こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理士のカウンセリングと言うと「傾聴」や「フロイトの精神分析」をイメージする人が多いかもしれませんが、最近では認知行動療法(CBT:cognitive-behavioral therapy)も有名な心理療法の1つ。
現場でニーズもあるしクライエントからもCBT希望って結構聞く
(筆者はCBTベースじゃないけど…)
✓認知行動療法(CBT)ってどんな心理療法?
✓考え方変えられるの?
✓どういう問題に有効なの?
✓他の心理療法とどう違うの?
今回は認知行動療法の概要についてざっくり解説します。
心理士を目指す人にとっては必須級の知識になるので、具体的な理論を確実に押さえておきましょう。
そうでない人にとっても、認知行動療法の考え方は自分の考え方の癖を和らげたり、心を少し軽くしたりする参考になるので、興味がある人は最後までご覧ください。
教師とかはっきりした考えの人は好きなイメージ(偏見)
筆者みたいに単純な人も割と参考になるかと!
こんな人におすすめ!
・認知行動療法(CBT)について知りたい人
・認知を変えて行動を変えたい人
・心理学の勉強をしている人
・考え方を変えたい人
※心理系大学院受験生は必須!
\ 3大心理療法は押えるべし /
認知行動療法とは
認知行動療法(CBT)とは、物事に対する認知に焦点を当て、不適切な認知を変えることで後の行動を変えていく心理療法を指します。
認知=物事の受け取り方ね
▼認知とは…
例:仲の良い友だちが今日は何故か無視してきた!
→「私何かした?嫌われた?」心配
→「無視とかふざけんな」怒り
→「調子悪いのかも」楽観視 など
出来事に対する受け取り方はどれも認知。
この認知によって
・「心配だからもっと声かけてみよ」
・「ムカつくからこっちも無視だ!」
・「しばらくそっとしとこう」 など
行動が変わるため、CBTでは認知にアプローチしてその後の行動を変えていく。
元々は、意識を扱う心理学を批判する形で生まれた行動主義派によって行動療法が生まれました。
行動療法という言葉を使いだしたのはB. F. スキナー
その後、行動療法を受けて再び人の考え方を重視する流れが生まれ、A. T. ベックによって認知療法が誕生(下記で補足します)。
認知行動療法は、行動を変える行動療法と認知を変える認知療法を組み合わせて、問題となる認知(考え方)や行動の改善をより考えた治療法と言えます。
また、目に見えない認知に注目しつつ目に見える行動面も扱うため、認知行動療法は客観的数値で検証できる特徴があり、エビデンスベースの心理療法とも言われます。
他の心理療法がデタラメって訳ではないよ
✓行動療法はS-R理論(S…Stimulus:刺激、R…Response:反応)
例:ご飯見て(刺激)→よだれ止まらん(反応)
✓認知行動療法はS-O-R理論(O…Organism:有機体(認知))と捉える
例:ご飯見て(刺激)→「まずそう…」(認知)→食べたくなくなった(反応)
認知行動療法の特徴はこんな感じ。
・面接の流れがはっきり構造化している(決まっている)
・ワークを出すなど指示的な傾向あり
・過去というより現在の適応について扱う など
初回のアセスメント時に、うつ病の尺度(SDS)など簡単な質問紙を使って問題を数値化し、分かりやすくしたり評価しやすくしたりもします。
はっきりさせるのが好きな人に向いてそう
また、認知行動療法は
・うつ病
・不安障害
・強迫性障害
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)
・統合失調症
・摂食障害 など
様々な精神疾患に効果があると考えられています。
技法によっては発達障害児の療育や精神疾患者の社会復帰のプログラムとして使われることも。
知識を得て損はない考え方だと思うよ
代表的な技法
認知行動療法の代表的な技法を一部解説します。
✓認知療法
✓論理情動行動療法
✓マインドフルネス(その他技法)
✓モデリング
✓SST
✓アサーション
下3つについては別記事があるため参考にチェックしてみてください!
他にも技法はありますが、紹介していくと果てしないので割愛。
CBTに興味もったら沼にハマってみてね!
認知療法(cognitive therapy)
認知療法はA. T. ベックが提唱した心理療法で、主にうつ病の改善に有効と考えられています。
A. T. ベックによると、うつ病の人の考え方はこれまでの経験から否定的なスキーマ(≒信念、思い込み)を形成していると仮定します。
抑うつ気分とは、スキーマを元にあらゆる出来事に対して否定的な考え方(認知)をしてしまうことが原因と捉えて(自動思考)、その認知に気づき変えていくことを目指します。
特に、出来事に対して瞬間的にネガティブな考え方が頭よぎってしまうことを否定的自動思考と言う(例:今日何もしてない→「無能すぎ死にたい…」)
ネガティブ思考の癖を客観視して変えようとするイメージ
認知(考え方)にアプローチするため、「言いたいことはわかるけど実際その認知を変えるのが難しいんだよ…」と思いやすいかもしれません。
ちなみにA. T. ベックの考えには、治療はセラピストが指示する一方的なやり方ではなく、セラピストとクライエントが一緒になって問題の改善を目指していく姿勢(協同経験主義)があります。
他の心理療法もだけど、一緒に問題改善のために取り組む姿勢が大事!
論理情動行動療法(REBT:rational emotive behavior therapy)
論理情動行動療法(REBT)はA. エリスが提唱した心理療法で、心の問題の原因は出来事に対する不合理な信念(価値観)と考え、その信念を修正して適切な行動を身につけるまでを目指します。
問題は出来事じゃなくて捉え方にあり
論理情動行動療法はABCDEモデルが元。
A(Activating event)出来事
B(Belief)信念
C(Consequence)結果
D(Dispute)反論
E(Effect)効果・元気づけ
出来事(A)に対して不合理な信念(B)をもつために、問題が生じる(C)(問題発生までの考え方はABCモデルという)。
不合理な信念(B)はときに現実的ではなく
・「〜しなきゃ」というべき思考
・「白黒つけたい」0か100かの思考
・「どうせ…」というネガティブ思考 など
融通の利きづらい価値観や固定観念が多いため、それらに反論(D)して合理的な信念(B’)に修正することで、問題の改善や目標に合った行動がとれるようになる(E)という流れ。
文より図の方が分かりやすい
不合理な信念(B)に自分で気づいて反論(D)して、合理的な信念(B’)に変えて自分の感情や行動をコントロールする力を身につけるのが目標です。
マインドフルネス
マインドフルネスは「今、ここで」の状態に気づくことに焦点を当てた心理療法で、第3世代の認知行動療法とも呼ばれています。
第1世代は行動療法で、出来事に対する問題行動に焦点を当てて適切な行動へと修正するのが目的。
第2世代は認知療法で、出来事に対する認知に焦点を当てて修正を試みるのが目的(上記で解説済み)。
マインドフルネスでは問題行動の原因や出来事に対する認知を扱わず、湧き上がった感情や認知にただ気づいて客観視する状態を目指します。
なお、第3世代はマインドフルネスの他にもいくつか技法があるので名称程度紹介。
技法 | 特徴 |
アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT:Acceptance and commit therapy) | 心理的な柔軟性を高めて「今、ここで」の状態を受け入れていく |
弁証法的行動療法(DBT:Dialectical behavior therapy) | 境界性パーソナリティ障害(BPD)特化のマインドフルネス |
メタ認知療法 | ネガティブ思考などの反芻を減らしていく手法 |
マインドフルネスはもともと仏教の考えからきており、認知療法に自分の意識に注意を向ける瞑想をプラスしたイメージです。
認知とか行動を修正する以前に自分の内面に気づくことが重要かもね
気づきがなければ人は変わらんな
自分の感情や行動をコントロールしたり修正したりするためにも、セルフモニタリングして自分について知ることが大切かもしれません。
認知行動療法ではセルフモニタリングの一環として、紙に自分の1日の行動や感情を書くなどのワークがあることもあります。
他の心理療法より指示的な一面
おわりに:困り事を変えるのは自分!
認知行動療法は物事に対する認知に焦点を当て、不適切な認知を変えることで後の行動を変えていく心理療法です。
その背景には、問題行動に焦点を当てる行動療法や、認知の歪みに焦点を当てる認知療法があり、今では多くの技法が存在します。
▼いろんなCBT
✓論理情動行動療法(REBT)
✓マインドフルネス
✓アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)
✓弁証法的行動療法
✓メタ認知療法
✓モデリング
✓SST
✓アサーション
心理の道に進む人は一通りの名称・特徴は勉強しとこう
使えるかは別。知らないとそもそも使えない
認知行動療法は、他の心理療法と違って面接は構造化していたり、指示的側面が強い特徴があります。
心理療法の中でセラピストから問題行動や認知の歪み、「今、ここで」の感覚などに気づくための指示的な関わりもありますが、自分について気づけるようになるのも変わっていくのも『自分』です。
セラピスト側は『治してやる』、クライエント側は『治してもらう』と錯覚しないように気をつけましょうね。
参考資料
認知行動療法に興味を持った人や自力でやってみたい人は下記の本が分かりやすいのでおすすめです。
「ちょっと落ち込んでしんどいかも」「自分について振り返って知りたい」人には読みやすい&実践しやすいと思います。
カラーで見やすく、セルフモニタリングのやり方が載っているのでとっつきやすいかと。
自分の考えの癖や新しい発見にもつながると思います。
どっぷりうつに浸かっている人はセルフ療法ではなく医療機関を受診してみてくださいね…!
(個人的には、セルフ療法はある程度心に余裕のある人がやれる印象)
認知行動療法のイメージをもっと掴みたい人はこちらも。
正直流れはキレイすぎる気がしますが、認知行動療法のイメージは掴みやすいかと。
「ワークって実際何?」って人でも理解できると思います。
勉強の導入や息抜きで読んでみてね
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