こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
近年子どもから大人までよく聞くようになったASD(えーえすでぃー)は発達障害の1つです。
発達障害は、幼い頃から認知や行動面で発達遅れがみられることで、脳の機能障害と考えられています。
親のしつけ不足や虐待で生じるものではなく基本的には先天性の障害なので、親御さんや養育者の人はどうか自分を責めないでくださいね。
虐待はもちろんあかんです
今回はASDの具体的な特性や支援方法について一例を紹介していきます。
・ASDって結局何?
・「大人の」ASDは別物?
・どんな支援をすればいいか分からない など
ただし、発達障害は1人1人特性が異なるため、本記事で紹介する支援がすべての発達障害の人に効果的と言うわけではありません。
あくまで一例として見てね
こんな人におすすめ!
・ASDについて興味ある人
・療育に不安のある人
・予備知識の欲しい子育て中のパパママ
・教師や保育士など子どもと関わる職種の人
※心理系大学院受験生は必須!(※試験頻出)
ASD(自閉スペクトラム症)とは
ASD(Autism Spectrum Disorder)は、幼い頃から程度の差はあれど3つの特性をもつ発達障害です。
①社交性の障害
②コミュニケーションの障害
③想像力の障害
なお、発達障害について本で知りたい人は下記を参考にどうぞ!
\ 図解で特性が分かりやすい /
\ ASDがなんとなく分かる /
発達障害全般に関する概要はこちら。
以前は広汎性発達障害(自閉性障害、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害)と呼ばれていましたが、精神障害の診断マニュアルであるDSM-5で改定され、ASDという診断名にまとめられた背景があります。
何でそうなっちゃったの?
説明してくで~
自閉「スペクトラム」症の考え方
今までいろいろな呼び方をされてきた広汎性発達障害ですが、「程度の差はあれどどれも同じ特徴をもつ連続体」(by 精神科医L. ウィング)という考えに基づいて、広汎性発達障害の4つの下位カテゴリーが廃止に。
「スペクトラム=連続体」
そもそも健常者と発達障害者の明確な線引きが難しいため、症状が揺れ動くイメージでASDにまとまりました。
DSM-5の改定でADHDとの重複診断も可能になったため、診断名だけでいえば発達障害の人って増加しているように誤解しやすいですね。
ADHDの詳細記事も合わせてチェックしてみましょう!
健常者と発達障害者のはざまはいわゆる「グレーゾーン」と呼ばれていますが、「結局発達障害なの?」と一番困りやすい指摘に…。
判断できないからグレーゾーンって言う医師もいるので困りもの…
診断は、医療機関で幼い頃から現在までの様子を詳細にきかれたり、心理検査(WISC-ⅣやWAIS-Ⅳ、田中ビネーなど)を実施したり、質問紙の回答を参考にしたりして判断されます。
「大人の」発達障害と言っても小さい頃のエピソードはしっかり聞かれるよ
詳細聞かずにASDと断定する医師は…
程度の差はあれど、ASDでは主に3つの特徴が見られるため解説していきます。
特性①社交性の障害
社交性の障害とは人との相互的な交流がうまくいかない特性で、人間関係の保ちづらさがあります。
✓目線を合わせられない
✓1人遊びが好きで集団になじめない
✓表情固く、表現が苦手
✓人見知りせず、やたら人に接近してしまう
✓身振り手振りがない / 過剰
✓集団ルールの理解ができない(空気を読めない)
✓相手の立場を考えられず不用意な発言が多い など
こういった特性から「協調性がない」「集団になじめない」「自分勝手で独特な人」のように捉えられてしまうことが多いです。
こういった特性は小さい頃から見られるため、3歳児検診などでASDの傾向を指摘されることもあります。
言葉や立ち歩きの遅れとか身体能力の遅れも気になるポイント
特性②コミュニケーションの障害
コミュニケーションの障害は言葉や非言語での意思疎通がうまくいかない特性です。
✓話し言葉の遅れやかみ合わなさ
✓表情の読み取りが苦手で、相手が笑っていても「…?」となる
✓会話を続けられない(「何言えばいいんだろう?」と困りやすい)
✓人の話を聞けない
✓言葉通りに受け取りやすい
✓独特な表現が多い(伝わりにくい表現)
✓曖昧なことが分からない など
当てはまるから自分ってASD?!
と思う人もいるかもしれませんが、ASDの診断基準は3つの特徴をもつことなので早とちりには気をつけましょう。
コミュニケーションの障害があると相手の気持ちを考える力が弱く、話が一方的になりやすいのが特徴です。
また、曖昧なことが理解できなかったり、やたら難しい言葉や表現を多用してうまくやりとりできないことも。
・友だちづくりができない
・関係を維持できない
・先輩・上司にもタメ口だったり社交的なことが分からない など
こんな苦労も多く、対人関係で失敗を感じやすいです…。
「雑談が苦手・できない」って声が多いよ
特性③想像力の障害
想像力の障害はイメージする力が乏しく、同じことを繰り返すなどこだわりの強い特性です。
✓何度も同じ行動を繰り返す(玩具を並べたり、手を叩き続けたり等)
✓オウム返しがやたら多い
✓細かいことにこだわる
✓図鑑を見るなど限られたことへ集中しすぎる
✓ルーティーンがあり、変化を受け入れられない
✓こだわりの強さ(同じものしか食べない、儀式的な行為が多い等)
✓気持ちの切り替えにかなり時間がかかる
✓同時に作業の処理ができない など
想像力が乏しいため自分の世界を展開しやすく、こだわりの強さが前面に出てしまうのが特徴で、興味関心は限定的になりやすいです。
1つのことに固執して「融通が利かない」と捉えられてしまうことも…。
ほかにも感覚過敏や鈍さ(痛みに敏感・無関心、五感の鋭さ、光への過剰な反応等)も特徴的です。
ちまたで流行っているHSP(敏感すぎる気質)が被ってる?
想像力の障害は感覚過敏だけじゃないよ
ASDへの支援
冒頭でもふれたように、すべてのASDの人に通じる方法ではありませんのであくまで一例として参考にしてみてください
ASDの根底には脳の機能障害があると考えられているため、治る・治らないの次元では考えずに「何ができるか」という支援を考えていきましょう。
また、一部特性が当てはまる=ASDと断定するのは少し危険な発想なので注意。
ASDを診断することが目的ではありません。
3つの特性をベースに個々でちがう特性が見られるため、あくまで個人を見るようにしましょう。
ASDに当てはめると個人として見るのを止めちゃう場合も多いからね
支援の基本は、過ごしやすい環境作りや本人の社会適応力を育てていく療育です。
何でも親や周りが何でも世話し続けると将来的に本人の自立が難しくなるので、日常生活や身の回りのことは少しずつ本人がやれるような支援が大切(視点として抜けやすい!)。
エンパワメントと言いますよ
支援①苦手への配慮
3つの特性で挙げたような苦手がみられるため、本人の力ではどうしても困難なことは配慮が得られないかを考えてみましょう。
▼苦手への配慮例
・目を見て話せないから、そのことを伝えておいて理解してもらう
・集団ルールがピンとこないため、ルールを書き出してもらう
・曖昧なことが分からないから、短く具体的に指示してもらう
・雑談が苦手なため、発言回数を減らしてもらう
・変化に過敏なため、落ち着く時間や場所を確保する
・一度に複数の仕事を任せず、1つずつ任せてもらう など
周りに特性を理解してもらうのが一番大事な配慮になります。
「あれやって」と指示されても「あれって何?」と困りやすいので、「漢字ドリルを2ページやってね」「今から30分以内に50部コピーとって」など具体的な声かけは有効です。
「なんでこんなことができないの?!」が重なるのつらいね…
「こういう特性があるんだね」と受け入れてもらえるだけでも過ごしやすさは変わります。
苦手を完全に排除するのも対処の1つですが、本人の適応力を育てるためにも理解を得たうえでできることはやっていくも大切ですね。
支障が出ない範囲でやれればOKよ
「急な予定変更でパニック」もよくあることですが、落ち着くまでそっとしてあげるのも大切です。
支援②長所を伸ばしてあげる
ASDの人は発達レベルの凸凹が激しいのも特徴的なので、その人の中での長所を伸ばしてあげて自信をつけていくのも有効な支援の1つです。
こだわりが得意分野になることも多い!
▼長所を伸ばす例
★こだわりを活かす
・時間に厳しい人なら会議のタイムキーパーに任命する
・1人黙々とする作業を任せてみる
・単純作業が得意ならお願いしてみる
・図工や美術が得意なら強みになるよう力を入れてみる
・「挨拶係」など目立つことを係にしてみる など
やれることを褒めてあげるのは万人に共通の支援ですね!
褒めは行動後「即!」がポイント
ASDに限ったことでなく「できない・苦手・やれない」ことばかりに目がいくと自信を失いやすいので、少しでも強みを見つけていきましょう。
\ 条件づけは要復習 /
支援③環境作り
子どもであれば特別支援教室や適応指導教室(学校以外で教科指導を行える少数教育機関)、療育センターなど。
大人であれば就労移行支援施設(B型・A型事業所:一般および障害者雇用に向けての練習の場で、工賃(給与)も得られる)など障害理解のある場所に属するのもありです。
\ 就労につなげよう /
精神科病院・クリニック(精神科デイケア)にかかり、精神障害者の手帳を取得して公的援助を受けるのもかなり役立ちます。
公的援助は障害のある本人にも家族にとってもすごく助かるので連携がおすすめ
本人のがんばりも大切ですが、家族や学校・職場などの環境が障害特性を理解することも大切です。
ただし、障害があるからといってその人のすべてを理解し配慮してくれるかといえば限界があるので、必要に応じて環境を変えることも覚えておきましょう。
学校に完璧な療育を求めても限界があるのは知っとこう
二次障害には薬物療法や心理療法
発達障害そのものに有効な薬は現状ありませんが、発達障害の3つの特性のため周りから腫れもの扱いされてしまったり、いじめやうつ状態に陥るなど二次的な弊害も起こりやすいです…。
うつ状態に対して薬物療法、心の傷に対して心理療法など二次的な活用は有効なので、困りごとがあるようなら医療機関にかかってみてくださいね。
薬を飲むときは医師の指示に従おうね!
おわりに:個人のトリセツを作ろう
ASD(自閉スペクトラム症)は脳の機能障害で、診断基準の改定で診断されやすくなったと考えられています。
スペクトラムとして3つの特性があり、特性の出方は人によって違います。
なので、「当てはまるからASDだ!」と診断して満足するのではなくて、「私 / あの子はどんなことが苦手でどんなことが好き / 得意なんだろう?」と特性を知ることが最重要です。
ASDについての文庫本を読んでみるのも理解におすすめ。
能力を知るってASDじゃなくても大切なことだね
ちょっとした支援は万人が過ごしやすくなるからやり得
治る・治らないの軸で考えず、過ごしやすい環境作りや本人の社会適応力を育てる療育的な関わりが基本です。
・長所を伸ばしてあげる
・環境作り など
本人の適応力を育てていくために、好ましいことはすぐに褒めてあげたり、目標設定をとにかく細かく作って(スモールステップ)、目標行動をできるようにするやり方が効果的です。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)とか言うけど、この辺は専門家に頼ってもいいかも
褒められて~
まずは特性を知り、苦手なことに対する対処を考え、その人のトリセツを作って本人と共有までできるとかなり過ごしやすくなると思います。
ASDの人は言葉よりもイラストや図解など『見える化』する方が分かりやすい人が多いので、本当にトリセツを作っちゃうのはおすすめ。
また、特性を理解してくれる環境作りや施設を頼るのも有効です。
✓ASDの子どもで勉強遅れが気になる場合は、特性理解のある環境で1対1でみてもらったり、イラスト多めのゲーム感覚で分かりやすく・集中しやすくしても◎
\ 発達障害の小~高校生のサポート /
↑低学年の内容は発達障害の専門機関監修みたい
✓ASDの大人で就労が続かない、なかなか適応できない場合は、社会的なスキルを訓練できる場を利用してみたり。
\ 一般・障害雇用を目指す /
特性の程度の差はもちろんありますが、「障害」より「個性」としてポジティブに変換して捉えることも大切な考え方です。
誰にだって良い面も苦手な面もあるからね
生きやすさ、模索していこうな
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