こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
子どもの心の成長について、J. ピアジェの認知発達理論で詳しく解説しましたが、実はJ. ピアジェの理論に一部反証する心の理論という考え方があります。
心理学を少しでも学んだら聞いたことあるはず
✓自分の考えばかり優先してしまう
✓他人と考え方が違うことが多い
本記事では、上記に関係あるかもしれない心の理論について解説します。
心理系大学院を目指す人にとっては、座学でも現場でも必須知識なのでしっかり覚えましょう。
そうでない人にとっても、小さな子どもに対する自閉症などの発達障害の傾向を知る手掛かりになるため、役立つ知識になりますよ。
・心の理論についてよく分からない人
・人の視点を想像するのが苦手な人
・小さな子どもがいるパパママ
・養育や教育に関わる先生たち
※心理系大学院受験生は必須!
【復習】J. ピアジェの認知発達理論とは
J. ピアジェの認知発達理論では、子どもの心や認知の発達を4段階に分けています。
①感覚運動期(0~2歳頃)…食べる触るなど感覚を頼りに世界を知る
②前操作期(2~6歳頃)…言葉とイメージで世界を知る
③具体的操作期(6~12歳頃)…他者視点や論理的な思考が発達
④形式的操作期(12歳以降)…抽象的な考えも発達
第2段階の前操作期ではまだ自己中心性が目立ち、子どもは他人の立場で考えることができないと考えました。
キッズが「ぼくがぼくが!」って自己主張激しいのは仕方ないね
そして、第3段階の具体的操作期になると他者視点をもてるようになるという理論でした。
用語が曖昧な子羊は下記へGO
実は、この自他の視点の発達についてもう少し具体的に明らかにしたのが心の理論です。
心の理論(theory of mind)
心の理論は、自分と他人には異なる心の状態が独立してあることを理解する能力のことです。
私は私、他人には他人の考えがあるってこと!(ドヤァ!)
自分と他人の考え方が違うことが分かる心の理論は、4歳頃から獲得されると言われています。
6歳以降に獲得するとしたピアジェの理論とちょっと違うね
心の理論を確かめるには誤信念課題を行ってみるのが分かりやすいです。
誤信念課題(サリーとアンの課題)
誤信念課題はS. Barron-Cohenが開始した、心の理論を確認するための課題です。
① サリーが箱にビー玉を入れてどこかへ行く
② それを見ていたアンはビー玉を箱からカゴヘ移し替える
③ Q:サリーが帰ってきたら、箱とカゴのどっちを探すでしょう?
あなたも考えてみてね
この課題を見た3歳以前の子どもの多くは、「ビー玉が移されたこと」を知り、「サリーはビー玉が移されたことを知らない」と思い、「カゴを探す」と答えやすいです。
サリー視点と自分視点をまだ区別できないんだね
一方で、4~5歳の子どもは、「本当はビー玉はカゴにあるけれどサリーは箱を探す」と答える割合が多いのです。
個人差はあるけど、他人の立場を推測する力は意外と早く獲得するんだね
・他人には他人の心(考え)があると分かる(自他の区別がつく)
・他人の心を想像して、他人の行動の予測もできる
「自分と他人は別な心をもつ」ということは当たり前だと思っている人も多いかもしれませんが、心の理論の発達に遅れが見られる子どもは、「カゴを探す」などこの課題を見たままに答える傾向があります。
一連の流れを見て、「自分が知っているのだからサリー(他人)も知っているはず!」と自分中心に考えてしまうためと考えられています。
サリー「私は!見てない」
心の理論と発達障害(自閉症)
心の理論の獲得は発達障害(自閉症)と関係があるという意見があります。
4~5歳頃の子どもは誤信念課題をクリアできる子が多い一方で、発達障害(自閉症)の子どもはクリアできない子が多く、他者視点の欠如があると指摘されています。
社交性の障害に関連ありそうだね
相手の立場を推測できない特徴が際立つと、コミュニケーションでの困り感につながりやすいです。
✓相手の考えを理解できない
✓人の話を聞けず自分語りばかりしてしまう
✓相手の気持ちを察することができない(悲しそうだななど)
人の心なんて分からんけど、思いやることはできるはず
心の理論の遅れへの対応
3歳未満の子どもなど、相手を思いやることや相手の立場で物事を考えられない人は、心の理論の遅れが考えられます。
まだ自他の境界線が曖昧な子どもに「○○ちゃんが嫌がることしちゃだめだよ」のように注意してもピンとこないですね。
相手が嫌がっているかも読み取れないかもしれない
大人への指示もね
社会人になると「自分で考えるのが常識」と考える人もいます。
それを否定するわけではありませんが、「指示が分からない」「相手の気持ちが分からない」と言って社会に出てからコミュニケーションに違和感を感じてつまづく人もまたいます。
どうしてもやりとりに困る人が周りにいれば、とにかく具体的に関わってみましょう。
相手の立場を考えられない当事者自身も医療機関などでカウンセリングや、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を受けるなど工夫が大切です。
お互いの歩み寄りもコミュニケーション。配慮と工夫はどちらも大切だよ
(苦手だから配慮しろって開き直るパターンは個人的には好きじゃない)
また、発達障害(自閉症)の場合は心の理論の遅れのほかに強いこだわりなどの特徴もあります。
人との関わり方にルールを作ってみるのも1つの対応です。
おわりに:自分と他人の心は違うことを再認識しよう
心の理論は、自分と他人の心はそれぞれ違うんだと理解する力で、4~5歳頃に獲得すると言われています。
心の理論は未獲得でもコミュニケーション自体は可能です。
ただし、相手の心を思いやれずにトラブルが生じやすくなる可能性があります。
アニメやマンガを見ながらキャラクターの心情が分からない場合が多ければ、心の理論に遅れがあるかもしれません。
なかなか他人の立場で考えられない人は、円滑なコミュニケーションのためにも具体的な指示をもらったり、「○○な場合は謝る」などのコミュニケーションのパターンを決めたり、工夫と配慮を整えてみてください。
他人の立場で考え、他人を思いやることが円滑なコミュニケーションには重要な要素ですよ。
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