こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理学を学び、卒論や修論を書く上で避けては通れない心理統計。
【悲報】文系の敵
✓t検定と分散分析何ソレ?
✓そもそもどの統計を使えばいいか分からない
✓統計以前に数字が苦手
心理統計に苦手意識がある人は、まず統計の内容を知らないことが多いです。
心理統計の中でも超代表的なt検定や分散分析も、それがどんな統計かを知らないと適切な統計を使うことができません!
本記事では、心理系の卒論や修論で最も使われやすいt検定と分散分析の特徴や違いを分かりやすく解説します。
自分の卒論や修論にどんな統計が使えるかを知り、心理統計への苦手意識を減らしましょう。
心理系大学院受験生にとって、心理統計は英語と同じくライバルと差がつくポイントなのでしっかり押さえておきましょう。
実際のやり方の解説ではなく、あくまで抑えるべきポイントの解説です
統計内容にもよりますが、計算ツールは下記の通り。
✓Excel
✓無料統計ソフトjs STAR
✓有料統計ソフトSPSS
✓無料統計ソフトR(難易度高め)など
本の通り見ながら進めるだけなので、気になる人は読んでみてください。
こんな人におすすめ!
・心理統計が苦手or嫌いな人
・数字アレルギーな文系
・t検定と分散分析の意味が分からない人
※心理系大学院受験生は必須!
平均値の差を比べたいならt検定と分散分析
心理系の卒論では何かしらのグループ間の比較検討があるあるです。
・男女差
・自己肯定感とかの高群と低群
・高校生と大学生 など
日常で言えば、t検定なら治験の効果を調べたり、アンケート調査の意味を調べたりする際にも使われるほどメジャーな存在です。
今回紹介するt検定と分散分析は「平均値の差に意味があるか」を比較する検定だということを覚えて使いましょう!
極論、これさえ押さえれば良し!
もう少しかみ砕いて解説していくので、各統計について知って適切に使えるようにしましょう。
t検定(t-test)とは
t検定とは、2群の平均値の差に有意差があるのか、それとも誤差の範囲なのかを判定する統計の仮説検定です。
▼例
ある学校の英語のテストの結果は、文系の平均は70点、理系の平均は65点だった。
この例で、「文系の方が英語が得意」と言えるのか、それともたまたま文系の方が平均が高かっただけなのか。
ただ平均の結果を見るだけでは真偽は分からないので、白黒つけるために行うのがt検定です。
偶然かそうじゃないかを調べる検定だよ
仮説検定の考え方が分からない人・復習したい人はこちらを参考にどうぞ。
t検定の考え方では、平均値間に意味のある差はないとするのが出発点です。
例で言えば、本当は平均値間に有意な差を見出して「文系の方が英語が得意」と言いたいけれど、まずはこの結果がただの偶然であることを証明しようとします。
ややこしいから統計嫌いになるんだよ…
何かが「ある」という証明は難しいから遠回りするのだ
t検定の流れはこんな感じ。
①帰無仮説を立てる
(例:文理の平均点に差はない。5点差は誤差)
対立仮説も用意
(例:文理の平均点に差はある。5点は有意な差)
②有意水準(帰無仮説を捨てて良い基準)を決める
※有意水準=5%が多い
③統計にてt値とp値を出す
※統計ソフトですぐ出ます
④p値と有意水準を比較
p<有意水準で帰無仮説を棄却=文理に差あり
t値…t検定の計算で出る値。データに有意な差があるかどうかを見る。
p値…得られたデータの珍しさ。帰無仮説が生じる確率。
有意水準5%とp値を見比べればOK!
p>有意水準の場合は帰無仮説を捨てられないだけで、帰無仮説の採用ではない(例:文理の平均差は誤差!とは言い切れない)ことも覚えておきましょう。
t検定は、帰無仮説を捨てられるか捨てられないか決めるだけね
p値が有意水準より高いと「平均間の差に意味があるかないか分からない」というのが厳密な結果に。
だからみんな有意差が大好き
▼表記について
・桁は3~4桁で四捨五入することが多い
・t検定の結果例:(t (10) =2.67, p=.004<.05)
↑※t(自由度)=t値…という順(自由度はまた)
・有意差なしはnsと表記
他にも細かいことは沢山ありますが、まずは2群の平均間の差を調べることを理解しましょう。
分散分析(ANOVA:analysis of variance)とは
分散分析とは、3群以上の平均値の差が有意であるか、それとも誤差の範囲かを判定する統計の仮説検定です。
▼例
ある学校の英語のテストの平均は、文系(私立組)は60点、文系(私立公立混合組)は55点、文系(国立組)は65点だった。
点差がたまたまなのか、明らかに差があるのかは調べてみないと分からないよ
▼用語の補足
文系(私立組・私立公立混合組・国立組)の分散分析の場合
文系…要因(データに変化を与えるもの)
()内の3群…水準(要因を細かく分けたもの)
平均間の差を見る点で、考え方はt検定と同じです。
ただし、仮説を立ててみるとt検定のようにはいかないので注意。
▼例
・帰無仮説…どの組にも差はない
・対立仮説…3組のどこかに差がある
分散分析では3群以上の平均間を比べるので、有意差が認められてもどこに有意な差があるのか分かりません。
分散分析はまず各グループ間に有意差があるか否かをみるのだ
分散分析で結果を見る場合は、その後に多重比較という検定を行い、3群間のどこに有意な差があるかを特定するまでがセットになります。
多重比較
…各平均間の差を詳細に比較する検定。
テューキー法(Tukey)が有名。
他にBonferroni法、Fisher法、Scheffe法など。
多重比較は、分散分析で有意差が出なかったら(帰無仮説を棄却できなかったら)、行っても平均間の有意差を見れないので注意。
おわりに:平均比較の群数で見分けよう
t検定も分散分析(+多重比較)も、どちらも平均間の比較を行う統計手法で、心理学の研究ではよく使われる統計です。
2群の比較…t検定
3群以上の比較…分散分析
どちらもパラメトリック検定(母集団が正規分布するとか)他にも大切なことはあるけどまたそのうち
卒論や修論では男女差や何かの低群・中群・高群を求めることは多いです。
「何の統計を使えばいいか分からない」事態を避けるためにも、平均比較はt検定or分散分析と覚えておきましょう。
参考資料
ちなみに、心理統計の本ではないですが統計の基礎を抑えるうえでのおすすめがこちら。
ふつー-に良書だった!
心理統計には寄っていないものの平均の話や分散分析の話もしっかり載っているので、本記事に関する内容を深めることが可能です。
さらにノンパラメトリック検定の話もあるので基礎は本当に抑えやすいかと…!
心理統計の本を探すなら、Kindle Unlimitedなら30日無料で利用できるので試し読んで気に入った本を購入してみても良いかも。
論文・院試ファイト!
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