こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
大怪我や身体が危険な状況のときは入院治療をするように、心の不調でも入院することはあります。
大学院進学の入院ではなくね!
✓心の病気でも入院するの?
✓精神的な入院のイメージがつかない
✓一般の入院と違うって本当?
✓入院って任意じゃないの?!
今回は、精神科での入院の4形態をざっくり解説します。
任意以外もあります
心理職を目指す人たちは、臨床心理士や公認心理師の資格試験で出題される可能性が高いため、しっかり覚えておきましょう(院試ではあまり問われないかも)。
そうでない人は、心の不調での入院について知るきっかけになれば幸いです。
何も知らずに入院…となるとそれなりに驚くかもしれません…!
こんな人におすすめ!
・メンタル系の入院に関心がある人
・心理職を目指している人
・心の不調を感じやすい人
・身近でメンタル不安定な人がいる
・精神保健福祉士など関連資格受験生
※臨床心理士・公認心理師の資格試験の受験生は必須!
心の不調の入院とは
基本的に、心の不調により日常生活に支障をきたすときは精神科の入院が選択肢になります。
外来であればメンタルクリニックもありますが、メンタルクリニックでは入院設備がないことが多いので、精神科の病院へ紹介(転院)となるかと思います。
Q:どんな場合に入院を検討するの?
パニック障害やうつ病、パーソナリティ障害、統合失調症など、精神的な病気で日常生活に支障が出る場合に検討します。
・食事や睡眠が全くとれない
・死にたい気持ちが強くてリスカや自殺未遂を図ってしまう
・幻覚や妄想など精神症状で苦しい
・気分の波などで明らかに苦しんでいるが病気の自覚がない
・不安や興奮などで落ち着かず他人に危害を加えてしまう など
心に不調を感じる本人が入院を考えることも、家族や身近な人が入院(させること)を検討するパターンもあります。
4種の入院形態
心の不調での入院形態は、主に以下の4つがあります。
①任意入院
②医療保護入院
③措置入院(緊急措置入院)
④応急入院
基本的に、②~④の入院は本人の同意なしに行える、いわゆる強制入院です。
強制あり?!
患者の人権尊重を超えた行為になってしまうためもちろん乱用はご法度ですし、可能な限り期間は短くする方が望ましいです。
が、本人(や周り)の命や安全、将来などを守り、治療のために適応されることがあります。
入院に関する告知義務や十分な説明はしっかり行いますが、強制となると患者本人としては意思に反する行為なので、不満でいっぱいですね…。
精神科での入院は一部特殊だが、患者による「この入院はおかしい!どうにかしたい!」という権利は守られており、「処遇改善請求」「退院請求」が可能。不当な入院となっている場合は改善されるぞ。手紙の送受なども守られている。
医療従事者はこの旨しっかり理解しておこうな
精神科の強行的な入院には、精神保健指定医や特定医師(どちらも精神科に特化した医師)の診察で行われます。
▼精神保健指定医と特定医師
✓精神保健指定医は、「精神科3年以上を含む5年以上の診断・臨床経験を有し」「特定の8症例のレポート提出」などが認められたら取得できる国家資格
✓特定医師は、「精神科2年を含む4年の診断・臨床経験」が必要で、精神保健指定医が複数名在籍する特定の病院に勤めると認められる
指定医の方が責任重大なイメージ
①任意入院
任意入院は、患者本人に入院の意思があってできる入院です。
いわゆる普通の入院
精神的に疲弊して困っていることを自分で理解し、入院の判断ができる人が該当します。
精神保健指定医(精神科の専門医)による判断も特に必要なし。
任意なので、基本的には自己判断で退院も可能です。
状態悪くても任意なら退院できるの?
ただし、任意入院でも明らかに状態が悪くて治療の継続が必要だろうと判断される場合は、後述する医療保護入院に切り替わることもあります。
?!
決して意地悪ではない…
即退院ではなくて入院治療が必要だと判断された場合は、退院制限といって72時間は退院を止めることができます…。
②医療保護入院
医療保護入院は、本人の同意がなくても精神保健指定医から「医療及び保護のために入院が必要」と判断された場合、家族等が同意するとできる入院です(特定医師の診察なら入院は12時間)。
さらっとすごいこと書いてある
「家族等」とは、精神保健福祉法で以下のように定められています。
・配偶者
・親権者(親など)
・扶養義務者
・後見人or保佐人
※誰もいなければ市町村長
「本人の同意なし」という字面は恐ろしい印象がありますが、妄想や自傷他害などの症状で自分も周りも困るのに「自分はおかしくない!」と言うなど、病識が欠如している場合が多いです…。
③措置入院
措置入院は、自傷他害の恐れがあり、2名以上の精神保健指定医から入院が必要と判断された場合に、都道府県知事の権限でできる入院です。
【妄想】悪の組織に追われてる!倒さなきゃ(他人にケガ)!引き籠らなきゃ!監視されてる!もう死んだ方がマシ(リスカ)!私は正常!
これは果たして正常なのか?
措置入院も本人の同意はなしで行えます…。
流れとしては、警察が自傷他害の恐れのある人を発見→都道府県知事に報告→要診察なら指定医へという感じが多め
自傷他害の恐れがないと判断されるまで入院は継続で、基本的には公費での医療になります。
緊急措置入院
措置入院をしたくても正規の手続きが取れない場合は、緊急措置入院といって精神保健指定医1名&都道府県知事の権限でも入院ができます。
ただし、緊急措置入院は72時間以内という時間制限があります。
3日以内に措置入院に切り替わるパターンが多めです。
④応急入院
応急入院は、自傷他害の恐れがあるなど精神症状が深刻で急を要するものの他の入院形態がとれないときにできる入院です。
制約は多いよ
応急入院は、精神保健指定医の診察なら72時間、特定医師の診察の場合は12時間の制限時間あり。
本人や家族等の同意、都道府県知事の決定など誰の同意も要りませんが、保護者と連絡が取れないなど身元不明の場合に限ります。
また、どこの病院でも入院できるわけではなく、応急入院指定の病院のみに限ります。
おわりに:心の入院は人の命や安全を守る一手段
心の病気は、身体のケガや病気と違って目には見えにくく自覚もしづらいですが、身体同様に症状が深刻な場合は入院治療も選択肢の1つです。
入院の場合は基本的に精神科の病院を利用することになり、入院形態はざっくり以下の通り。
入院形態 | 同意 | 特徴 |
任意入院 | 本人 | 原則自由退院 病識に欠け状態不良の場合は医療保護へ切り替わることあり |
医療保護入院 | 家族等 | 特定医師の診察時は12時間の制限あり |
措置入院 (緊急措置入院) | 2名以上の指定医+都道府県知事 (指定医1名+都道府県知事) | 自傷他害の恐れあり 緊急措置は72時間の制限あり |
応急入院 | 同意不要 | 指定医の診察は72時間、特定医師の診察は12時間の制限あり 応急入院指定の病院でのみ可 |
イメージとしては下にいくほど制限が多くなります(命や安全を守り治療するのが目的。強制的な入院は医療側も制限↑↑)。
任意入院以外は本人の同意不要…!
本人の同意なしというより、精神的な病気は深刻であるほど自分が病気だという感覚が薄くなってしまう傾向があり(病識欠如)、治療する判断ができない状態とも言えます…。
だからといって本人の意思を無視して良い訳でもないんだがな!
心理職やほかの医療従事者を目指す人は、現場でも資格試験でも問われる必須内容なのでしっかり覚えておきましょう!
メンタルの不調をひどく感じては生活に支障を感じる人、身近にそういった人がいる場合は、精神系でも入院があり、治療や安心・安全のための選択肢となりうることを知っておいてください。
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