こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
今回は人の性格に関するパーソナリティ障害についてざっくり解説していきます。
✓人と比べてものの見方や考え方が極端
✓人よりも風変わりな行動が目立つ
✓情緒不安定すぎる など
人の性格を精神疾患と呼ぶのは抵抗がある人もいるかもしれませんが、偏りすぎた性格は生きづらさにつながりやすいです。
心理系大学院受験生にとってパーソナリティ障害は、院試・資格試験共に頻出テーマなのでパーソナリティ障害の種類と大まかな内容は押さえておきましょう。
そうでない人たちは、定義と種類を知ることで人への理解を深めたり、自分が極端にならないための知識を身に着けてみましょう。
ネット上での疾患系記事すべてに共通することですが「私・あいつ○○障害だ」と安易に決めつけないように気をつけましょう!
パーソナリティ障害(personality disorder)とは

パーソナリティ障害は人格に関わる障害で、人が属する社会や文化で期待されることから極端に逸脱したパーソナリティ(考え方や振る舞い方)によって、社会生活に支障をきたす精神疾患を指します。

精神科医K. シュナイダー「パーソナリティ障害は、その異常性のために自身か社会が悩む」ってさ

的確ゥ
パーソナリティ障害には10種類(+その他)がありますが、DSM-5(精神疾患の診断と手引き)によると全般的な定義はざっくり下記の通りです。

①一般より偏った個人の体験や行動が持続的で、以下の2つorそれ以上で見られる
✓認知面…ものの見方や捉え方のズレ、極端な言動
✓感情面…情緒不安定さや感情コントロールの苦手さ
✓対人関係機能…自己・他者イメージが安定しない
✓衝動の制御…何事も突発的か など

考えが極端だったり、情緒不安定すぎたり何かしら極端なパーソナリティをもっているんだね
②継続的に見られる極端な様子に柔軟性がない

プライベートでも社会でも困った言動が一貫して見られるみたい
③継続的に見られる極端な様子のため、本人の日常生活や社会的な場で周りが困るなどの支障が見られる
たとえば情緒不安定すぎて自分でも困っていたり、職場や学校で人を見下しすぎて共感性に欠け、周りから浮いてしまう(煙たがられる)などの支障があります。

むやみやたらと障害ってラベリングするより、誰も困らず受け入れられるならそれはそれでいいのかも
④パーソナリティ障害の症状の始まりは、青年期or成人期早期
症状が長期間続いて見られる場合に言えることなので、パーソナリティ障害は子どもには適応されません。
青年期や成人期早期といっても、おおよそ12歳頃~25歳頃です。

困り感や生活への支障が続くのがポイント
⑤他の精神疾患の発症や結果、薬物、身体疾患などでは説明できない
パーソナリティ障害は他の病気や要因では説明できず、あくまで長年続く本人の思考や感情などの極端さを指します。
「うつ病で落ち込んで疑心暗鬼になったから○○パーソナリティ障害もでた」とはなりません。

でもパーソナリティ障害の生きづらさからうつ病とか併発するパターンはある…

見立てはムズイ
「パーソナリティ障害=性格が悪い」という訳ではないことも、人を理解するために覚えておきましょう。
パーソナリティ障害は、その人の今までの生活(個人史)の中で少しずつ形成されていくものです。
人がもっている色眼鏡がどんどん曇っていくような何かを経験してきた結果、診断される障害というイメージです。

人を知るには偏見や決めつけじゃなく、その人の人生に耳を傾けてみような
パーソナリティ障害は10種類ありますが、A群、B群、C群の大きく3つに分けることができるので、ここではざっくり解説していきます。
A群:奇異で風変わりな行動を示す群
①猜疑性パーソナリティ障害
②シゾイドパーソナリティ障害
③統合失調型パーソナリティ障害
B群:派手で突飛な行動を示す群
④反社会性パーソナリティ障害
⑤境界性パーソナリティ障害
⑥演技性パーソナリティ障害
⑦自己愛性パーソナリティ障害
C群:不安や恐怖を感じやすい群
⑧回避性パーソナリティ障害
⑨依存性パーソナリティ障害
⑩強迫性パーソナリティ障害

あっっ(めまい)

心理の道に進む者は全部覚えよう!その他は覚えなくて良し!

(院試では10種全部英語も含めて書かされた試験もあるんだよ)
病態水準(病理の重さ)的には、A群の方が精神病圏で重く、C群の方が神経症圏なイメージです。
A群:奇異で風変わりな行動を示す群

A群には3つのパーソナリティ障害が分類されます。
周りとは異なりすぎる言動のために、人間関係や日常生活で孤立するなどの支障をきたすことが特徴的です。

「ちょっと変だから近づくのやめとこう…」と思われやすいタイプかも
猜疑性(妄想性)パーソナリティ障害(PPD:paranoid personality disorder)
猜疑性パーソナリティ障害は、他人の言動を悪意のあるものに感じてしまい、極端に疑い深いパーソナリティが特徴的です。
パートナーや家族など信頼を置けるはずの相手であっても理不尽なまでに疑ってしまう傾向があります。
妄想性パーソナリティ障害には幻覚がない点で統合失調症とは別物と覚えておきましょう。

人への信頼感が薄いイメージかな…
シゾイドパーソナリティ障害(SPD:schizoid personality disorder)
シゾイドパーソナリティ障害は、感情表現が平板で、他人への無関心さが特徴的です。
その特徴から孤立した関係を求め、対人関係を楽しもうとしないことが多いです。
シゾイド型は自分の評判も気にしない様子が見られやすいと言えます。

「人が嫌いな変わり者!」ではなくて、無関心さや表現の薄さだね
統合失調型パーソナリティ障害(SPD:schizotypal personality disorder)
統合失調型パーソナリティ障害は、迷信を信じ、奇妙な言動をとるのが特徴的です。
奇妙な言動のため、他人と親密な関係を築くことが難しく、親しい友人同士であっても奇妙な空想から関係がねじ曲がりやすいと言えます。
統合失調症と名称が似ていますが、パーソナリティ障害では明確な幻覚・妄想は認められないため別物
B群:派手で突飛な行動を示す群

B群には4つのパーソナリティ障害が分類されます。
情緒の不安定さが目立ち、周りを巻き込む過激さのある場合が多いです。

(身近なメンヘラがB群に進化するかも…)
反社会性パーソナリティ障害(ASPD:antisocial personality disorder)
反社会性パーソナリティ障害は、倫理観や道徳観念が薄く、他人の権利を無視・侵害する不適応行動(窃盗などの違法行為や暴力、虚言など)が特徴的です。
無責任で怒りやすいパーソナリティでもあり、仕事の続かなさや借金返済・金銭支払いなどの義務を果たさない面も見られます。
良心の欠如傾向や、衝動的で計画を立てられない傾向もあります。
反社会性パーソナリティ障害は18歳以上で診断され、それ以前は素行症と診断されることが多い

日常的というより非行関連なパーソナリティかな…
境界性パーソナリティ障害(BPD:borderline personality disorder)
境界性パーソナリティ障害は、人間関係や自己像(自分への認識)、情緒などの不安定さが最大の特徴です。

院試頻出!ボーダーとも呼ばれるね
なかでも、他人や自分に対して、過度に持ち上げたり貶したりする理想化とこき下ろしが特徴的といえます。
衝動性も強く、暴力、浪費、過食、自傷行為、薬物乱用や性行為の強要などの自他への破滅的な行為をしたかと思えば、人から見捨てられないように必死になるなど、対人関係はめちゃくちゃに見えやすいですが、自覚は乏しいことが多いです。
慢性的に空虚感を感じている場合も多いと言われています。

典型的なDVやメンヘラのイメージが近いかも?
演技性パーソナリティ障害(HPD:histrionic personality disorder)
演技性パーソナリティ障害は、明らかに演技のような派手な行動や、独特な外見の着飾り方などで他人から気を引こうとする特徴があります。
対人関係にて自分が中心にいないと不満で情緒が乱れやすく、周りから煙たがれる傾向がありますが、対人関係は実際以上に親密と思っている場合が多いです。
暗示にかかりやすかったり、周りの影響を受けやすい面も見られます。

悲劇のヒロインタイプ
自己愛性パーソナリティ障害(NPD:narcissistic personality disorder)
自己愛性パーソナリティ障害は、人を思いやったり共感することが難しく、大げさで誇大的な表現をしたり、周りに過度な賞賛を求めたりする特徴があります。
自分がとにかく特別と思い、自分を理解できるのは地位の高い人たちと信じ、高慢な人に見えやすいです。
自分の目的を達成するために、他人を不当に利用する様子も特徴的です。
また、他人から非難されることに非常に敏感で、失敗を過度に恐れる脆さも見られます。

自己中が凝り固まったイメージ

女性よりも男性に多いらしいよ
C群:不安や恐怖を感じやすい群

C群では3つのパーソナリティ障害が分類されます。
不安障害と類似する点があり、関連症状が多いのが特徴。
他の群と比べて人間関係をかき乱す程度はまだ低いと考えられます(が、大変は大変)。

A・B群よりC群の方が身近に多そうかも
C群には特定不能のパーソナリティ障害も含まれる
回避性パーソナリティ障害(APD:avoidant personality disorder)
回避性パーソナリティ障害は、他人からの否定に過度に敏感な特徴があります。
そのため、極度な引っ込み思案であったり、対人関係を避けようとしたり、確実に好かれる場面でないと人間関係を築くことが難しい面が強いです。

これまでの人生で否定経験が多かったのかもしれないね…
依存性パーソナリティ障害(DPD:dependent personality disorder)
依存性パーソナリティ障害は、面倒を見てもらいたい思いが強く、自主性が乏しく、他人に判断や助言、責任を過度に求めることが特徴的です。
人への依存が強いため他人から見捨てられる分離不安に敏感で、見捨てられないためには何でもしてしまう危うさもあります。

(境界性とカップリングしたらDV完成しそう…?)
強迫性パーソナリティ障害(OCPD:obsessive–compulsive personality disorder)
強迫性パーソナリティ障害は、自他に対してとにかく完璧主義で、思考は固く柔軟性がないため、人間関係がうまくいかなかったり限られてしまう特徴があります。
ルールや予定、物事の順序に固執したり、仕事にのめり込みすぎたりする様子が多いです。
▼強迫性パーソナリティ障害と強迫性障害の違い
似た名称の「強迫性障害」は広義には不安障害の一種で、強迫性パーソナリティ障害は人格障害。
他にも、強迫性障害でよくある手洗いなどの強迫行為は、不合理的なことだと分かりながらも不安を軽減するために行うが、強迫性パーソナリティ障害では「最高品質の○○水で洗うのが正しい」など自身の行為や考えを合理的であると信じて行うなどの違いがあり
\ 似てると思う人は要復習 /
パーソナリティ障害は問題を1つずつクリアしていく対応をしよう

どのパーソナリティ障害も共通することですが、問題とされる振る舞いや態度、対人行動などは思春期頃から少しずつ形成され、本人の一貫したパターンになっています。
そのため、パーソナリティ障害の特徴を根本から変えることは非常に困難です。

周りから指摘されたり怒られても、本人にとっては普通なことが多いんです
特徴を変えていくのであれば、かなりの年月をかけて好ましい体験を繰り返す必要があると言えます。
パーソナリティ障害によっては自傷行為などの危険性もあるため、自他を傷つけるほど不安定さがひどい場合は医療機関とつながることをおすすめします。

「性格の問題でしょ?」って軽視や「あんたの悪い性格治しなさい!」って関わりはNGで…!
パーソナリティ障害は治すというより、今の日常生活で困ることに対して1つずつ対応策を考え、実行していく方が効果的です。
おわりに:人格に柔軟さはもたせよう

パーソナリティ障害は、社会の規範や一般常識からかなりかけ離れるパーソナリティのため、本人や周りが困り、生活に支障が出る人格障害です。
大きく10個あり、特徴の見られ方からA群、B群、C群の3群に分類されます。
A群:奇異で風変わりな行動を示す群
①猜疑性パーソナリティ障害
②シゾイドパーソナリティ障害
③統合失調型パーソナリティ障害
B群:派手で突飛な行動を示す群
④反社会性パーソナリティ障害
⑤境界性パーソナリティ障害
⑥演技性パーソナリティ障害
⑦自己愛性パーソナリティ障害
C群:不安や恐怖を感じやすい群
⑧回避性パーソナリティ障害
⑨依存性パーソナリティ障害
⑩強迫性パーソナリティ障害
どのパーソナリティ障害も思春期頃から少しずつ形成され、不安定さは長年、一貫して見られるのが共通特徴と言えます。

「ぱっと見当てはまるから○○障害」という安易な診断はしないように!
どの特徴も長年培ってきた or 環境的に形成されてしまった人格の癖みたいなものなので、根本から問題を修正するには難しいです。
自分と他人の人格は別物である再認識をしたり、人に任せすぎるなら小さなことから自分で決断する練習をしてみたり、人間関係で困ることを1つずつ対応して、本人の過ごしやすさを求めるのが改善の近道と言えます。

障害の有無より過ごしやすさに注目する方が建設的な場合は多い

ざっくり勉強お疲れ様
参考資料
パーソナリティ障害全般についてざっくり知りたい人はこちらがコンパクトで手に取りやすいと思います(薄さ大事)。

「なんだか生活しづらいな」「生きづらいな」と感じる人の手掛かりになりやすい知見が多く得られます。
巻末にちょっとしたチェック表もあるので、1冊手元に置いて長く読めたら理解がかなり深まるのではないかと。
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