こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
今回は、感覚と捉え方のお話。
(筆者も遂にスピリチュアル系に?!)
筆者「心理系でーす」
実は、人は見聞きなど五感で感じ取ったままに判断や理解をしている訳ではありません。
たとえば、人が近づいてくるときは大きく見えるけれど、その人が巨大化したとは誰も思わないでしょう。
いろんな音でうるさいショッピングモールでも、全部の音を理解している訳ではないし、好きな単語が聞こえて反応することもあるはず。
当たり前じゃん!…でも何で?
この疑問には知覚の恒常性や選択的知覚といった現象が関係しています。
心理系大学院受験生にとっては大事な基礎心理学なので要チェックで、そうでない人にとっても人のちょっとした不思議を知るきっかけにもなるので、最後までご覧ください!
こんな人におすすめ!
・物の見え方や捉え方に興味がある人
・知覚と感覚の違いが曖昧な人
・知覚の恒常性について知りたい人
・心理学の勉強をしてみたい人
※心理系大学院受験生は要チェック
感覚(sensation)と知覚(perception)について
知覚の恒常性の前に、知覚と感覚についておさらいしておくと理解しやすくなるので、先にざっくり解説します(飛ばしたい方はこちらへ)。
同じようなものじゃないの?
↑そう思う人は読むこと推奨
まず、感覚(sensation)とは音やにおいなどの刺激が鼓膜(耳)や網膜(目)などの感覚受容器を介して、脳の特定領域に達して感じることを指します。
そして、知覚(perception)とは脳に達した感覚情報を知識や経験などで選択・解釈したものを指します。
たとえば物を探すにしても、目では目の前の光景を感じていても、知覚はできていないことも。
見えるんだけど見えないもの…!
つまり、同じ刺激を受けて感覚が生じたとしても知覚は人それぞれで異なることから、知覚は主観的に受け取りやすいと言えます。
見たままに、聞いたままに理解できている訳ではなくて、どう理解するかは人の勝手と思うと、理解の共有って改めて難しさを感じますね。
人の知覚も尊重したいね
知覚の恒常性(perceptual constancy)とは
知覚の恒常性(perceptual constancy)とは、刺激となる対象(感覚情報)が多少変化しても、明るさや大きさなどの知覚はある程度一貫する性質のことです。
同じ感覚を受けても知覚は人それぞれで異なりますが、この性質があることで人はある程度共通した補正で知覚することができます。
代表的な知覚の恒常性はこんな感じ。
視覚情報が分かりやすく有名ですが、知覚の恒常性は他の五感でも生じます。
知覚の恒常性は、生活していれば当たり前のように思えることかもしれませんが、気づかないだけで結構重要な感覚修正をしてくれています…!
感じるままに知覚していては怖いこともある
明るさの恒常性
明るさの恒常性は、照明などが多少変わっても白は白、黒は黒にある程度見えることを指します。
▼例
・ゴキブリを発見して部屋の電気を点けたり切ったりして見る
→部屋が明るくても暗くてもGは大体黒く見えるの!
色の恒常性
色の恒常性は、明暗などが多少変わっても物の色はある程度同じように見えることを指します。
▼例
・茶色の犬が日向や日陰を行き来する
→網膜(目)的には日向と日陰では別の光として感じるはずが、知覚はさほど影響を受けず茶色系統に見える
大きさの恒常性
大きさの恒常性は、対象との距離が多少変わっても物の大きさはある程度一定に見えることを指します。
▼例
・30cm先にあるコップを手元(15cm)に寄せる
→網膜(目)的には倍の大きさとして感じるはずが、実際はそんなに巨大化したようには知覚しない
形の恒常性
形の恒常性は、物の見る向きなどが変わっても、その形は元と同じように見えることを指します。
▼例
・正方形の皿を斜めに見てみる
→見方が変われば網膜(目)的には長方形に感じるかもしれないが、あくまで正方形の皿として知覚する
選択的知覚(selective perception)
人は刺激を感じ、主観的に知覚するとざっくり解説しましたが、感覚情報を無意識のうちに取捨選択して必要なことを知覚することもあり、これを選択的知覚(selective perception)といいます。
オート機能!
選択的知覚は、知覚的鋭敏化と知覚的防衛の2種類があります。
✓知覚的鋭敏化
…自分に価値ある情報を選びやすくなること(論文執筆あるある)
✓知覚的防衛
…自分がNGとする情報が選ばれにくくなること
都合の良いこと選んで、悪いことは選びたくない
どちらも決して悪いことではなく、そもそも感じ取れる全ての情報を取り込んでいては必要な情報をすぐに得られないため、脳が自動で情報処理しているイメージです。
知覚的防衛も、自分が処理しきれない情報を無意識にはじいて自分を守っているとも言えます(でも未成年よ、「お酒は二十歳から」という情報はきちんと受け止めよう)。
筆者との約束!
なお、選択的知覚の代表例にカクテルパーティ効果があるので、こちらもざっくり紹介しておきます。
わちゃわちゃ楽しそうな名前ね
カクテルパーティ効果とは
カクテルパーティ効果は、パーティ会場のように大勢で賑わうような場所でも、自分が話している相手の声を聞ける効果のことです。
鼓膜(耳)では周囲の色々な音を感じているものの、必要な情報を取捨選択できていることが分かりますね。
人ってほんと都合よく聞いてるね
おわりに:人はそれぞれ補正して現実を捉えている
景色や言葉など同じ感覚刺激であっても人はそれぞれ主観的に知覚するため、世界の見え方や捉え方は人それぞれです。
見聞きしたままに知覚しないというといい加減に聞こえるかもしれません。
が、知覚の恒常性という補正や選択的な知覚をするからこそ、現実が過ごしやすくなってもいます。
感覚のままに生きたら情報過多でパンクしそう
意外とテキトーでおk
ただ、無意識もあるとはいえ、選択的に知覚してばかりでは他者との感じ方や捉え方にズレが生じたり、それこそ都合の良いことばかり考えてしまう人になりかねません…。
自分と人では世界の知覚の仕方が異なると改めて理解したり、ときには意識できる範囲で現実と向き合ってみたりすると、少しだけ周りと世界を共有しやすいかも(自分の心を守る意味もあるので無理する必要はありませんが)。
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