こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
発達理論というとJ. ピアジェが有名ですが、L.S. ヴィゴツキーにも発達理論があり「発達の最近接領域」という代表的な考えがあります。
領域…展開ッ!?
今回は発達の最近接領域についてゆるっと解説します。
心理職を目指すたまごや教育・保育関係者は頭の片隅に入れておきましょう。
そうでない人も、世間的には馴染みのない単語と思いますが、子どもの発達や接し方を振り返る良い機会になるのでお時間あればご覧ください。
こんな人におすすめ!
・発達の最近接領域がよく分からない人
・子どもの発達や教育に関心がある人
・教育・保育関係者、子持ちのパパママ
・ヴィゴツキーを知らない心理の民
※心理系大学院受験生は必須!
発達の最近接領域とは
発達の最近接領域(Zone of Proximal Development:ZPD)とは、子どもの知的発達の水準に関する理論で、L.S. ヴィゴツキーが提唱しました。
この理論によれば、子どもの知的発達といっても「自力で問題解決できる」レベルと「周囲からの手助けや協力で問題解決できる」レベルに分けられ、この2つのレベルの差分を発達の最近接領域と呼びます。
えーと、つまり?
ざっくりいえば、自力では難しいけれど周りから助けてもらえたら太刀打ちできるレベル(領域)を指します。
この理論によると、発達の最近接領域での問題解決の取り組みが、子どもの知的な発達を促すと考えられています。
発達の最近接領域では、先生や親などできる人からの助けを借りるだけでなく、子ども同士の相談や模倣も重要な関わりになります。
\ 模倣の学習 /
ヴィゴツキーの考え方
そもそもL.S. ヴィゴツキーは発達理論を提唱しており、子どもの認知発達は他者や文化との交流を通して成長していくと捉えています(社会文化的発達理論)。
発達理論といえばピアジェも有名
\ ピアジェvsヴィゴツキーの発達観 /
乳幼児が他者との交流を通じて言葉を理解し使っていけるように、他者や文化という外部対象の影響を受けて自己認識を深めていく≒成長していくというイメージ。
平たくいうなら、認識の発達には他者交流が重要ということですかね。
1人だと認識も凝り固まりそう
L.S. ヴィゴツキーは、子どもの発達を捉えるには「現時点で自力でできること(現下の発達水準)」だけを見るのでは不十分で、子どもの発達の伸びしろまで捉えるには発達の最近接領域への注目を重要視しています。
学校のテストの点数だけでは捉えきれない?
学校のテストの点数なら確かに現下の発達水準(今の実力)を測ることができます。
が、他者からの助けを得てできることもまた子どもの実力とも言えるでしょう(≒現下の発達水準を見るだけでは子どもの発達は測りきれないかも)。
ヴィゴツキー「アシストありでできること=現下の発達水準になりそうだからこっちも大事」
L.S. ヴィゴツキー的には、発達の最近接領域(現下の発達水準と現下の発達水準予備軍の挟間)を育てていくことで効果的な発達ができるとのこと。
伸びしろを伸ばすのが教育かな
\ レディネス覚えてる? /
発達の最近接領域と教育
L.S. ヴィゴツキーの理論は、発達心理学だけでなく教育の視点でも重要視されています。
たとえば学校教育は、友だちや先生という他者交流の場があることで認知発達の成長を促すポイントがあります。
他にも、周りの同級生の真似をしたり、先生や先輩から教えてもらったりして成長することは多いでしょう。
理論的には学校教育って効果的な成長方法なんだね
ただ、年齢や現下の発達水準(今の実力)が同じ子どもであっても、発達の最近接領域はそれぞれで異なるため、知的な発達水準はクラス内でもばらつきがあるはず…。
▼実験例
7歳の子どもらで、先生からの助けがあれば9歳相当の問題を解けた子もいれば、解けななかった子もいた
人それぞれを再認識~
ポテンシャル秘めてる子もいるよな
学校教育のスタイルは理にかなっていても、子によって発達の最近接領域は異なるため「みんなに同じように教える」「とにかく覚えさせる」ような関わりでは問題解決が難しい子も出てくるでしょう。
L.S. ヴィゴツキーの理論的には、学校でも生徒の発達水準を個別に見ていくことが重要で、詰め込み指導には批判や誤解が生じやすいのだと思われます。
※先生からすれば大変で理想という意見もあるでしょうが、あくまで理論に沿ったお話です。
(分からないことの押しつけはそもそも教育なのか)
子どもの認知発達を効果的に促すには、「1人では難しくても周りからの助けがあれば問題解決ができる」レベルを把握して関わることが有効とされています。
子どもの発達水準を見極める大人の存在・力も大切で、当たり前かもしれませんがそれぞれのレベルの子どもに適切に関わることの意味を指摘した理論でもあります。
段階 | 難易度 | 関わりのヒント |
助けがあってもできない | 現時点でハードル高し | 厳しく詰め込むのはつらいかも |
助けがあればできる(発達の最近接領域) | 絶妙 | 相談相手になったりヒントをあげたり、 できる人の真似etc. |
助けがなくても自力でできる | 現時点で簡単 | 手助けは減らして 自立を見守ってあげてもいいかも |
「これくらいできて当然でしょ!」と教える側が押しつけるのではなく、今子どもがどんなことができてどんなことができないかを見る姿勢は大切でしょう。
大人の教育でも同じこと言えそう!
おわりに:人との関わりでできることは未来の実力になる
発達の最近接領域は、1人ではできなくても周りからの助けや協力があれば問題解決できるようになる領域を指し、子どもの知的発達を促しやすい領域でもあります。
「何でも自力でやれ!」という教育方針もありますが、1人では多様な価値観を見出すことは難しいかもしれないし、「我が子の成長のために何でも教えてあげる!」といつまでも過干渉であっても、子どもの成長の機会を奪ってしまうかもしれません。
(できないものはできんし、過干渉は困る!)
L.S. ヴィゴツキーの理論的には、子どもが今できないことの中から助けがあればできそうなことを見つけたら、必要に応じて助け舟を出して、できるようになったら助けを減らしていく関わりが知的発達の成長を促すために大切だと言えるでしょう。
1人でできないことができるようになると快感!
子どもが今できることに目を向け評価することも勿論大切ですが、目の前にとらわれ過ぎず、発達の最近接領域を探す意識ももってみましょう。
教えの押しつけじゃなくて伸びしろ伸ばしていこう
発達の最近接領域やL.S. ヴィゴツキーに関心がある人はこちらもご覧ください。
文章に読みにくさは感じるかもしれませんが、理論や考え方が丁寧に書かれているので初学者向けかと思います。
伸ばすところは伸ばして、できることへのサポートをどう減らしていくかを考えるヒントにもなるので、教育関係者の方も是非!
現代教育に重要な理論でした!
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