こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
やりたいことや嫌なことが多すぎると人は「葛藤」しますが、その意味や解決についてどれだけ知っていますか。
✓そもそも葛藤についてよく分からない
✓いつも悩んで終わっている
✓決断できないことが多すぎる
実は、心理学的に葛藤は大きく3種類に分けることができます。
心理系大学院を目指す人は、受験予定の院で社会心理学の出題傾向があれば、本記事を読んで葛藤の3分類をきちんと押さえましょう。
心理系大学院の院試でよっぽど社会心理学特化の大学院でない限りは、社会心理学の専門的な参考書を利用しなくても知識の対策は可能と思われます
最低限の基本用語はチェックしておきましょう!
そうでない人にとって、本記事を読むことですべての葛藤を即解決できるわけではありませんが、自分の陥りやすい葛藤タイプを知ることで、今より過ごしやすくなれると思います。
一般向けの読みやすい本もあった
こんな人におすすめ!
・心理学的な葛藤の意味を知りたい人
・自分の葛藤パターンを知りたい人
・悩んでばかりで決断が苦手な人
・心理系大学院受験生
葛藤(conflict)とは
葛藤とは、同時に叶えることが困難な複数の欲求が同程度のレベルで存在するため悩み、行動の決定ができない状態を指します。
欲求同士がバトルすることだね
・2社から内定もらえたけどどっちも同じくらい魅力的で選べない
・ケーキ屋で食べたいものがありすぎて選べない
・これ以上太りたくないけど間食禁止も嫌だ
・働きたくないけど無職やバイトでお金少ないのも嫌だ
・Switch欲しいけど高値でお小遣いへの打撃がイタイ
・ホラーは気になるけど怖くて見たくない気持ちもある など
人は大なり小なり欲求を感じながら過ごすので、日常でも悩ましくて決められないという体験は多いです。
したいこともしたくないこともなかなか1つに絞れないよね
「悩んで決められない」と言うと一見良くないことに思えそうですが、物事を全体的に捉えられている証拠でもあるので、葛藤する自分をあまり責めないでくださいね。
この全体性に焦点を当てたゲシュタルト心理学派のK. レヴィンが、葛藤を3分類しました。
ゲシュタルト崩壊…!
ゲシュタルト崩壊は、まとまりがバラバラに感じられること。同じ漢字ばかり書いたり見たりしていると、だんだんその漢字が分からなくなっていくような現象。漢字を個々に見れば分かるのに、漢字の集合体(全体的)に見ると知覚が崩壊するやつ。
\ 詳細はこちら /
K. レヴィンの葛藤の3分類
K. レヴィンは葛藤を3分類しました。
まず葛藤の内容を整理することで、それぞれのパターンの欲求への解決を考えやすくなります。
欲求といえばA. H. マズローの欲求階層説がありますが、他にも人間の欲求をリスト化したH. A. マレーの欲求リストもあり
①接近ー接近型葛藤
接近-接近型葛藤は、同じくらい魅力的な欲求が2つ以上あり、どれか1つを選ばなければいけない葛藤を指します。
▼接近-接近型葛藤の例
・2社から内定もらえたけどどっちも同じくらい魅力的で選べない
・ケーキ屋で食べたいものがありすぎて選べない
このパターンは同じくらい魅力的な欲求なので、1つずつ選んでいくことで意外と解決しやすいと言えます。
どれも同じくらい良いなら、ある意味どれ選んでも一緒!と割り切るのもありかも
ただし、後になって「もしかして選択を間違えた…?」と心残りが大きくなり、再び葛藤するパターンもあり。
人生に正解があると思わない方が楽に生きられるぞ
②回避ー回避型葛藤
回避ー回避型葛藤は、マイナスに思えることが2つ以上あり、どれか1つを選ばなければいけない葛藤を指します。
▼回避―回避型葛藤の例
・これ以上太りたくないけど間食禁止も嫌だ
・働きたくないけど無職やバイトでお金少ないのも嫌だ
クソガキッズ「やだやだやだやだ」
このパターンの葛藤は嫌なことばかりなのでどうにか抜け道を探すか、仕方ないものだと受け入れたり我慢したりすることで折り合いをつける解決となります。
逃げれることなら逃げも選択肢。避けられないことは妥協点探しも大事だね
ストレスがたまりやすい状況には変わらないため、回避―回避型葛藤が長く続くと欲求不満になりやすいです。
葛藤だけでなく、定期的にストレス発散を取り入れることも対処の1つになります。
③接近-回避型葛藤
接近-回避型葛藤は、1つの物事がプラスとマイナスの両面をもっている葛藤を指します。
▼接近-回避型葛藤の例
・Switch欲しいけど高値でお小遣いへの打撃がイタイ
・ホラーは気になるけど怖くて見たくない気持ちもある など
ある意味欲求を客観視できてる
欲求vs理性
怖いもの見たさの心理については補足記事もあります。
このパターンはある意味先を見据える力があり、時には強すぎる良心や超自我(道徳心)が働いている場合があり、悩みすぎるとかなりの欲求不満を感じやすいです。
良い面も悪い面もあることは世の中にたくさんあり、常に良いことを選択し続けることはほぼ無理と思われます…。
マイナスに感じることへの対処行動をとりながら欲求を叶えたり、諦めの要素を考えてみたりしてみましょう。
一番大事なのは葛藤することよりも自分が気楽に過ごせるかどうか
超自我についての復習はこちら!
4分類目「二重接近-回避型葛藤」
接近-回避型が二重になったパターンもあるとされ、2つ以上の物事に良い面と悪い面の両方があるタイプを指します。
(それ言ったらキリないけど…)
▼4分類目の例
・A社は給料が良いけど距離が遠めで、B社は給料少し下がるけど家から近い など
このパターンは葛藤する対象を増やせば増やすほど、葛藤の苦しさや思考力の低下などの悪循環を引き起こします。
問題は複雑にしたら難しくなるねん
自分が今何で葛藤しているのかを分かりやすくするために紙に書いて整理したり、自分の中での優先順位をつけたりして、一度冷静になりましょう。
葛藤内容は複雑化させるほどあなたの首を絞めかねないので、なるべくシンプルにする方が楽ですよ。
by 難しいことが好きなバカ
葛藤の扱い
人は日々何かしら葛藤を抱えますが、葛藤は悪いことではありません。
悩んで決められない人は何故か叱られやすいけどちょっと待って
それだけ自分の気持ちを大事にできていたり、一生懸命考えたりしている証拠でもあります。
葛藤をなくすことや完全に解決することはほぼ無理なので、葛藤をなくそうとするよりも欲求を抑える努力や折り合いをつける努力の方が建設的です。
また、葛藤状態を少しでも和らげるために上手に付き合う術(ストレス発散など)を模索することも重要です。
筆者は無心でアニメ全話見たら一瞬生きるの楽しかった
その他、葛藤に対する認知を変えるのも良し、自分で解決できることか冷静に考えるも良し、2択でなく第3の選択肢も良し、焦って答えを出さなくて良し。
意外と待つことも大事
葛藤の他にも言えることですが、自分の中でぐるぐる考えるという行為は悪循環や都合の良い考えをしがちです。
プラスもマイナスもどちらの面も人に話してみるだけでも、意外とすっきり整理できて落ち着けるかと。
どこかで気軽に話せると良いね
おわりに:葛藤内容を客観視しよう
葛藤とは、欲求に対してプラスやネガティブな側面を感じることで悩んでしまう状態のことで、誰もが日々感じる状態です。
▼K. レヴィンの葛藤の3分類
①接近-接近型葛藤…好きが多くて決められない
②回避-回避型葛藤…嫌ばかりで決められない
③接近-回避型葛藤…好きも嫌いもあって決められない
人はつい難しく考えすぎてしまって、余計に葛藤してしまうことも多いです。
どうしても葛藤して苦しいときは状況や欲求を客観視して整理してみましょう。
紙に書き出したり人に話したりがおすすめ
また、葛藤を完全に解決することは難しいことも理解しておきましょう。
大切なのは葛藤の解消というよりも、今より悩むことを減らしたり、楽に過ごせるようになることかもしれません。
社会心理学を勉強したい人は、まず専門用語を押えるようにしましょう。
有斐閣のキーワードシリーズは比較的読みやすくて、辞書的に使えるので便利です。
本は読みやすいものから読もう
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