こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
『愛着』は、発達心理学では超重要ワードであり、子育てなど日常の人間関係でもたまに聞くワードでもあります。
✓愛着って言うほど子育てに大事なの?
✓愛着って人間関係にどれだけ影響するの?
人との信頼関係を築いていくうえで重要な概念ですが、いまいちよく分かっていない人も多いためかみ砕いて解説していきます。
子どもをはじめとした人間の発達を知るうえでの基礎なので、子どもや人間関係好きやそれらにコンプレックスのある人は是非知識をつけましょう。
好きも嫌いも関心ある証拠
わが子の成長具合も見るのも楽しくなるね
・愛着についてよく分かっていない人
・子どもや人間関係に関心ある人
・人間関係を避けやすかったり、繋がれる感覚が弱い人
・子どものいるパパママや教育関係者
※心理系大学院受験生は必須!
愛着(attachment)とは
愛着(アタッチメント)とは、養育者と乳児との間にできる情緒的な絆を指す概念で、J. ボウルビィが提唱しました。
親子の絆ってやつだね
『養育者』と指すのは、子の本当の親に限らず、子どもとしっかり向き合い育ててくれる人全般を示すためですね。
J. ボウルビィによれば、乳児が泣くなどの反応を示し、母があやすなど応えることで、乳児は自分の行動で環境を操作できるという有能感を得ます。
ベビ様「おんぎゃー(泣けばいいと思ってる)」
また、母が乳児に笑いかけ、乳児も微笑み返すなど情緒的な真似を繰り返していくことで、乳児の感受性が高まっていくと言われます。
母や養育者の役割ってでかいよね
そして人見知りも見られ、以降は母など養育者の元に帰れば安全という感覚(安全基地)を心内にもち、自分の足で動き回るようになります。
※人見知りは正常な成長段階
次第に、母や養育者がいない場でも愛着が形成されることで、つながりを感じる=安心感をもてるようになり、外の世界に好奇心をもち出かけることができるようになります。
乳児期に愛着形成が怪しいと人見知りを拗らせて過度に内気になったり、発達に影響大みたい
無事に心内に定着させた愛着のことを内的作業モデルと言い、これは今後の対人関係を築くうえでの基礎です。
養育者を安心安全の象徴として心に内在化できるかが課題だね
✓愛着は、養育者と乳児間に生じる情緒的な絆(by J. ボウルビィ)
✓養育者との交流や人見知りを経て、養育者を安全基地と思うようになる
✓養育者の元に戻らずとも、心の中に安全基地を内在化できる(内的作業モデル)
愛着が及ぼす影響の研究
実は、養育者と乳児の情緒的な絆が希薄だと、発達遅れにつながる可能性が高まります。
発達遅れと言うと発達障害で片づける人もいますが、先天性の脳機能の障害である発達障害と違って、愛着の影響は後天的です。
何でも発達障害と言う医師もいるくらい
愛着の未定着がどんな影響を与えるかという研究もあるので紹介しておきます。
①施設症(ホスピタリズム)by J. ボウルビィ
施設症(ホスピタリズム)はJ. ボウルビィの愛着理論のきっかけで、戦争孤児などで施設に預けられた子どもたちに発達遅れが見られた研究を指します。
発達遅れは身体だけでなく、無関心や無表情、協調性や自発性の欠如など、人間関係に関する障害が見られたとのこと。
はじめは施設の衛生・栄養管理が問題と考えられていましたが、母子のスキンシップなど情緒的な交流が欠如していることが原因と報告されました。
乳児にとってつきっきりで相手してくれる親の存在が如何に大切か分かるね…
②代理母実験 by H. F. ハーロー
代理母実験は猿の親子を引き離した研究で、①針金製のミルクありママ(ワイヤーマザー)と、②布製で温かみあるミルクなしママ(代理母)のどちらに子ザルが愛着を示すかをみました。
むごい
結果、子ザルは代理母の方に愛着を示し、欲求を満たしてくれる相手よりも、スキンシップや母のぬくもりの方が愛着に重要であることが判明しました。
最低限のお世話ももちろん大切だけど、情緒的な交流も成長に欠かせないんだね
ちなみに、代理母実験の子ザルには続きがあり、その後の子ザルは自傷行為をしたり、サルの群れに入っていけないなどのトラブルが発生…。
えっ
同世代サルとの交流で改善したそうで、ぬくもりだけでなくコミュニケーションも健全な成長には必要と言えますね。
しあんもいじめ被害の予後はある意味発達止まって問題だったな
またこころの成長はじまたよ!
愛着の4パターン
養育者と乳児との間にどんな愛着が形成されているかを知る方法として、心理学ではストレンジ・シチュエーション法(by M. D. S. エインズワース)が有名です。
参加者:親、子ども、ストレンジャー(子どもにとっての見知らぬ人)
方法:
① 親子が実験室に入り、子は好きに遊ぶ
② ストレンジャーin、親out
③ ストレンジャーと親が入れ替わる
④ もう1回③
対象は人見知り全盛期の1歳児
② 安定型(B)
③ アンビバレント型(C)
(④ 無秩序型(D))
大人の場合は今の人間関係パターンから振り返ることになりそうだね
①回避型(A型)
回避型は、親が退室しても後追いや泣くことなく、親が帰ってきても接近や接触を避けようとするタイプです。
愛着というより親は空気…
親のパターンとして、子どもとの身体的な接触は少なく拒否的なことが多いようです。
②安定型(B型)
安定型は、親の退室に困って泣いたり不機嫌にもなりますが、親が戻ってこれば自分から近づいて落ち着こうとできるタイプです。
親を安全基地にできていて良き
親のパターンとして、子どもの状態を敏感に見れており、子どもとの関わりを楽しめている傾向あり。
③アンビバレント型(C型)
アンビバレント型は、親から離れようとせず、親が離れると困って泣いたりしてみせ、親が帰ってきたら親を責めたり気持ちの回復に時間がかかるタイプです。
忙しい
親のパターンとして、子どもの状態よりも親の都合や気分での交流がメインな場合が多く、交流にラグが生じることが多いです。
※日本人はアンビバレント型が多い文化らしいです
④無秩序型(D型)
無秩序型は追々生まれた型で、親に急接近したと思ったら回避したり、親に接近するものの顔は背けるなど奇妙なタイプです。
アンビバレント型よりあべこべさが際立つよ…
親のパターンとして、抑うつが目立ったり、虐待があるなどで、子どもも親を恐れがちな傾向があります。
おわりに:乳児期の親子の関わりはめいっぱい楽しもう!
未熟なままに産まれる人間は、乳児期にはどうしても親をはじめとした養育者からのお世話が必須です。
養育者と乳児との関わりを通して、愛着という情緒的な絆が形成されていきます。
施設症(ホスピタリズム)や代理母実験より、愛着が不十分だと人間関係に関する障害や自傷などの問題行動が現れ、健全な成長や人間関係の形成に支障がでやすくなります。
しかも愛着形成うまくいかないと追々引きずりやすいとか…
乳幼児とか、とにかく早期に対応するが吉
ストレンジ・シチュエーション法では、愛着は現在4つの型があります。
② 安定型(B型)…愛着★★★
③ アンビバレント型(C型)…愛着★★☆
④ 無秩序型(D型)…★☆☆
子どもの発達には親の関わりがすべてではなく、子どもの特性ももちろん影響しますが、愛着が安定するように子どもの状態をきちんと見て、楽しく遊べる関わりを目指すのが良いかもしれませんね。
養育者の責任は重大だけど、親の関わりがすべてではないのを忘れずに
親子共に楽しく過ごせればいいな
「思い返せば親子の関わりが希薄だった…」と悩み、今の人間関係でもぎこちなさを感じる人もいるかもしれません。
愛着が与える影響は後に大きく響くので、「なんだか人とつながれる感覚がないな…」など悩む場合はメンタルクリニックなどの医療機関で心理士に相談してみてください。
記事化しますが愛着障害ってのもあります
愛着は人間関係形成・維持の基本なんだね
子どもの反応を見つつ、楽しく遊んで良好な親子関係を経験しましょう。
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