こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
今回は、仕事や生活で役立つリーダーのお話。
人は、子どもの頃からグループ学習をし、大人になっても仕事でグループを作って活動しますね。
✓効率重視のあの子が班長で嫌だった
✓あの上司良い人だけど仕事がなぁ…
✓仕事できる人が数人いれば回るから良し
✓人間関係が良ければ連携で何とかなる
学校、職場、PTAなど集団活動の中で、こんな愚痴や思いを感じたことは誰でもあるはず。
本記事で解説する「PM理論」を知ると、心理学的に機能するリーダーシップ理論を確認できるので、リーダーポジションにいる人やこれから立つ人は最後までご覧ください。
また、PM理論は心理系大学院の院試や臨床心理士資格試験で出題されることもあるため、心理士のたまごもチェックしておきましょう。
特別な内容じゃないけど、改めて知って取り入れることが大切!
PM理論(PM Theory)とは
PM理論とは、集団内で機能的なリーダーシップの在り方を類型化した理論です。
社会心理学・産業心理学で有名な理論で、提唱者は三隅二不二。
PM理論には、リーダーに必要な機能としてP機能(目標達成機能:Performance function)とM機能(集団維持機能:Maintenance function)があります。
これらの機能の程度の差を組み合わせてリーダーの質をグループメンバーが評価します。
心理士目指す人は英語まで覚えよう(過去に出題済み)
P機能(目標達成機能:Performance function)
P機能とは、集団が目標を達成するためにリーダーが促進することで、集団としての生産性を高める機能を指します。
▼P機能の例
・グループメンバーが問題解決に向かえるように指示したり、教えたりする
・グループでの目標をメンバー間で共有する
・目標達成のためにグループや個人の計画を考える など
リーダーのみ能力が高く目標をこなすのが大切という訳ではなく、リーダーとして如何にグループの目標に関わっていけるかがポイントになります。
P機能が低いと、「仕事があまりできない頼りない人」のようなイメージに。
M機能(集団維持機能:Maintenance function)
M機能とは、集団内の凝縮性(まとまり)を強め、良好な関係性を維持する機能を指します。
▼M機能の例
・メンバー同士が動きやすいように各メンバーの特徴を把握する
・メンバーのメンタルサポートとして定期的に面談する
・グループ内で話しやすいようにメンバーの意見を聞いたり、話かけやすい雰囲気づくりをする
・メンバーを褒めたり、必要に応じて叱る など
友だちみたいな、きさくなリーダーという訳ではなく、グループ間にヒビが入らないようにメンテナンスする見方ができるかがポイントになります。
M機能が低いと、「人間関係が苦手」や「メンバーの面倒を見ない」といったイメージになりやすいです。
P機能とM機能の組み合わせ
P機能の高低、M機能の高低の組み合わせで、PM理論では4つのリーダータイプに分けることができます。
①PM型
②Pm型
③pM型
④pm型
アルファベットの大文字が機能の高い方、小文字が機能の低い方って見方だよ
①PM型
PM型は、集団としての目標達成も目指しつつ、メンバー間の雰囲気に気を配り、関係性が悪くならないように維持に努められるリーダーと言えます。
PM理論内で一番理想のリーダーだよ
ただし、P機能には目標達成や生産性の向上のために計画を考えて共有できる計画的なP機能と、目標達成や成果のために厳しくメンバーに接する圧力的なP機能があります。
M機能も踏まえると、圧力的より計画的な接し方の方があたたかい印象が。
理論で改めて言わなくても分かりそうなことやね
②Pm型
Pm型は、集団での目標達成はできるものの、集団の良い雰囲気を維持したり、協調的に働きかける力に欠けるリーダーと言えます。
やたら能力あるリーダーで1人で勝手に進めちゃうタイプ
集団に課せられた課題の達成自体はできても、メンバー間の連携や成長は見込めなかったり、メンバー間の交流は少ない印象。
ビジネスライクや人との関わりが苦手で、とにかく成果重視の人・集団であれば適しているかもしれません。
多くの場合、一緒に活動する仲間との関係性を気にするため、Pm型のリーダー(になる人)はメンバー間のコミュニケーションを図るようにしましょう。
③pM型
pM型は、集団内の関係性を保つことができる一方で、成果を上げるにはいまひとつ…というリーダーと言えます。
頼りないけど人柄は良いってタイプ
メンバーを気にかけ、集団をまとめる存在という意味では居心地の良いリーダーかもしれません。
今のご時世、人間性って大事
計画的に動けるメンバーと一緒であれば、pM型のリーダーでも生産性を上げられるかと。
pM型の場合、メンバーを褒めることは得意な反面注意したり叱ったりが苦手な傾向があるため、持ち前の人間関係の調整力にプラスしてグループを育てるコミュニケーションがカギになります。
④pm型
pm型は、目標達成の筋道を考え、促すことも苦手で、集団をまとめる力も乏しいリーダーと言えます。
リーダーから一旦降りる方がよし!
pm型の場合は、個人の問題解決力がまだ低かったり、目標達成のために集団に働きかける積極性も見られなかったり、リーダーポジションにはまだ早いかと…。
仕事の責任を再確認したり、メンバーに興味を持って積極的にコミュニケーションを図ったりする努力が必要になります。
リーダーシップの在り方による効果
PM理論はあくまで機能的なリーダーシップに関する理論であって、これが絶対という訳ではありません。
何でも飛躍した理解をする人がいるから注意ね
集団にとってメンバー間の関係の維持が大事なのか、成果を早急に出すのか、長い目で成果を上げるのかなど着目点は違いますね。
一例ですが、4つの組み合わせのうち、メンバー間のやる気の維持やコミュニケーション性、トラブルなどリスク減を重視する場合はこんな感じ。
①PM型>③pM型>②Pm型>④pm型
人間関係が良いと互いにカバーし合える良さもあるね
また、集団での成果を短期的に上げることを目的とした即席チームなどではこちら。
①PM型>②Pm型>③pM型>④pm型
短期決戦なら目標に向かってテキパキするのも効果的
集団での成果を長い目で見て達成していくような、長期的なプロジェクトチームの場合は最初と同じパターンが好まれます。
①PM型>③pM型>②Pm型>④pm型
仕事ができれば良いってもんじゃないよな
リーダーシップとして、周りを引っ張るような能力の高さやカリスマ性のような先導力が第一な印象もあるかもしれませんが、長期的に成果をあげていくにはメンバー間の調和を意識するM機能も必要です。
P機能もM機能もどちらも大切だということを再確認しておきましょう。
P機能とM機能をカバーしていくには
自分が集団内でどんなリーダーかを振り返り、各機能が足りないと感じる場合はそれぞれカバーしていけると良いですよね。
P機能(目標達成機能)を高めるには、まず自分が目標までの道筋を知り、スモールステップを考えるようにしましょう。
目標達成のため、メンバーにあれこれ指示したり厳しくしたりするだけでは、集団の雰囲気が悪くなりコスパが下がる可能性も。
指示するからにはリーダーも働く姿見せんとな!
また、M機能(集団維持機能)を高めるには、個々のメンバーに関心を持ち、挨拶などちょっとした会話から見直すことが効果的です。
「仲良くなればいいんだろ?」とやみくもに定期的な飲み会を増やすのは、M機能の向上とは言えません。
強要、ダメ絶対
リーダーとしてメンバーの相談にのったり、できたことは褒めるなどのフィードバックをこまめにする努力が有効かと。
おわりに:目的に応じたリーダーを目指そう
今回解説したPM理論は、集団が機能的に活動するために好ましいリーダーシップの在り方を示しています。
P機能(目標達成機能)とM機能(集団維持機能)の高低で4つの組み合わせができ、理想はPM型です。
①PM型 | 目標達成も目指しつつ、メンバー間への配慮もできる |
②Pm型 | 目標達成はできるが、メンバーをまとめるのが苦手 |
③pM型 | メンバーをまとめる力はあるが、生産性はいまひとつ |
④pm型 | 目標達成もメンバーをまとめる力も足りない |
しかし、目的に応じてリーダーの役割は異なってくるため、集団に求められることをまず分析することが重要と言えます。
P機能もM機能も、集団として生産性を高めるにはどちらもリーダーには必要な要素ということを覚えておきましょう。
リーダーは上から評価されると思っているかもだけど…
下からも評価されていることを忘れずに
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