こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
小さな箱などの空間にミニチュアを置いて世界観を楽しむ「箱庭」。
実は心理学の中には箱庭を使った心理療法があり、心理系大学院受験生にとっても抑えるべきポイントの1つです。
✓箱庭療法って何?
✓箱庭療法は意味あるの?
✓気をつけることあるの?
箱庭療法は心理学を勉強していない人でも、学校やクリニックの相談室で見かけたりやったことがあったりする比較的ポピュラー(?)なものです。
どんな意味があるのか興味があれば最後までご覧ください。
また、臨床心理士・公認心理師を目指す人は院試や資格試験だけでなく実践でも使える知識なので意味や効果を身に着けておきましょう。
こんな人におすすめ!
・箱庭療法について詳しく知りたい人
・箱庭療法の意味を知りたい人
・ミニチュアや遊びが好きな人
・心理職を目指している人
※心理系大学院受験生は必須!
箱庭療法(sand play therapy)とは
箱庭療法とは、セラピスト(Th.:心理士)が見守る中でクライエント(Cl.:相談者)が砂の入った箱に自由にミニチュアを並べて表現する心理療法です。
箱のサイズは縦57cm×横72cm×高さ7㎝で砂は白っぽく、箱の内側は水色っぽくて水や空を連想させる仕様。
ミニチュアに特に決まりはなく、人間、動物、植物、乗り物、建物などが多く、アニメのキャラクターの人形が置いてあることも。
キャラフィギュアはCl.の連想がアニメに固定されるとか連想が不自由になる可能性もあるので諸説あり
元々はロンドンの小児科医であるM. ローエンフェルトが世界技法(The World Technique)という子どもの心理療法を創始し、そこにD. カルフがユング派理論を取り入れて確立したのが箱庭療法です。
箱庭療法を確立したのはカルフ!ローエンフェルトは箱庭の元型の創始者。混ざらないように注意。日本に箱庭を導入したのは河合隼雄
ちなみに、河合隼雄先生による箱庭療法の入門書籍はこちら。
\ イメージ掴みやすい! /
箱庭の歴史的な発展の流れはもちろん、何よりいろんなパターンの事例が載っているので箱庭の流れを感じやすいです。
筆者は箱庭の本これ初めて読んだ
箱庭療法の流れ
箱庭療法は特に実施時間は決まっておらず、Cl.によっては15~20分吟味して表現することもあれば5分以内で終えることもあります。
箱庭療法のみ行うことはあまりなく、カウンセリングやプレイセラピーの中で実施する場合がほとんどです。
Cl.が箱庭に興味を示したときに実施するのが自然な流れで、無理強いするものではありません。
Cl.は好きにミニチュアを使って良くて、Th.は基本見守り続けます(互いの関係性やセラピーの流れでTh.が表現に参加することもあり)。
Th.は指示せず手を出さずが原則
箱庭が出来上がったら2人で眺めたり、箱庭のストーリーを窺ったりして思いを馳せる作業も。
終了時にはTh.の方で箱庭を撮影して記録します。
(後からカシャリ)
箱庭療法の適応と注意点
箱庭療法は遊びの一環で、元となる世界技法も子どもの心理療法なので小さい子への適応をイメージしやすいですが、子どもから大人まで適応可能です。
子どものイメージあるけど実は大人もアリ
カウンセリングをはじめとする心理療法は言葉を使うことが多い一方で、箱庭療法は言葉を使わずに自己表現できます。
そのため、うまく喋れない子どもや思ったことをなかなか言い出せない大人だと扱いやすいかもしれません。
年齢制限は特にないですが、イメージを扱う心理療法なので境界例や統合失調症など精神病圏の人への適応は慎重になる必要があります。
心弱り切ってる人の心をぐちゃぐちゃにかき乱しちゃうイメージね
\ 病態水準OK? /
また、実施の最中に破壊行動が見られるなどCl.の自我レベルを超えるような行動が見られたら中止することも(Th.の見守りの中行うので、Th.が受け止められる範囲なら見守り続けることもあり)。
Th.の受け止める力も試されます
箱庭療法の特徴と効果
箱庭療法はミニチュアを置いて表現していく遊びの側面もあり、遊戯療法の位置づけでもあります。
心理療法としての側面もあれば、人の心の調子をみるアセスメントとしての側面もあるのでざっくり解説していきます。
\ 遊戯療法の基礎 /
心が癒される
箱庭療法は、ただ箱庭を作ることにも意味があります。
好きなように箱庭を作る過程で自分の気持ちやイメージ、無意識に抑圧した葛藤など内的な世界を表現していくことができるので、心の浄化作用(カタルシス効果)を得やすいです。
モヤモヤした不満を吐き出してスッキリするイメージ
(女子会か)
内面に溜まっていたものを発散してスッキリすることで、自己治癒力(自分の力で治っていく力)が発揮されていくと考えられています。
枠内で自己表現してスッキリってマイクラとかあつ森??
\ ハマるのも分かる /
ゲーム内で自分の好きな世界を作っていけるのが楽しいのは、ある意味カタルシス効果を得られているかもしれませんね!
箱庭は実際に砂やミニチュアに触れるので、より作っている感覚や無意識を表現できている感覚があったり、制限がしっかりしているなど違いはあると思いますが、ゲームでも似た体験はあるかと。
筆者はゲームだと素材やお金集めの面倒くささ、モデル通りにしたい強迫観念、理想通りにできない嫌気などでカタルシス効果得られなくなりますが…(やっぱ自由さがカギ)。
楽しむためには時間とか枠の制限が大事
脱線しすぎたけど没頭したい人は気軽にできるのでどうぞ!
気持ちの表現がしやすい
先述しましたが、箱庭療法は言葉を使わずに気持ちを表現できるので、言語面接よりも取り組みやすい心理療法と言えます。
また、カウンセリングの部屋という守られた空間やTh.に見守られる安心感、表現は箱庭の箱枠など、何重にも保護された空間の中で自由な自己表現ができるという点も気持ちを表現しやすいポイントでしょう。
箱庭の作成に上手い下手や良い悪いなどの評価がないことも表現しやすさの1つです。
その他、Cl.によっては砂に触れることもあり、治療的な退行も生じやすいと言えます。
砂遊びするような…童心に返りやすいのかも?
治療的退行…大人が10代の頃の葛藤を発散させるとき、治療中は10代の心に戻って発散させていくイメージ
ただ昔話するより発散できそうじゃろ
自己理解しやすい
自由に表現した箱庭をTh.と共に見直したり、作成の過程で自分の無意識のイメージを視覚的に見たりすることで、Cl.は自分のイメージや気持ちに気づくことがあります。
洞察のきっかけにもなるんだね
箱庭には作成者の気持ちや葛藤、イメージなどが投影されることがあるので、自分でも客観的な振り返りがしやすいメリットがあります。
自分では自覚がなかった気持ちでも、ミニチュアや箱庭の構成を見て「もしかして…?」と気付くきっかけになれるとか。
箱庭療法の解釈
箱庭を作ること、出来上がった箱庭に思いを馳せることも大事ですが、箱庭を放置して終わらず解釈することもときには大切な作業です。
が、言語化して下手に解釈を与えることで箱庭の雰囲気やCl.の気持ちの流れを壊すこともあるので、Th.の中で見立てるくらいに留める方がベターかと。
空気読むのも雰囲気感じるのも大事
Cl.の自己理解や解釈の参考のために、完成した箱庭の印象やストーリー、気になるアイテムについて聞くこともありますが、しつこく聞いて関係が閉ざされないように注意。
無意識に土足で踏み込む新聞記者みたいなもんやな
箱庭の解釈には正解はなく、箱庭全体のイメージやテーマ、選んだアイテムの印象、箱庭実施の流れ、空間配置などが参考になります。
アイテムごとの意味もありはしますが、「車を置いたから○○」のような断定はできないので注意。
統合失調症だと箱庭内に更に枠を作る、アルコール依存だと水や庭園のようなテーマが多いなどの特徴もあるが断定しないように!
・ライオンやトラが多く攻撃的なテーマがある?
・ドアのある建物が並ぶ中1つだけドアがない…何やら塞ぎ込んでいる?
・ケガした人が病院へ行き治るストーリー…治りたい?治っているメッセージ? など
箱庭から断定的な解釈は難しいですが、箱庭の表現からCl.の気持ちや葛藤をイメージしてくみ取っていくことに意味があります。
箱庭が自己理解のきっかけになればいいね
箱庭から心理士の連想も大事やで
おわりに:自由な表現には癒し効果あり
箱庭療法は、Cl.(相談者)が自分の好きなように箱庭を作り、自分の気持ちや葛藤に気づいたりカタルシス効果を得たりする心理療法・アセスメントです。
▼箱庭療法の意味・メリット
・言葉でうまく話せない人でも表現しやすい
・好きなように自己表現することで気持ちがスッキリする
・箱庭を作ったり見たりすると自分の気持ちに気づくことがある
箱庭の作成に上手い下手はなく、基本的にはTh.(心理士)が見守った中で作成できるため、人によっては言語よりも表現しやすい方法かもしれません。
ただし、イメージを扱う心理療法は無意識を刺激するため、統合失調症などの精神病圏への適応は慎重に行う必要があります。
心理検査はどれも大なり小なり侵襲性があるため、心理士のエゴで実施しないように注意
人は日々ストレスに晒されており、他者や環境を気にして自分の気持ちや葛藤を発散することが難しかったりします。
友人に愚痴ったり、SNSで好きなことを発信したり、あつ森みたいなゲームで癒されたり…。
自由に自己表現できると、それだけで気持ちが軽くなったり今まで気づけなかったことに気づけたりします。
箱庭療法は自分の表現や自己理解のきっかけになるので、興味がある人は試してみてください。
筆者は箱庭大好き!w
もっと箱庭療法のイメージを感じたい人は、河合隼雄先生の箱庭とストーリーを参考にどうぞ!
初めて箱庭を学ぶ人でも読みやすい事例なので、勉強に使ってみてください。
\ ユングの勉強も忘れずに /
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