こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
今回ざっくり解説するテーマは、言葉がうまく話せなくなったり理解できなくなったりする失語症について。
一般<<<専門向けの回!
✓他の言語障害との違いがよく分からない
✓ブローカ失語・ウェルニッケ失語が混ざる
心理系大学院を目指すなら上記2点は抑えるべき基本です。
精神症状だけでなく、身体(脳)の損傷による変化も最低限抑えておきましょう。
こんな人におすすめ!
・はじめて失語症を知った人
・ブローカ失語とウェルニッケ失語の違いが分からない人
・生理心理学や神経心理学に興味がある人
・看護師や言語聴覚士など医療関係者
※心理系大学院進学希望者は要チェック
失語症とは
失語症(aphasia)とは、事故や脳血管の障害などで脳の言語野(言語を司る領域)が傷つくことで、話す・理解するといった言語活動に支障をきたす状態です。
言「語」活動が「失」われると書く通り、もともとは問題なく話したり理解したりできていた能力が外傷により損なわれることを指します。
外因性!
強いストレスで声が出なくなること(心因性)や、生まれつきの障害でうまく話せないこと(内因性)とは区別できると覚えておきましょう。
喉など他の器官の問題でもなく、あくまで脳機能の損傷が原因と考えられています。
▼代表的な失語
・ブローカ失語
・ウェルニッケ失語
・伝導失語
・全失語
代表的な失語の中でもブローカ失語とウェルニッケ失語は、心理系大学院の院試や資格試験で頻出なので特徴は覚えましょう。
どちらも発見者の名前でする
なお失語症は脳に関係するお話なので、脳の領域について怪しい人は下記記事でおさらい推奨。
\ 脳みそわくわく /
ブローカ失語
ブローカ失語(Broca’s aphasia)は、大脳皮質の前頭葉に位置する言語野(言語能力を司る領域。ブローカが発見したためブローカ野とも言う)の損傷により生じる失語を指します。
言葉は理解できるものの、滑らかに発音することが難しくなる特徴があり、運動性失語とも呼ばれます。
前頭葉=口が近いから喋りが苦手って覚えてた
筆者のイメージは安直ゥ
▼ブローカ失語の特徴
・単語で区切ったような喋りになる「あの、昨日、えっと、病院、疲れて…」
・復唱が難しいこともある
・自発的な発話量が減る
・正確ではない発音が見られる「チイゴ」「イッチゴ」「イチゴン」
・理解力はある程度保たれる
・ただ、長い文章や複雑な指示の理解は難しい
言われたことはおおむね理解できるにもかかわらずうまく話せないもどかしさや、たどたどしい疎通から小さい子に関わるように接されることもあり、不満は募りやすいと想像できますね…。
病識はあることが多いようです。
相手を尊重するためにも病状の理解は必要だね
ウェルニッケ失語
ウェルニッケ失語(Wernicke’s aphasia)は、側頭葉に位置する言語野の損傷により生じる失語を指します。
ブローカ失語とは逆に滑らかに発話できるものの、言葉の理解が難しくなる特徴があり、感覚性失語とも呼ばれます。
側頭葉=耳に近いから聞くのが苦手って覚えてた
▼ウェルニッケ失語の特徴
・滑らかに話せるが内容がデタラメになることもある
・言い間違いが目立つ「そこの机(イス)に座って~」
・聞いた内容の理解も文字の読み取りも難しい
・復唱が難しいこともある
・音の聞き取りが難しい(蜂(hachi)と町(machi)ならhとmの違いだが聞き取れない)
問題なく話すこと自体はできるため発話量は多いものの、相手の言うことが理解できずに話す内容がデタラメになってしまうなど、言葉数の割に内容が薄くなってしまうつらさもあります。
病識はないことが多いようです。
伝導失語
伝導失語(conduction aphasia)は、ブローカ野とウェルニッケ野を結ぶ連絡通路である弓状束が損傷することで生じる失語を指します。
特に、復唱の際に言い間違いが目立ってしまうのが特徴的です。
▼伝導失語の特徴
・復唱がとにかく苦手
・言い間違えが多い
・話すのは滑らかだったり吃音っぽくなったりする
・言われたことの理解や文字の読み取りは大体可能
・自発的に文字を書いたり聞いたことを書きとる場合も書き間違えが目立つ
伝導=言語情報のインプットとアウトプットの伝達がうまくいかない説
全失語
全失語(global aphasia)は、ブローカ野とウェルニッケ野(前頭葉と側頭葉)がどちらも損傷することで生じる失語を指します。
言われたことを理解したり、滑らかに話したりすることが難しい特徴があり、失語症の中でも重篤な症状といえます…。
▼全失語の特徴
・話すも理解も難しい
・話せても噛み合わなかったり特定の言葉が目立ちやすい
・復唱も難しい
・文字の読み取りや書くことも難しい
脳の広範囲が損傷されるため、全失語の場合は片側(右側)マヒも併発することが多いようです。
文字通り言語「全」般の失語だね…
代表的な失語のまとめ
上記で紹介した4種類の失語を表にまとめるとこんな感じ。
話す | 理解(聞く) | 復唱(読む) | 書く | |
ブローカ失語 | × | 〇 | △ | △ |
ウェルニッケ失語 | 〇 | × | △ | × |
伝導失語 | 〇 | 〇 | × | △ |
全失語 | × | × | × | × |
ちなみに、ブローカ失語とウェルニッケ失語では復唱が問題ない場合「超皮質性」という言葉が冠につきます。
(多分ここまで覚えなくておK)
心理系大学院や心理職を目指す人は、とにかくブローカ失語とウェルニッケ失語の損傷領域と特徴は本記事で抑えてください!(入れ替えた問題多いです)
片方覚えれば良さそう
おわりに:言葉は苦手になってもコミュニケーションは失われない
失語症は、脳(の言語野)が傷つくことでもともとあった言語機能が一部失われてしまう症状です。
できてたことがうまくいかなくなるのは怖いしストレス…!
本記事では有名な4種類を挙げましたが、特にブローカ失語とウェルニッケ失語は優先的な理解を推奨。
▼代表的な失語
・ブローカ失語
・ウェルニッケ失語
・伝導失語
・全失語
また、専門書ではないですが失語症のイメージを掴める本もあります。
\ 入門・初心者向け /
他の精神疾患よりも身近に感じづらい分、小難しい本を読むよりもまずは絵本感覚で失語症について知ってみる方がとっつきやすいかと思います。
Kindleの方が安いこともあるので、たくさん本を買う人はチェックしてみてください。
院生はまじ金欠
失語症になるとうまく話せない、理解できないもどかしさから言葉数は減りがちでコミュニケーションを控える人も出てきますが、コミュニケーションをしっかりとることがリハビリの一環になります(無理強いはせず専門家に頼るのも大切です)。
「変な人」という目では見ず、症状を知り理解に努めることが大切です。
病状理解は何でも第一歩だね
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