振り返るまでがモデリングの流れです。
モデリングを応用した心理療法としてソーシャルスキルトレーニング(SST)やアサーションがあり、どちらも日常の人間関係に役立つスキルを獲得できます。
モデリングを効果的に使うことで効率よく学習もできるので、真似る行動の動機づけ(振り返り)までしっかり行ってみましょう。
勉強お疲れ様!
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