こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
不安が強い人や心配性な人は世にたくさんいますが、その思いが強すぎて人間関係や生活に困ってしまうこともありますね。
今回は、不安や恐怖を感じすぎて自分で自分を苦しめてしまう強迫性障害についてざっくり解説します。
心理系大学院を目指す人にとって精神疾患の基本を抑えることは必須なので、特徴をしっかり覚えましょう。
そうでない人にとっても、「こんな症状があるんだ…」と知ることで困り事を相談しやすくなるので、流し読んでみてください。
こんな人におすすめ!
・強迫性障害について知りたい人
・不安が強い/心配性すぎる人
・自分の考えや行動で苦しんでいる人
・対人援助職or目指している人
※心理系大学院受験生は必須
強迫性障害(OCD:Obsessive Compulsive Disorder)とは
強迫性障害とは、合理的でないと分かっていても繰り返される考え(強迫観念)と、儀式的に繰り返される強迫行為の2つによって日常生活に支障をきたす症状です。
強迫=無理強いって意味
・家の鍵を閉めたか何度も確認しちゃう
・手が汚れている気がして何度も洗っちゃう
・必ず4がつく物事を避けてしまう
・不要と分かっているのに不用品を集めちゃう
・人に危害を加えてしまうかもと不安 など
もともと不安障害の1種だったが、DSM-5(精神疾患の分類)より強迫症として独立した
\ 心理シ必読のコレ /
強迫性障害の場合、「鍵閉めたかな?」「汚れてないかな?」といった不安は「そんなに考えなくても大丈夫」と頭でわかっていても「鍵の確認をする」「手を洗う」などの強迫行為が止められないのが特徴。
やめられない、とめられない
また、「鍵を閉めたか不安」「まだ汚れてるんじゃないか心配」など不安を打ち消すために強迫行為をしてしまうことも。
強迫観念と強迫行為に囚われてしまうと、確認作業や手洗いなどで何十回・何時間とかかってしまったり、引きこもるなどで症状を回避したりして生活に苦痛を感じていきます…。
何事もやりすぎは心に毒だね…
強迫性障害の人はうつ病やチック症(まばたきなど突然かつ不随意に現れる動きや音)を合併することが多いです。
強迫行為をやめたいと思いながらもやめられないところがつらい症状ですね…。
(薬物の心版みたい)
強迫性障害の原因ははっきりしていませんが、遺伝要因の強さや神経伝達物質のセロトニンの機能異常などが考えられています。
違法じゃないお薬が効くかも!
ちなみに、強迫性パーソナリティ障害という似た名前の人格障害もあるので、心理系大学院を目指す人たちは勉強しておきましょう。
\ 院試に出るぞ(出たぞ) /
完璧を求めすぎちゃう感じのやつな
強迫観念・強迫行為の分類
強迫観念や強迫行為には以下のような内容が多いです。
✓汚染への恐怖(汚いかもしれない、洗いすぎるなど)
✓不完全さ(戸締りなどの確認や完璧を求めすぎる)
✓縁起や加害(迷信を求めすぎる、人にケガさせていないか確認する)
✓儀式行為(物の配置や順序にこだわる、過度な癖のよう)
上記以外にもあり、はたから見れば「どうして?」と思えることでも本人にとっては重要な意味があったりします。
「あるあるだよ」って励ましはあまり励ましにならないし溝深まりやすいので注意
汚染への恐怖
汚染や洗浄の内容は、代表的な強迫観念と強迫行為です。
手が汚れているかもしれないと思って何十回・何分も洗い続けて時間を浪費してしまったり、汚いと思う物を触れなくなったりします。
ドアノブを触れなくて入室できない、汚れるのを避けるために引きこもってしまう場合もありえます。
強迫性障害をイメージしやすいかな
不完全さ
完璧主義をこじらせたようなイメージで、「戸締りしたか不安」など不確かなことを確かめようと過剰になりがち。
「完璧にできないとダメ」と自分で自分を強迫しては動けなくなってしまう場合もありえます。
もう少し緩く生きれたらいいよね…
縁起や加害
「4(死)は避ける」「占いの通りにしか動けない」など迷信に囚われ過ぎて、学校や職場で集団に合わせて動けなくなる場合がありえます。
また、「誰かにケガさせたかもしれない」「知らないうちに傷つけたかもしれない」と過剰に不安になっては「大丈夫だよね?」と確認し続けて、人間関係を避けたりトラブルになることも…。
明確なきっかけはないことも
儀式行為
過剰なこだわりで苦痛を感じてしまうイメージで、「順番通りにしないと登校できない」など生活に支障をきたす場合がありえます。
発達障害のこだわりと似てる??
発達障害のこだわり行動は本人の不安を実際に軽減できたり好きでやっていたりすることが多い一方で、強迫性障害は強迫行為を行っても苦痛を感じる特徴があります。
強迫性障害の対処
強迫性障害は、薬物療法(SSRI)で不安や恐怖感、合併しやすいうつ状態を軽減し、心理療法では行動療法が有効と言われています。
行動療法の中でも、恐怖の対象と向き合うエクスポージャー(暴露法)や強迫行為をやめさせる反応妨害法が特に有効です。
荒療治すぎない?って思うかもだけど有効な治療なんです
治療意欲がないとできんね
本人が恐怖を感じていることと向き合うことが改善につながりやすいですが、見方によっては確かに強引な改善方法なので嫌がる人に無理強いは止めときましょう。
具体的な対処の前に、強迫性障害について知って家族や周りからの理解を得ることも大切です(心理教育)。
たとえば、「汚いかも」と思って汚れるのが怖いからと言って、何十回・何時間と手を洗っても実際怖さは全然緩和されなかったりします。
強迫観念を打ち消すために強迫行為をするはずが打ち消せていないだと…?!
むしろ、強迫行為(手を洗い続けるなど)を続けてしまうことで時間ばかり浪費してしまい、つらさや生活の不自由さのデメリットにつながっていることが多いです。
このメカニズムに気づくのも改善への一歩
なので、強迫性障害の場合、怖さに慣れていくことと強迫行為をやめることの2つが重要になります。
Q:強迫行為の回数はちょっとずつ減ればいい?
改善のためにはスモールステップで低いハードルからクリアしていく考え方が大切です。
「30分手洗いしてたのを1回1分にしよう」など回数や時間を減らすやり方もありますが、1人で実践しようと思うと案外難しいもの…。
▼こんなイメージ
・ダイエット中で間食は控える方が良いって分かっているのにケーキを1口食べた。…止まれる?
・試験勉強のためにゲームは封印しようと思っているのに10分だけプレイ。…止まれる?
無理ンゴ
強迫行為の回数を減らしてうまくいく場合もありますが、強迫行為はやりだすとなかなか止まれないし、やればやるほど強迫観念を強化しやすいです。
回数や頻度を減らしていくよりも、他にハードルの低いことを探して強迫行為をなくしてみるのがおすすめ。
・仕事して帰宅したときよりも、ただ散歩して何も触らず帰宅する方が手洗い耐えられそう
・5分出かけるだけなら鍵の締め忘れもあまり気にならない など
できそうなことから探そう!
そのためには「なんで怖いのか」ややらずにはいられない意味をしっかり確認しましょう。
Q:確認作業とか誰かに代わってもらったり時間を多めにとったりすればいい?
何度も確認したり特定の場所へ行けなかったり、さわれなかったり…日常生活で困ってしまうなら怖いことはつい避けたくなりますね。
・施錠は家族に頼む
・ごみ捨て係から外してもらう
・なるべく自分のルーティーンに合わせてもらう
・手洗いや確認のための時間を予めとっておく など
周りに配慮してもらったり回避したりすれば、確かに生活上の困り感は一見解決すると思います。
ただし、強迫性障害を改善したとは言えないので、状況が変わればまた困ってしまうことも…。
症状は改善が全てではないので、配慮や回避でうまく生活が送れるならそれも1つの手だと思います。
これは筆者の意見
強迫性障害そのものをどうにかしたいと思うなら、やはり怖さを感じることと向き合い、自分にできそうなことから慣らして、強迫行為をとめていくようにしましょう。
おわりに:怖いけど向き合うことが第一歩
強迫性障害は、自分でも合理的でない・やめたいと思いながらも繰り返される考え(強迫観念)と、強迫観念を打ち消そうと繰り返される強迫行為に苦しみ、生活に支障をきたす症状です。
「鍵を閉めたか不安」など、誰でも心配になって確認することはありますね。
しかし、強迫性障害の場合は不安を打ち消そうと過剰反応してしまいます。
心配性の度を越して生活に不自由さが出ちゃうみたい
自分で自分を強迫しちゃう
強迫性障害はうつ病を合併しやすい特徴があり、治療としてはSSRIを使った薬物療法や行動療法のエクスポージャー、反応妨害法などが有効です。
恐怖や強い不安を感じることからは誰だって逃げたいものですね。
うむ!←
強迫性障害の場合、引きこもってしまうなど回避行動で生活に支障が出ることもあります。
怖いことから目を背けてなんとかやっていけるならそれはそれで良いかもしれませんが、改善するには「どうにかしたい」気持ちをもって、怖いことと向き合うのが重要です。
・どんなことが怖いのか振り返る
・確認や手洗いなど強迫行為はなくすようにやれそうなことから向き合ってみる など
1人でどうにかしていくのはなかなか難しいので、困る場合は医療機関や専門家に頼ってみましょう。
人によって恐怖を覚えるもの・こと、意味も対処も違うので、「不潔恐怖だからただ手洗いやめればいいやろ!」とか型にはめず、あくまで個人としっかり向き合いましょう。
第三者に話聴いてもらえるの助かるよね
ユルく生きれるといいな
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