こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理士というとカウンセリングの印象が強いですが、心理検査を用いて人の心の状態や強み・弱みなどを測るのも大切な役割です!
✓心理検査で病理が分かるの?
✓どんな種類があるの?
✓良い面も教えてもらえるの?
今回は、心理検査の種類や長所・短所についてざっくり解説します。
個々の特徴を押さえるのも勿論大切ですが、検査を扱うには概要の理解も必須です。
心理職を目指す人は、検査の組み合わせや限界、被験者への負担などをしっかり学んで使えるようになりましょう。
そうでなく興味のある人は、心理検査にどんな種類があるのか参考にご覧ください。
ネット上の心理テスト≠心理検査だよ
こんな人におすすめ!
・心理検査について全然知らない人
・心理検査の長所と短所を理解したい人
・テストバッテリー何それ?な人
※心理系大学院受験生は必須!
※臨床心理士・公認心理師資格試験受験生も必須!
本記事では具体的な心理検査の用紙やツールの開示はありません。検査用紙やツールがネット上で公開されたりフリマで出品されたりしますが、そのほとんどはガイドライン違反です。ググったり取引はご遠慮ください…
心理検査の概要と種類
心理検査とは、人の性格や知能、発達レベルや精神状態などを客観的に測る検査です。
被検者の心の状態を理解したり、治療の関係性を作るきっかけとなったり、困り事を改善するための足掛かりとなったりなど目的は様々。
診断補助として精神症状の傾向を見ることもあるが、心理士には診断はできないぞ!!!
ものによっては以下のように対象が分かれるため、被検者の基本情報を知るところから検査は始まります。
・〇歳~□歳××ヶ月まで
・幼児用 / 成人用
・〇歳以上~ など
また、たとえば「長谷川式認知症スケール(HDS-R)は認知症に関した検査」など1つの心理検査では被検者の1側面しかわかりません。
そのため、複数の心理検査を組み合わせて被検者を多面的に理解することが多いです。
↑テストバッテリーと言います
…と簡単に書きましたが、実際にテストバッテリーを考えるには心理検査の概要を知る必要があります。
検査についてよく分からないまま組み合わせてしまうと、ただ被検者を疲れさせてしまったり(勿論テスター側も疲れる)、心を脅かしてしまったり、知りたいことを知れなかったりなど非効率的に…。
疲労感によって心理検査の結果が影響されることもある
最低限、心理検査の概要を知り、被検者の状態や検査目的を考慮しつつテストバッテリーを組んで実施するのが望ましいですね。
実際に検査を扱えるかどうかはともかく特徴は知るべし
主に、人格に関する心理検査の種類は大きく以下の3つに分けられます。
なお、代表的な知能検査はこちら。
それぞれ特徴や長所・短所を覚えておきましょう!
質問紙法
質問紙法は、事前に用意された質問に対して「はい-いいえ」や「当てはまる-当てはまらない」など回答してもらうことで性格特徴などを知る方法です。
アンケートね
自分で振り返って記入する自己評定式と、小さい子など振り返りが難しい人の代わりに親が記入するような他者評定式があります。
質問紙のメリット・デメリットはこんな感じ。
〇メリット
・実施や採点が簡単
・統計的な(客観的な)処理が可能
・集団への実施も可能
質問が決まっているためテスターが未熟でもやりやすく、採点方法がマニュアル化しているため結果も出しやすいのは嬉しいですね。
一度に多くのデータを取ることもできるので、卒論・修論では御用達に。
お手軽!
△デメリット
・被検者の言語能力に依存する
・質問以上(無意識)は分からない
・回答が歪みやすい
・回答の意図まで確認できない
ただし、字が読めなかったり質問の意味を正しく理解できなかったりすると、きちんと回答できません…。
他にも、被検者が自覚できていないこと(無意識の側面)を回答してもらうのも難しいです。
また、自分を良く見せようとしたり(社会的望ましさ)、症状のひどさを誇張したり嘘ついたりなど、回答が歪む可能性も高いです。
妥当性に難あり
▼代表的な質問紙法
・MMPI(ミネソタ多面式人格目録)
・YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)
・MPI(モーズレイ性格検査)
・TEG(東大式エゴグラム)
・SDS(自己評価式抑うつ性尺度)
・MAS(顕在性不安検査)など
MMPIは妥当性尺度を含んでいて、日本語版MPI・MASには回答の歪みをチェックする虚偽尺度あり
MMPIは550問ほどあって質問紙法とはいえかなり時間も体力も要るとか、SDSは20問ほどで気楽に行えるとか、そういう特徴もまた知っておきましょう。
座学<実践で覚える方が絶対いいぞ
\ 妥当性理解してる? /
https://saikolodsm.com/reliability-and-validity/
投影法
投影法は、あいまいで抽象的な刺激を提示して自由に反応してもらい、その反応に投影された心の状態や性格特徴などを把握しようとする方法です。
テスターの腕が一気に問われるゥ
\ 投影は説明できる? /
https://saikolodsm.com/defense-mechanism/
絵を見たり文章を書いたりするものが多く、子どもや言葉でのやり取りが難しい人に使いやすい描画法(絵や線を書いてもらってそこから性格特徴などを分析する方法)も投影法の一種です。
投影法のメリット・デメリットはこんな感じ。
〇メリット
・反応が歪みにくい
・無意識が反映されやすく理解を深めやすい
・検査の実施自体が治療的な意味をもつことがある
投影法は曖昧な検査なため「この検査でどんなことが分かるの?」という疑問が生じやすく、被検者の意図的な誇張や虚偽を防ぎやすい特徴があります。
検査前は事前に検査の説明をしっかり行って同意も得るように!
無意識まで分析できるかもって、される側からすれば怖いね
△デメリット
・時間がかかり、反応の自由度が高く負担がかかりやすい
・分析するにはテスターの技量が問われる(分析ムズイ!)
・統計要素が少なく、解釈が主観によりやすい
・集団実施は難しい
デメリットとしては「何を求められるの?」という不安や時間の長さ(40分~1時間など)、不安や恐怖を煽りうる抽象的な刺激など、とにかく被検者への負担が大きい…。
MP削れるイメージ
また、解釈の理論的根拠があいまいで、テスターの主観が強くなりやすいともいえます…。
職人技っぽいね
▼代表的な投影法(描画法)
・ロールシャッハテスト
・P-Fスタディ(絵画欲求不満テスト)
・SCT(文章完成法)
・TAT(主題統覚検査)
・バウムテスト
・風景構成法
・HTP(ハウス・ツリー・パーソンテスト)など
投影法は正直どれも難しいですが、現場ではやれて当然かのように求められるため、心理士なら扱えるように勉強しましょう!
「カウンセリングだけします」は厳しいよ
作業検査法
作業検査法は、簡単な作業をさせてその結果や作業経過から性格特徴などを測定する方法です。
知能検査も軽作業あるけど別枠かな
作業検査法のメリット・デメリットはこんな感じ。
〇メリット
・言葉のやり取りが難しくても実施可能
・集団実施可能
・結果の整理がしやすい
・回答の歪みが生じにくい
心理療法やほかの心理検査の多くは言葉に依存する一方で、作業検査法は言葉が苦手でも使いやすいのが特徴的。
就活試験でもたまにあり
△デメリット
・得られる情報が多くない
・単純作業で飽きやすい / 苦痛に感じやすい
・解釈は主観的になりやすい
一方で、延々と単調な作業を強いられるため、疲れややる気の低下が生じやすく、検査結果に反映されやすいデメリットが目立ちます。
やる気ないとバレる
▼代表的な作業検査法
・内田クレペリン精神作業検査
・ベンダー・ゲシュタルトテスト
作業検査法は単体で実施するよりも他の検査と組み合わせて実施するのが多い印象ですね。
【番外】検査に必要なこと
どの検査をするにも、一番の目的はその人の理解を深めたり治療につなげたりすることであって、被検者の負担をやみくもに増やして良い訳ではありません。
検査に向けて、テスター側は以下のようなことを気をつけましょう。
✓検査のやり方はしっかり勉強してスムーズに行う努力をしよう
✓インフォームド・コンセント(事前説明と同意)はしっかりと
✓検査の目的を被検者と話し合おう
✓検査所見は症状的なことばかりでなく、良い面も伝えよう
被検者の負担を減らし、検査結果が被検者の利益になるようにフィードバックすることも心理士の大切な役目です。
人としての配慮も持とうね
検査の数値だけを見て判断していくような検査マシーンにはならないように…!
おわりに:人に使うものはまず自分が理解しよう
心理検査は、心理士が人の心を多面的に理解したり、困っている人の手助けに活用したりする上では非常に重要なツールです。
主な種類は以下の通り。
本記事で挙げた代表的な検査以外にも多くの心理検査があり、どれも勉強や練習は必須です。
本当に日々研鑽!
テストバッテリーを組む参考として、各心理検査の違いはこんな感じ。
項目 | 質問紙法 | 投影法 | 作業検査法 |
所要時間(負担) | 短め(軽め) | 長め(重め) | 長め(重め) |
実施スタイル | 個人~集団 | 個人が主 | 個人~集団 |
分析の幅 | 意識レベルが主 | 無意識レベルまで | 前意識レベル |
回答の歪み | 歪みやすい | 歪みにくい | 疲れが影響しやすい |
テスターの練度 | 標準化〇 実施も採点も容易 | 標準化△ 実施も分析も要勉強 | 標準化△ 実施はしやすく分析は要勉強 |
正直、学生・院生時代に心理検査をマスターするには場数が足りなさすぎると思いますが、まずは各検査の概要を覚えて「患者負担が少なく、知りたいことを検討できる組み合わせ」を考えるようにしましょう。
筆者も未だ勉強中ゥ
「検査分からんけど楽しい(白目)」by筆者
心理検査の概要についてもう少し勉強したい人は、こんな本があるので参考にどうぞ。
\ 解釈例アリ /
紹介されている心理検査の種類は多くないですが、質問紙法・投影法(描画法)・作業検査法の代表的な検査を例に挙げて、実践~解釈例まであるので比較的分かりやすいかと。
あとは実践しながら覚えてくべし!
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