こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
学校、家庭、職場などで人間関係や理不尽な出来事で心が傷つくことが多い今、困難への抵抗力や立ち直る回復力の獲得が注目されています。
✓いじめに遭った人はみんな心が病んだままなの?
✓パワハラ受けても立ち直れる人って一体どんな人間?
✓トラウマ体験を引きずる人と引きずらない人の違いは何?
たとえば、内容は違えど「いじめ」という似たようなストレスフルな体験をしたとしても、心の傷つきから回復しやすい人や社会に適応しやすい人とそうではない人がいます。
「ストレスフル=立ち直れない」ではないよね
今回は、「レジリエンス」という心の抵抗力についてざっくり解説するので、上記疑問が気になる人は最後までご覧ください。
また、心理系大学院の院試出題もちらほら増えているので、受験生は必ず目を通しましょう。
こんな人におすすめ!
・人の心に興味がある人
・過去に傷つく体験やトラウマな出来事を体験した人
・心の抵抗力を高めたい人
※心理系大学院受験生は必須
レジリエンスとは
レジリエンス(resilience)とは、心の回復力を指す概念で、ストレスフルな状況や逆境に直面した際に立ち直ろうとする適応的な力を指します。
定義としては「深刻な危険性にもかかわらず、適応的な機能を維持しようとする現象」で、イギリスの心理学者M. ラターによって提唱されました。
しなやかに曲がっても元に戻る竹のような!
押してもすぐに戻る若者の肌のような弾力のイメージ
ストレス耐性と似たイメージですが、ストレス耐性はストレスに耐えうる器の大きさのイメージ、レジリエンスはストレスを受けて凹んだ(ダメージを受けた)心が立ち直っていく力のイメージがより近いと思います。
「打たれ強さ」が一番近い言葉かも
ストレスに関してもう少し専門的に知りたい人はこちらもチェック!
レジリエンスが高い人の場合、いじめやハラスメント、家庭での嫌な体験などストレスフルな状況や逆境に対して耐えつつ、適応的に生活していける心の回復力や抵抗力をもっていると考えられます。
▼レジリエンスが高いと…
・いじめやハラスメント、ストレスフルな状況に直面してもなんとかやっていける
・嫌な人をのらりくらりと躱したり、対応できる
・心の不調を回避しやすく、心の健康を保てる
・打たれ強く、勉強や仕事の成績が向上する
・前向きな過ごし方ができる など
反対に、レジリエンスが低い人の場合は打たれ弱く、ストレスフルな状況や逆境が心の傷となりやすい傾向があります。
トラウマを抱えたり、自信がなくなったり、自己否定的になったり…心の健康を保つのが難しいかもしれません。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)につながりやすいみたい…
\ 心理士目指すなら必須 /
もちろん個人の性格もありますが、困難を乗り越えられる特徴の1つとしてレジリエンスの高低があるので、レジリエンスを高めることが大切です。
「どうせ自分はレジリエンス低群」「高めるなんて無理」そう思った人ほどスクロール必須な
風邪に対する免疫(回復力・抵抗力)を高めるのと一緒だよ!
無理と思い込むことは何もできんからな!
レジリエンスを構成する要素
レジリエンスの考え方自体が新しめな概念であり、構成要素は諸説あります。
遺伝した特性やへこたれない性格など元々レジリエンスが高い要素をもつ人もいますが、レジリエンスは後天的に高めていくことが可能です。
M. ラターの調査では精神疾患になる「リスク因子」と病気から身を守る「防御因子」を見出しており、「防御因子」としてはリスクを減らすこと、負の連鎖を減らしてポジティブな機会を増やすこと、自尊心を高めることなどがあります。
ちなみに「リスク因子」には家族関係の悪さがあり
諸説ある中でレジリエンスを構成する要素の一例はこちら。
✓良い人間関係を築く
✓ストレスフルな状況や出来事を大きな問題と捉えない
✓状況を受け入れる
✓現実的な目標を立てて行動する
✓苦しい場面でも行動する
✓良くない行動の結果にも発見を見出す
✓自信をもつようにする
✓長い目で見る力をもつ
✓希望を見出す
✓自分に注意を向け、心身を大切にする
決して「元からできない」ことではないので、1つでも試してレジリエンスを高めていきましょう。
良い人間関係を築く
人間関係は社会生活を送るうえでストレスを感じやすく、必要な関係でもあります。
良い関係を築くことで何より自分が気分よく過ごせますし、困ったときに相談できるメリットもあります。
人への相談は立派なストレス対処方法だよ!
「自分は一人じゃない」「話を聞いてくれて安心する」など、自分が思う以上に人間関係には支えられます。
人数は何人でも良いので、まずは良い関係を築けるように自分から人に気を許してみましょう。
筆者あるある『閉じこもっているうちは人間関係が乏しい』
ぐさぁ
ストレスフルな状況や出来事を大きな問題と捉えない
いじめ被害やハラスメント、DV、虐待を受けたり、家族や友人関係がとても悪かったりすると悲観してしまいますね…。
ただ、「もう無理」「一大事すぎて人生終わり…」のように大げさに捉えないことも大切です。
人によっては絶望的なことかもしれませんが「なんとかなる」とも考えてみましょう。
「もうまぢ無理。。」が口癖の人はそこから変えたいね
「クラスが変われば、進学すればいじめは終わるかも」「毒親から離れて1人暮らしすれば落ち着くかも」と、危機は乗り越えられるものだと捉えられると心は楽になるかもしれませんね。
どうにもつらいことはあるし、苦しさ自体は1人で抱えず誰かに吐き出してね
状況を受け入れる
困難な出来事を大げさに捉える訳ではなく、客観的に受け入れることで気が楽になることもあります。
変わらない・変えられないことにエネルギーを向け続けるのも心が疲れてしまいます…。
適度に開き直るのも建設的意見!
現実的な目標を立てて行動する
いじめやハラスメントなどのストレスフルな状況や出来事はどうしても悲観的になりますが、「いじめっ子のいない大学に行って友だちとサークルを楽しむんだ」「異動・転職してまた快適に仕事するんだ」など掲げた目標に向かって行動してみましょう。
目標に向かうことで今の苦しさを少し軽減することもできますし、前向きな気持ちにもなれますね。
つらさから逃れるための策を考えるか「つらい…」と言い続けるか…!
「現実的な目標」もミソで、行動のしやすさは目標設定にもかかってきます。
努力も一切なしに「名門校行って弁護士なってカネと女でウハウハしてやる」とかどーすんのよこれ
苦しい場面でも行動する
時間経過でも問題が解決することはありますが、諦めずに行動することで活路が見いだせることは多いですね…!
ストレス体験に行動できず耐えることを選んだ筆者は何も言えないけど、行動できない気持ちも分かる
必ずしも問題に向き合う行動ではなく、趣味を楽しむなど気持ちを落ち着かせる行動も大切ですよ。
\ 何かすることに意味がある /
立ち直るコツは現実を適度に無視すること(現実逃避ともいう)
Amazon Music Unlimitedのようなサブスクで音楽を楽しむのも何でもあり!
良くない行動の結果にも発見を見出す
「いじめられた」「虐待された」「パワハラを受けた」など、思い返せばストレスフルで恨めしい、悲しい出来事かもしれませんが、意味を見出すことで気持ちを整理することもできます。
「あの時の体験があったから今こうだ」ってやつね
「人生の汚点だ…」「最低なトラウマだ…」と認識し続けるよりも心は保たれますよ。
自信をもつようにする
「これができたら苦労しない!」という声が聞こえてきそうですが、「自分なんて…」と思うときは心の傷は癒えていかないでしょう…。
なんとなくでいいので、「危機を乗り切れるかもしれない」と自分を肯定してみましょう。
なんとなくが大事!
長い目で見る力をもつ
ストレスフルな状況や出来事をピンポイントで捉えるのではなく、先を見据えるように意識することです。
いじめやパワハラを受けたのであれば、やられたこと以外に「どんな状況でやられたか」「どんなきっかけでやられたか」など広い範囲で見ることで、傷ついた心の回復力は育つと言えます。
辛い体験ピンポイントに捉われるとダメージは残りやすいね…
希望を見出す
ぼちぼち楽観視も推奨
自分に注意を向け、心身を大切にする
自身の心の回復力を育てるには、心身を大切にしましょう。
自分の欲求や気持ちを無視してしまうと、心と身体に矛盾が生じる可能性があります。
また、つらさや疲れを感じているときはきちんとケアすることで、前を向く余裕も生まれやすくなります。
風邪への免疫を作る前に土台の身体を整えるイメージ
おわりに:レジリエンスを高めてストレス社会をのらりくらりと生きよう!
レジリエンスは、ストレスフルな状況や逆境に直面したときに立ち直ろうとする心の回復力を指す概念です。
現代社会は人間関係に敏感になっており、うつ病や発達障害などの精神疾患も広まりつつあり、傷つく体験が多いと言えます。
レジリエンスを高め、心の回復力や抵抗力をもつことで、心にダメージを受ける体験をしても立ち直っていくことができます。
レジリエンスは、いじめやハラスメントなどで「ダメージを受けないこと」ではなく、ダメージを受けながらも前を向く力というイメージです
本記事ではレジリエンスを構成する要素を10個紹介しましたが、全部ではなく1、2個意識するだけでもレジリエンスは高まると思います。
まずはどれか1つから試してみよう
なお、困難があっても「無理して」適応的に立ち直る必要はありません。
悲しさやショック、苛立ちなど感じたことは第三者に吐き出したり発散することも重要なのは覚えておきましょう。
心の傷として引きずらなければきっとOK
何かあれば吐き出そうね!
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