こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理検査のなかにはIQを求める知能検査も含まれており、田中ビネーやWAIS/WISCといった単語は一般の方でも聞いたことがあるかもしれません。
ネットの診断でIQ出すやつあるけどそれとはまた別
今回は、知能検査に関心のある人から、心理や関連領域の初学者までを対象に、ビネー式知能検査の概要についてざっくり解説します。
知能検査は用語や人名が多く覚えにくいかもしれません。
が、心理系大学院の院試や心理の資格試験でも出題されるため、関係者はしっかり確認しておきましょう。
本記事は一般<<専門系向けです
こんな人におすすめ!
・ビネー式知能検査の誕生経緯を知らない人
・用語や人名が覚えられない人
・ビネー式のメリットやデメリットが曖昧な人
・田中ビネーの特徴を整理したい人
・心理、教育、療育、福祉系の人
※心理系大学院受験生は必須!
※手順や解釈ではありません!
ビネー式知能検査(Binet intelligence scales)とは
ビネー式知能検査とは、対象者の知的なレベルを測定する世界初の検査で、A. ビネーとT. シモンが開発し、L. ターマンが実用化したものです。
人名多くてややこしす…
※人名や用語が多いので、ビネー式の成り立ちをざっくり解説しておきます。
フランス生まれのA. ビネーは、国から要望を受けて精神遅滞(発達の遅れ)の子どもとそうでない子どもを見分けるために、知能検査開発に取り掛かりました。
T. シモンは共同開発医師
問題作成にあたっては、子どもの精神発達の速さには個人差があると考え、ビネー式の問題は各年齢群の50~70%が正答できるレベル(標準問題)を採用してます。
※10歳児が10歳相当の問題の正答率100%という訳ではないぞ!
人間そんな完璧じゃない
ビネー式では標準問題が全てできる年齢層を見つけてから、徐々に難しい問題に取り組んでいき、子どもの精神年齢(MA:Mental Age 精神的な発達水準)を測定します。
▼例
10歳の標準問題はクリアしたが11歳の標準問題は十分にクリアできなかった
→精神年齢は10歳とする
この知能検査開発は世界的に注目を浴び、他国でも使えるように標準化を目指し、L. ターマンが知能指数を取り入れて改良したという流れです。
知能指数(IQ:Intelligence Quotient)
知能指数(IQ)は、実年齢に対する精神年齢の発達割合を示す指数で、W. シュテルンが考案しました。
シュテルンの考案したIQをターマンがビネー式に導入(ややこC)
シュテルン(Stern)と読みます
ちなみに、知能指数の求め方は、精神年齢÷生活年齢(実年齢)×100。
▼例
10歳の子どもの精神年齢が11歳のとき
→11÷10×100=110(IQ)
知能指数(IQ)を導入することで、実年齢に対する精神発達の度合いが客観視できるようになりました!
これでだいぶ使いやすくなったね
なお、ここでいう知能指数(IQ)は、IQ=100が標準(ネット上の遊びでIQ=180とか見かけますがぶっ飛びすぎ)。
低いからダメ、高いから良いってモンではないぞ
ビネー式知能検査のデメリット
世界初の知能検査で、精神年齢(MA)や知能指数(IQ)を測定して、子どもの精神発達のレベルを見れるビネー式ですが、欠点もあります。
✓成人の知能の測定が難しい
✓細かな知能の因子ごとの違いは分からない
たとえば、精神年齢は加齢と比例して上昇していくわけではなく、高齢になれば物忘れが生じるなど低下することもあります。
生活年齢(実年齢)が30歳、精神年齢が60歳として、60÷30×100=IQ200!になりますが…この30歳の人がすごいかと言われると…どうでしょうね。
見た目はおっさん・頭脳はじいさん…?
コナン君だから許されてる
また、ビネー式で測定できるのは、10歳相当などおおまかな知能であって、どんなことが得意・苦手といった差までは分かりません(ので、概観的知能検査と言われることも)。
あくまで大まかな知能を測定!
【新たなビネー式】田中ビネー式知能検査
ビネー式は日本でも用いられるようになり、代表的な2つがこちら。
・田中ビネー by 田中寛一
・鈴木ビネー by 鈴木治太郎
特に、田中ビネーの最新版「田中ビネーⅤ」は2歳~成人まで適応可能で、成人の場合は全般的な知能のほかに領域ごとの評価もできるようになり、従来のビネー式の欠点をカバーしています。
▼成人の場合の下位分類
・結晶性領域
・流動性領域
・記憶領域
・論理推理領域
(ふーんでいいかと)
成人の知能測定はどうやるの?
田中ビネーⅤは、13歳までは従来通り精神年齢(MA)と知能指数(IQ)を求めますが、14歳以上は精神年齢(MA)を求めず、偏差知能指数(DIQ)を求めます。
▼偏差知能指数(DIQ)
同年代の集団の平均と比べてどの程度かをみる指数。
平均=100
標準偏差(SD)=15
DIQ=100+15×{(個人の得点-同年代の平均)÷同年代のSD}
偏差値のイメージ
大きい人のIQは更にアバウト算出
また、乳幼児や知的な遅れがあり検査が難しい場合は、発達チェックという発達レベルを確認する簡易項目を利用することもあり〼
なお、施行時間については対象者にもよりますが、1時間前後が目安になるかと思います。
被検者も検査者も意外と疲れるのだ
おわりに:知能検査は今の精神発達の度合いをみる目安!
ビネー式知能検査は、精神遅滞の子どもをスクリーニングするためにA. ビネーとT. シモンによって開発された正解初の検査です。
子どもの精神年齢(MA)だけでなく、W. シュテルン考案の知能指数(IQ)をL. ターマンが導入した背景があります。
▼ビネー式知能検査のメリット・デメリット
〇精神年齢や知能指数を求められる
〇実年齢に対する精神発達の度合いが客観視できる
〇大まかな知能レベルが把握できる
△成人の知能測定が困難
△細かな得意・不得意な能力は分からない
国内でも導入され、現在では「田中ビネーⅤ」が主流で、特徴をまとめるとこんな感じに。
対象年齢 | 2歳~成人 |
施行時間 | 1時間前後が目安 |
実施の流れ | 全問正解する年齢群 →全問不正解の年齢群まで実施 |
求める指数 | 13歳まで:精神年齢&知能指数 14歳以降:偏差知能指数 |
特徴 | 成人も評価可能 知能の下位領域も評価可能 |
関係者はちゃんと抑えとこう!
なお、知能検査は、あくまで対象者の現在の知的レベルを評価するものです。
「IQ=○○だから問題」のようにレッテルを貼るものではありません。
専門家を目指すなら、結果に応じてどういったことが得意・苦手なのか、どうすれば日常生活の困り感に対応できるのかなどを考えて扱うようにしましょう。
【余談】子どもの発達を勉強する書籍
余談ですが、子どもの発達に関わる場合は各年齢の大まかな発達・特徴を勉強しておくと検査・所見・関わり等の参考になります。
\ こういうの欲しかった /
具体的な年齢ごとの発達を知らないと、問題じゃないことを問題と捉えてしまう危険があります!
こちらは心理面だけでなく身体面の発達もまとまっているので情報量は多いかと(巻末のまとめだけでも読んで)。
心理以外も要勉強です!
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