こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
うつ病や発達障害などの精神疾患は他にも多くの種類がありますが、世間で知られていないものも多いです。
今回は、人に頼ったり、人との適切な距離の取り方が分からなくなったりする対人関係の困り感がみられる愛着障害について解説します。
『障害』というと大げさに聞こえがちだけど意外と「似た状態かも…?」と心当たりのある人は多いかも
✓自信や自己肯定感を何故かもてない
✓人と親密になれない
✓人見知りを全然しない など
愛着障害は、発達障害や適応障害と誤診されることもある症状です。
まずは「こういう症状もあるんだ」と知ることから始めましょう。
・愛着障害を知らなかった人や興味ある人
・人との距離感が分からずいつも困る人
・何故か自信や自己肯定感をもてない人
・子育て中のパパママで知識を身につけたい人
※心理系大学院・心理士試験受験生は必須!
愛着障害とは
愛着障害は、乳幼児期に母などの養育者と十分な愛情ある関わりやコミュニケーションの不足・過剰により、対人関係や社会性に支障をきたすことをさします。
愛着=attachment(アタッチメント)ね
乳幼児にとって初の大切な人間関係(主に親子関係)で愛着をもてたら後の人間関係も順調ですが、愛着対象がいない経験をすると後の人間関係でも寂しさや、人間関係のぎこちなさを感じやすくなるイメージです。
赤ちゃんは親子関係で人との関わり方を学ぶんだね
ネグレクトなどの虐待や、養育者が定まらず愛着をもちづらい場合、養育者の気分で乳幼児を振り回す関わりなど、乳幼児が養育者を信頼できない状況が続くと愛着障害は見られやすいです。
親「私はこんなに○○ちゃんに愛情もって接してるのに?!」は、押しつけになっていないか振り返るのもありです…!
相互のコミュニケ―ションが大事
愛着のタイプや考え方は下記記事で復習してみてください。
愛着障害の種類
精神疾患の分類と手引きである『DSM-5』で愛着障害は、①反応性アタッチメント障害と②脱抑制型対人交流障害の2種類に分けられます。
✓愛着をもてないくらいの養育者の頻繁な変更(施設で養育者が頻繁に変わるなど)
✓愛着をもてないくらいの養育環境(親1人に対して10人の子どもなど)
虐待とそれに準じる関わりはあかん
以下、マンガのキャラクターでそれぞれの症状に近い例にあげますが、100%当てはまる訳ではないので傾向として参考にみてください。
無理やり症状を当てはめるならコイツ!って感じです
①反応性アタッチメント障害
反応性アタッチメント障害は、つらいときにつらいと表現できず、人に対して感情的な関わりをもとうとしなかったり、無反応になったりする症状を指します。
愛着未形成で人との関わり方が分からなくなるんだね…
乳児にとって家庭は初めての社会であり、「これが普通」の基礎になるのだよ
その他、具体的な症状はこんな感じ。
→つらい時でも養育者に助けをほぼ求めない
→つらい時でも養育者からの助けにほぼ反応しない など
✓他者との交流や感情的な反応が最低限になる
✓陽性感情(笑う、喜ぶなど)が制限される
✓大人との何気ない交流でも、イライラや悲しさ、恐怖感などを感じる
トラウマ体験でもこうなるかも…
反応性アタッチメント障害は、自閉スペクトラム症(ASD)と似た症状に見られやすいため、乳幼児の養育環境や発達過程をきちんと診る必要があります。
脳の機能障害なのか愛着の未形成なのかでは今後の関わりも変わるね
反応性アタッチメント障害をマンガキャラで(無理やり)例えるのであれば、『鬼滅の刃』の栗花落カナヲ(幼少期)が近しいです。
・幼少期より両親より暴力などの身体的虐待やネグレクトを受けてきた
・親にSOSは出せず、苦しみから逃れるためもあり「ある日ぷつんと音がして 何も辛くなくなった」と心を閉ざした(陽性感情や情緒面の制限)
・自分の頭で考えることができなくなった(同年代との情緒的な交流の乏しさ)
・コイントスで炭次郎たちとの関わり方も決めて、立ち去ろうともする(他者交流の制限) など
自分の気持ちや考えがよく分からず、表情変化も乏しく、関わり方には情緒面が見られず、不愛想にも見えやすい。
他者となかなか親密になれない特徴は、幼少期の愛着の未形成が要因とも捉えられます。
胡蝶姉妹に拾われて心底可愛がられて良かった
②脱抑制型対人交流障害
脱抑制型交流障害は、誰に対しても馴れ馴れしく関わり、ときには依存的なまでに関わる症状を指します。
愛情に飢えて気持ちの抑制が効かなくなるイメージ
主な症状はこちら。
✓過度に馴れ馴れしい言動(TPO無視の言葉遣い、突然のハグなど)
✓不慣れな状況でも、養育者から離れた後に振り返るなど確認行動をとらない
ADHD(注意欠如・多動症)の衝動性に似た症状を示すため、脱抑制型対人交流障害でも養育環境や発達過程の丁寧な聞き取りは必要です。
脱抑制型対人交流障害の背景には、愛着の未形成=誰に頼っていいのか分からないという不安定さがあり、愛着行為をばら撒いて必死に他者にすがろうとしていると考えられます。
・注意を惹きたくて目立つことをする(わざとのいたずらなど)
・ワガママばかり通そうと癇癪を起こし、協調性がない など
このような言動も、「どうしたら自分を見てくれる?」など人との距離感の分からなさ故であることが多いです。
実は多いかも…?
脱抑制型対人交流障害をマンガキャラで(無理やり)例えるのであれば、『NARUTO』のうずまきナルト(初期)が近しいです。
・幼少期に両親を失い天涯孤独(安定した養育者の不在)
・誰彼構わず近寄ったり、話しかけたりする
・里でいたずらしては人の気を惹き、困らせる
・(初期)イルカ先生に対しても頼りきれず試しがち など
常識はずれからの馴れ馴れしい言動ではなく、特定の愛着対象を得て、安心したいがための切ない症状と言えますね…。
ナルトは作者を自己投影したキャラらしく、気持ちの描写がリアル!
大人の愛着障害
診断的には、①反応性アタッチメント障害と②脱抑制型対人交流障害は5歳以前の子どもの症状を指しますが、愛着障害を抱えた大人も存在します。
人間関係が苦手で感情的な交流や人を避ける、過度に馴れ馴れしく近づくなど人との距離感が極端な人が多いです。
・人間関係が極端
→過剰に適応しようと「良い子」を演じすぎる
→人に気を遣いすぎてしまう
→どんな相手にも過度にしがみついて依存する
→人と全く関わろうとしない など
・人と関わってもいつも楽しいと思えない
・自己肯定感が極端に低く、ネガティブ思考
・感情や欲求のコントロールが苦手
・人との関わりで傷つきやすい など
人間関係の構築がうまくいかずに転職の繰り返しや、人との関わりに無力さを感じて引きこもりがちになることも…。
巷で有名なHSP(Highly sensitive person=繊細すぎる特性)と似てるかもですが、共感力の高さや養育歴など違いはあるよ
参考程度にHSPの人が共感しやすい本はこちら。
「HSP治せます」にエビデンスはないのでそれを謳う医療機関は信用ならん
愛着障害の改善に向けて
愛着障害は乳幼児期の養育環境が大きく影響しており、人との関わりをはじめ、自己肯定感など自分の心にも影響しうる症状です。
発達障害をもっている場合や、不安障害やうつ病、依存症などを合併する可能性もあります。
二次障害ってやつだね…
二次障害が現れる場合は、薬物療法で今現在の困り感(人との対面時に強い不安に襲われるなど)を緩和するだけでも生きやすさにつながりやすいです。
対症療法には今を生きやすくする意味があるからな
愛着障害は乳幼児期の愛情不足や愛着の未形成が原因と言うと、大人になってからでは手遅れのようにも感じられますが、そんなことはありません。
しあんも愛着障害のクライエント(大人も子どもも)とカウンセリング歴ありますが改善みられましたよ
子どもの頃の傷は大人になってからでも癒せるからな
信頼できる友人や恋人ができるだけでも愛着障害を乗り越えられることはありますし、医療機関でカウンセリングを受けることも有効です。
カウンセリングを続ける中で、愛着障害の人はカウンセラーに対して依存心や敵視、良い子に見られたいなどの気持ちが湧き上がると思われますが、おかしなことではありません。
「転移」だね
カウンセリングでネガティブな感情は繰り返されやすいですが、カウンセラーはあなたを見捨てることなくその黒い感情にきちんと向き合い、寄り添うので、話し合っていけるといいですね。
カウンセリングでは自分の思いを正直に話し合えることが大切だよ
なかには未熟なカウンセラーもいるから…しあん含めて精進な!
おわりに:つらさをぶつけられる存在が大切
愛着障害は、乳幼児期に養育者から十分な養育やコミュニケ―ションが不足・過剰な場合に起こりうる、対人関係の苦手さをメインとした症状を指します。
② 脱抑制型対人交流障害…極度に人に馴れ馴れしい
人との距離の取り方が分からず、極端な人間関係から人とのつながれなさを感じやすく、心にぽっかりと穴が開いたような状態が見られます…。
愛着障害についてマンガで理解できる書籍はこちら。
まんがでわかる 愛着障害〜自分を知り、幸せになるためのレッスン〜【電子書籍】
また、本記事では『鬼滅の刃』の栗花落カナヲや『NARUTO』のナルトを近しい例として挙げましたが、両者共に自分を大切にしてくれて、自分の気持ちを伝えられる・受け止めてもらえる人と出会えて対人関係はかなり改善されましたね。
成長してからでも心の穴は埋まるんだね!
愛着障害の治療は成人してからでも可能で、カウンセリングや二次障害に対する薬物療法などで現在の困り感を緩和することができます。
子育てなうなら乳幼児期に愛着できるくらいの関わりを!
子ども時代も大人になってからも自分と向き合ってくれる他者は安心の対象であり、自分の心を成長させてくれる存在です。
「あれ?」と思う場合はメンタルクリニックや精神科・心療内科の病院などでカウンセリングを受けてみるのもありです。
生きづらさを感じる場合はメンタルへ
今まで人生お疲れ様だぞ
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