こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
子どもは一体、母親からどのように卒業していくのでしょうか。
A. いつまでもすねかじr
親と離れて友だちと遊んだりできるのは?って意味ィ!
今回は、乳幼児の自我の発達について、M. S. マーラーの分離-固体化理論をざっくり解説していきます。
✓子どもの心の発達が気になる
✓自我の芽生えに興味がある
✓分離-固体化理論って何?
✓人見知りっていつから始まるの?
マーラーの分離‐固体化理論は、心理系大学院受験生や専門職を目指す人でないとなかなか見聞きしない内容です。
心理や保育の関係者にとっては必要知識で試験にも使えるのでしっかりインプットしましょう。
そうでないパパママでも、理論を知ることで子どもの心の発達を楽しむ機会になるのでご覧ください。
難しい勉強回だけど知れば自分のためになるね
こんな人におすすめ!
・子どもの心の発達に興味がある人
・乳児の人見知りに関心がある人
・心理職や保育関係者
※心理系大学院受験生は必須!
M. S. マーラーの分離‐固体化理論(separation individuation theory)とは
M. S. マーラーの分離‐固体化理論とは母子を実際に観察して提唱した理論で、3歳頃までの乳幼児の精神発達の過程を指します。
S. フロイトの心理性的発達理論で言えば、口唇期~肛門期にあたる自我の発達についてです。
\ 全段階言える? /
小児科医のM. S. マーラーは母子の観察実験をして、乳児が母親(養育者)との一体感から少しずつ離れていく過程を分離-固体化期と呼んで4段階に分けています。
Ⅰ正常な自閉期(nomal autistic phase)
Ⅱ正常な共生期(nomal symbiotic phase)
Ⅲ分離-固体化期(separation-individuation phase)
①分化期
②練習期
③最接近期
④再固体化期
段階は3段階で、メインの「分離-固体化期」が4つに分かれています。
段階名が重要というより、その流れが重要だよ
おおまかな流れとしては、生まれて間もない乳児は母子の一体感を感じた共生状態から、その場に母親がいなくても耐えられるようになり、母親との関係を維持したまま母子分離ができるようになっていきます。
子どもが、自分の心の中で自己像と他者像(母親像)を分けて理解し、養育者(母親)と一緒にいなくても関係が保たれることを対象恒常性(object constancy)と言う
ママと離れてキッズが保育園・幼稚園に行っても、ママとの関係がちゃんと続いているってイメージ
「私の傍にずっといないと彼が浮気してるか不安!」は対象恒常性が形成できてない説
正常な自閉期(0~1ヶ月ほど)
正常な自閉期では、まだ自分と他人、自分と世界の区別がつかない状態と言われています。
欲求は、誰かに何かを思うような心理的なものより、お腹が空いた、眠いなどの生理的な欲求が優先されやすい時期です。
生後間もなくは「自」分の内に「閉」じこもっていても仕方ないね
生後の視力は弱いって言うしな
正常な共生期(2~5,6ヶ月)
正常な共生期になると、空腹や眠気は自分の内から、痛みや感触は外部の刺激からなど、自分の内側と外側(世界)を区別できるようになると言われています。
ただし、まだ自他の区別はつかず、自分の欲求を満たしてくれる母親に対して母子一体感を抱きます。
ママとニコイチで「共」に「生」きている錯覚をする時期だね
外の世界を意識し始めて、生後3ヶ月頃に微笑みを見せ始めることを3ヶ月微笑と言い、R. A. スピッツが提唱
親とか外の世界を分かって笑ってるんじゃなくて、ただ笑ってるだけ
分離-固体化期
分離‐固体化期では、乳児は母親に感じていた一体感から少しずつ分離・自立していく時期で、さらに4段階に分けられます。
人見知りとか分離不安がキーワードかも
①分化期(5~9ヶ月頃)
分化期は自他の区別がつくようになる時期です。
▼乳児の発達ポイント
・首が座り始める
・寝返りし始める
・ハイハイし始める
・手足を使って物を見たり掴んだりする
・「あー」「うー」などのクーイングから「バブバブ」などの喃語へ
乳児が成長して世界を知り始めることで、見慣れた養育者(母親)と見慣れないものがあることも知り始めます。
母親のことを認識すると人見知り反応が始まると言われています。
生後8ヶ月頃に、母親(見慣れた人)と違う人(見慣れない人)と出会い不安を感じることを8ヶ月不安(≒人見知り)と言い、R. A. スピッツが提唱
小さい子の人見知りっておかしなことじゃないんだね
②練習期(10~16ヶ月頃)
練習期には、つたい歩きができるようになるなど身体の発達も進みます。
母親をキャンプベースのように安全な場所と感じ(安全基地)、母親から少しずつ離れて現実世界を探索し始める時期です。
▼乳児の発達ポイント
・指さしの先を一緒に見るなど共同注意ができる
・歩き始める
・喃語(バブバブ)→初語(マンマ)へ
母親の近くを動き回って世界を知り、動き回り終えたら母親のもとに帰って甘えたり安心したりすることで、母親への依存も生じていくとか。
ママのもとに帰れば絶対安心の時期
\ 安全基地や子どもの発達 /
③最接近期(16~25ヶ月頃)
最接近期になると、自由に一人歩きできるようになり、母親が自分と別の存在とも認識できるようになります。
だいぶ人らしくなってきたな
が、物理的には離れられても心理的には母親=依存対象でまだ離れがたく、そのギャップで母親から離れることに不安を感じる時期です(分離不安)。
急にお母さんから離れてどこか行ったかと思いきや、お母さんがついてきてくれるか確認するとか
子ども的には、身体は成長してきているけれど母親との一体感を感じていた頃に戻りたい感覚や、母親から見捨てられたような感覚(見捨てられ不安)を覚えがち。
不安が強まる時期だからこそ(親も対応が大変な時期と思いますが)、子どもの不安や甘えを受け止めて関われる時間が大切と言えます。
④再固体化期(25~36ヶ月頃)
再固体化期では、同一人物の良い面・悪い面をまとめて認識できるようになったり、自他の区別がついたりする時期です。
「固体化の確立と情緒的対象恒常性が芽生える時期」という表記もちらほらあり
依存対象だった母親のイメージを、一緒にいなくても心の中で永続的に抱くことができるようになるので(対象恒常性)、母親から離れて他の子と遊べるようにもなります。
8ヶ月不安(人見知り)や見捨てられ不安、依存といった母親(養育者)へ向ける感情や2人の関係性を乗り越えることがテーマですね。
ただお世話するだけじゃなくて感情的な関わりもかなり重要なんだね
おわりに:身体の成長あっての心の成長!
M. S. マーラーの分離-固体化理論では、3歳頃までの子どもの心の発達を観察実験によって見出しています。
Ⅰ正常な自閉期(nomal autistic phase)
Ⅱ正常な共生期(nomal symbiotic phase)
Ⅲ分離-固体化期(separation-individuation phase)
①分化期
②練習期
③最接近期
④再固体化期
生後間もない乳児は、周りのお世話や自身の成長の中で母という安心感を自分の心の中にイメージとして持てるようになります。
対象恒常性獲得までの理論だね
心の発達だけに注目するのではなく、乳幼児の身体の発達もある程度覚えておくとイメージしやすい理論です!
\ 身体のことも知ろう /
子どもの発達特徴はめちゃくちゃたくさんあるので、まとまっている本を使って視覚的にインプットするのがおすすめ。
また、Kindle Unlimitedなら30日間無料で発達関連の本を読み漁ることができるので、気になる本があればお試し利用してみてください。
初語が1歳頃とかあくまで目安であって絶対ではないのを忘れずに!!
身体が成長しても、子どもの心はその成長に戸惑いがち。
人見知りや分離不安、見捨てられ不安などを乗り越えられるように、大人は子どもに関する知識をつけてあたたかく関わることも大切でしょう。
コメント
初めてコメントさせて頂きます。
私は現在30代で男の子2人の母です。
私自身、機能不全家庭で育ち心の問題とずっと向き合って生きてきました。2年前からカウンセリングを受けるようになり、回復していくにつれ徐々に心理学について学びを深めたいと考えるようになりました。
大学院への進学を考え始めた時に色々調べていてこのブログに辿り着きました。大学院の受験に関してや院生の生活等、知りたくてもなかなか知らない情報が書いてあったり、心理のことについても素人でもとても分かりやすい内容で年末年始の時間を使って過去記事まで遡り読ませて頂きました。このブログのおかげで、迷っていた大学院の受験に挑戦してみようと決意することができました!!かなり勉強にブランクがあるので受かるかどうかは分かりませんが、一歩踏み出す勇気を与えてもらい心から感謝しています。わたしも人の心に寄り添える心理士になれるよう頑張ります!!勇気と希望をありがとうございました。
キキさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
機能不全家庭で感じてきた気持ちと向き合い続けることは、すごくエネルギーのいる作業だと思います。心の問題を抱えながら家庭を築いて、子育てもされていることとても尊敬します。回復してきているようで何よりです。
大学院というと、学生を終えてしまうと更に情報収集が難しくイメージしづらいですよね。当ブログ内容が少しでも参考になっていればとても嬉しいです!過去記事は読みづらい部分もあったかもしれませんが、キキさんが決意するきっかけになれたこともとても嬉しく思います。
ブランクがあり、お子さんがいる中での受験決意は本当に勇気がいると思います。ですが、私が現役時代でも子育て中の主婦さんや仕事を辞めて大学院に集中した男性など、幅広い年齢層の方がいらっしゃいました。心理士になるのに年齢は関係ないですし、心理学の勉強を通して更に自己理解が深まることを願っています。また、大学院ですと社会人一般入試枠があるところもあります(語学なしで専門科目の論述と面接など、試験科目が少し減ります)。該当地域の大学院で社会人枠があれば是非ご活用ください(面接重視になると聞きました)。
キキさんの心身の健康を願っております!