こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
特に意識したことはないかもしれませんが、言葉にはコミュニケーションの側面と思考するための側面があり、心理学では内言と外言という用語があります。
へーーー
小さい子が「あー!やっちゃったぁ!」「できたぁ!」「えー、どうすればいいんだろーなぁ」など常に喋っている独り言(?)にも実は思考力を培っている意味があるとかないとか…。
今回は、乳幼児の思考や言葉の発達に関する内言と外言について解説します。
✓内言・外言って何?
✓小さい子の独り言ってあれ大丈夫?発達的に意味あるの?
✓ピアジェ=ヴィゴツキー論争の理解が怪しい
心理系大学院を目指すのであれば、超有名なピアジェ(とヴィゴツキー)の考え方はきちんと押さえておきましょう!
そうでない人には少し難しい話かもしれませんが、小さい子が喋り続ける独り言への見方が少し変わるかもしれません。
無意味でも親への嫌がらせでもないですよ…!
こんな人におすすめ!
・内言と外言について知りたい人
・言葉と思考の話に興味がある人
・小さい子の独り言ブツブツが心配な人
・ピアジェとヴィゴツキーの考えを復習したい人
※心理系大学院受験生は優先的に
内言と外言とは
内言と外言は乳児の言語を指す用語で、L. S. ヴィゴツキーによる考え方です。
内言は、声に出すことなく自分の頭の中で自らに語りかけるような言葉を指し、思考のための道具のような役割をもっています。
外言はいわゆる人に話している言葉で、コミュニケーションツールの役割があります。
内言と外言は思考とコミュニケーションという役割が区別されているため、内言は砕けた表現や単語・述語が多く、外言は人に話す分丁寧語などある程度文法に則ったスタイルが多い違いもあります。
無意識に自分の内外で使い分けてるよ
L. S. ヴィゴツキーは、乳児の認知発達について周囲との会話などの交流を通して成長すると考えており、外言→内言へと移行すると主張しています。
流れとしては、乳幼児の段階では考えるため(内言)・伝えるため(外言)のような小難しい区別はまだできずに言わなくてもいい思考を言ってしまう。
それが乳幼児の独り言であり、発達が進んで内言との区別がつくようになると独り言が減ると考えています。
喋りながら思考力が育っていくイメージ
ざっくり言えば、まだ幼く考える力も未発達な子どもが、思ったことをとにかく人に話しまくっていくうちに思考力が身につき始めて、心の中で考える術も覚えていくといった感じ。
キッズの「おし〇こ♪」はまだ内・外言の未分化かもしれんな
内言と外言を勉強する際に「内言は本音、外言は建前」みたいな解釈をする人がいますが、そうではなくて「考える手段か、伝える手段か」という役割を抑えておきましょう。
J. ピアジェの考え
認知発達理論で有名なJ. ピアジェも乳幼児の独り言や思考について主張しており、L. S. ヴィゴツキーと論争していました。
※ピアジェの認知発達理論が関連しているので、以下用語が出ます!怪しい人は要復習!
J. ピアジェは子どもの主体性に注目しており、脳内で認知発達が進んで思考力が育っていくことで話すようになると考え、(独り言→)内言→外言への移行を主張しています。
ヴィゴツキーと視点が違うね
J. ピアジェの認知発達理論でいうと、前操作期(2~6歳頃)ではまだ他者視点をもてず自己中心性をもつことが特徴的なため、この頃の発話はコミュニケーションの役割がない独り言(自己中心語)と捉えます。
意訳「とりあえず喋ってるだけ」
そして、具体的操作期(6~12歳頃)で自分の考え以外に他者視点をもち(脱中心化)、頭の中で考える思考力が育つことで独り言(自己中心語)は次第に消えていくと考えています。
独り言の消失過程で論理的な思考ができるようになり(内言を獲得し)、コミュニケーションの意味をもつ会話(外言)ができるようになるとか。
超意訳「考えるようになったらコミュニケーション意識するようになりました」
ヴィゴツキーvsピアジェの違い
L. S. ヴィゴツキーとJ. ピアジェは乳幼児の発達に注目した共通点はあるものの、思考力と発話の発達について主張が異なっていますね。
【論争】 | ヴィゴツキー | ピアジェ |
独り言の捉え方 | コミュニケーションの役割〇 | コミュニケーションの役割× |
独り言の消え方 | 内言の獲得で消失 | 脱中心化で消失 |
【ポイント】 | 成長のカギは社会的交流 | 成長のカギは子どもの主体性 |
子どもにまだ十分な思考力が身についていないため、外言を繰り返すことで心の中でも考えられるようになるというL. S. ヴィゴツキー(外言→内言)と、何となくのイメージなど思考ができて徐々にコミュニケーションがとれるというJ. ピアジェ(内言→外言)。
話すことでより複雑な思考ができるようになっていくのか、あくまで思考力の成長と共に意味あるコミュニケーションやより複雑な思考ができるようになるのか。
J. ピアジェとL. S. ヴィゴツキ―の考えは対立していましたが、最終的にはJ. ピアジェがL. S. ヴィゴツキーの考えによるようになったとか。
=片側が間違ってる訳じゃないよ!
J. ピアジェは、子どもの成長は自らの経験や知識を外界と照らし合わせて成長していくと考えましたが、それだけではなく、周囲との関わりなど外的要因も成長には影響しているというL. S. ヴィゴツキーの考えも大切という訳ですね。
おわりに:言語と思考の発達には他者存在も必要
L. S. ヴィゴツキーによれば、内言は心内で自分に語りかえるような思考のための言葉で、外言はコミュニケーションのための普段の会話を指します。
同じく子どもの認知発達に注目しているJ. ピアジェと意見は対立しましたが、乳幼児の独り言は一種の思考の言語化で意味のある行為であり、内言を獲得することで消えると考えられています。
【論争】 | ヴィゴツキー | ピアジェ |
独り言の捉え方 | コミュニケーションの役割〇 | コミュニケーションの役割× |
独り言の消え方 | 内言の獲得で消失 | 脱中心化で消失 |
【ポイント】 | 成長のカギは社会的交流 | 成長のカギは子どもの主体性 |
考えるには言葉で表現する必要があるのかな?
J. ピアジェが主張する子どもの主体的な成長も大事な要素ですが、L. S. ヴィゴツキーが主張するように他者との交流・関係もまた成長には必要ですね。
小さい子どもが独り言(?)を一生懸命に喋っているときは「あぁ、言わなくてもいいこと(内言)ってまだ理解できていないんだなぁ」と見守ることもできそうですね。
あまりに様子が変だったら相談しようね
なお、思考と言葉について詳しく勉強したい場合は、そのまんまのタイトルで有名な本があります。
\ これ読むのが思考 /
ただし、分厚くて中身も個人的意見ですが結構難しめなので、きちんと勉強したい人向けかも。
ヴィゴツキー関連の本は少ない;;
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