こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心の不調というと気分の落ち込みや高揚、幻聴・幻覚などをイメージする人が多いですが、不眠や身体の痛み、痺れなども起こることがあります。
特に、内科的に異常は見当たらないのに身体に異常を感じたり身体への関心が強まりすぎて不調を感じたりする場合は、身体ではなく心の問題かもしれません。
よくストレスが原因って言われるやつ
今回は、心の不調が身体に現れる身体表現性障害についてざっくり解説します。
心理士として活動するには心のことはもちろん身体症状症(身体表現性障害)の知識も必須なので、大学院を含め目指している人はきちんとインプットしましょう。
そうでない人も「内科的には異常ないのに身体に違和感がある」という場合があることを知って、落ち着いて対応するようにしましょう。
こんな人におすすめ!
・原因不明の痛みや痺れがある人
・身体表現性障害について知りたい人
・自分が病気なんじゃないかと心配な人
・ストレスフルな人
※心理系大学院進学希望者は必須
テーマ的には一般<専門家のたまご向けかも
身体表現性障害とは
身体表現性障害(somatoform disorder)とは、医学的に身体に異常は認められないにも関わらず、身体の痛みや吐き気、痺れなど自覚できる身体症状があったり、自分の健康を過度に不安に感じたりして日常生活に支障が出る精神疾患です。
(筆者のばあちゃんは原因不明で足が冷たいって訴えてる)
DSM-5 から身体症状症としてまとめられている
\ 分類は要復習 /
身体に異常は認められないのに身体の違和感を感じるため心の不調とは気づきにくく、ドクターショッピングをしやすい状態でもあります。
不思議だよね
内科的な異常がある場合や詐病(経済的・社会的に得するために病気だと嘘つくこと)とは別物。
また、病気であることで何かしら配慮を得ていたり活動を免除されたり、周りから心配されることを良しと思う疾病利得が背景にあることも(疾病利得は身体表現性障害以外にも言えますが…!)。
治りたい気持ちと葛藤しやすいぞ
身体表現性障害の種類はこんな感じ(一般の方は飛ばしても良いかも)。
似た疾患名で心身症(psychosomatic disorder)があるが、心身症は器質的・機能的な障害が認められるため、医学上異常のない身体表現性障害とは別物。過敏性腸症候群(IBS)や月経不順など
身体症状症
身体症状症は、生活に支障が出るほどに身体の痛みや苦痛を感じることを指します。
原因不明の痛みを訴えることもあれば、身体の痺れや冷えなどの違和感を訴えることもあり。
≒身体表現性障害
身体の不調や健康に対して過度に不安を感じるの苦痛の1つで、自分が感じる症状よりも深刻に感じがち…。
女性に多いらしいよ
病気不安症
病気不安症は、「自分が重病だ」とか「大きな病気にかかりつつあるんだ」という思考に囚われてしまうことを指します。
実際には身体症状はないor軽度なので、盛大な思い込み。
健康状態に恐怖を感じやすく、健康関連の行動を過剰に行ってしまう特徴もあります。
・ニュースや噂で病気について聞くと一気に不安になる
・病気に関する情報を漁りすぎる
・重病が判明するのが怖くて受診を避ける
(疾病利得も強そう)
転換症(転換性障害)
転換症(転換性障害)はもともと転換性ヒステリーと呼ばれており、神経系に異常はないにも関わらず運動や感覚機能に支障が生じる状態です。
・手足の痺れ
・一時的に立てなくなる
・一時的に歩けなくなる
・一時的に見えなくなる
・一時的に声が出なくなる
・けいれん など
「ストレスすぎて気持ち悪い…」など症状としては軽いものも含めればかなりの人が体験したことがあると言われています。
ちなみに…ヒステリー研究といえばフロイト
作為症
作為症は、身体的・心理的な病気の兆候があるとねつ造する状態です。
疾病利得のようなメリットも特にないのに病気のねつ造を周りの人に伝えてしまうとか…。
以前はミュンヒハウゼン症候群(本当は健康体なのに周囲から同情を引くなどで自分や他者を痛めつけたり病気を装ったりする)と呼ばれていた
身体表現性障害への対応
身体表現性障害の場合、訴えられる痛みや苦痛に明らかな原因がないため、薬物療法を用いても改善しづらいことが多いです。
そのため、薬の利用は二次的なうつ病や不安感に対してなど限局的といえます。
薬はあくまでサポートかも
心理療法としては精神分析療法や認知行動療法で、ストレスフルで傷ついた心に安心感を得てもらったり、症状へのとらわれから離れたり、不安への対処を身につけたりを目指します。
身体表現性障害の原因は不明ですが、症状を訴えることで不安やストレス、葛藤していることを抑圧・回避していることもあるため、安心して話せる場・関係で少しずつ気づいていくことも大切です。
不快な感覚を改善する話し合いはなかなか進まないぞ
何度も症状を訴えられると「異常はないよ」「そんなことないよ」と言いたくなるかもしれません。
が、当事者にとっては確かな違和感であり、その否定や対立的な応対は症状(主張)のエスカレートの元になりがちです。
症状についてよりも本人の環境や気持ちに焦点を当てて話す方が落ち着きやすいかも。
おわりに:異常のない身体の違和感は心のSOSかも
身体表現性障害は、あくまで医学的な異常はないにも関わらず頭痛や吐き気など身体に不調が生じたり、健康面に囚われてしまったりして日常生活に支障が出る精神疾患です。
病気で痺れるとかカフェインがんがん飲んで寝れないとかは別ね
心の不調は必ずしも気分の落ち込みなど精神的に現れるわけではありません。
そして、心身の不調=心に原因がある訳でもなく、原因不明の不調もたくさんあります。
考えすぎない方が良いこともある
手足の痺れや冷え、吐き気や頭痛など身体に違和感を感じたら、まずは内科などに相談してみましょう。
心理士(特に初学者)はやたら心に焦点あてがちですが、身体の不調はまず身体で考えましょう!
医学的に異常があればそれについて対応するのが改善の近道です。
身体に異常はなく原因不明の不調が続く場合は、もしかしたらストレスの多さや心にしまい込んだ不安や葛藤の無意識の反動として身体症状が出ているかもしれません。
身体の不調は心のSOSサインの可能性もあるので、身体症状で困る際は心療内科などに相談して今の環境や気持ちについて整理してみましょう。
コメント