こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
昨今、小中学生の子どもに対して「学習障害」、「LD(えるでぃー)」と言う言葉を耳にする機会が増えてきました。
✓子どもが算数だけ何故かできない
✓文字は読めるのに書けない
✓書けるけど文字が読めない など
「おおむね学習レベルに問題ないはずなのに特定の何かが著しくできない」と思う人や子どもがいたら、もしかしたら学習障害の可能性があります。
今回は、学習障害の特徴や支援方法などを詳しめに解説するので、心当たりある人は必見です!
学習障害かそうでないかを考えるヒントになったり、学習障害のパターン別にとれる対応の一例をしることができますよ。
「バカ=学習障害」じゃないので注意!
すぐに当てはめたがる考え方は改める方がいいですぞ
・勉強で特定の何かがとにかく苦手な人
・「学習障害」を聞いたことある人
・予備知識の欲しい子育て中のパパママ
・教師や保育士など子どもと関わる職種の人
※心理系大学院受験生は必須!
学習障害(LD:Learning Disorder)とは
学習障害(LD)は、基本的に知的な遅れはないにもかかわらず
✓書く
✓聞く
✓話す
✓計算する など
特定の学習能力が著しく低く勉強面に困難が生じる障害です。
精神疾患の分類と診断の手引のDSM-5では『限局性学習症』
ただ「勉強ができない」や「全教科の成績が悪い」では学習障害とは言い切れないので早とちりには気をつけましょう。
基本問題ないのに何かやたら不得意だなって感じ
発達障害のうちの1つですが、知的な遅れや精神的な遅れがない上での症状なのがミソ。
基本的に平均的な能力をもっているので特に「努力不足」と誤解されやすい障害ですが、発達障害は脳の機能的な障害のため、その人にとって本当に難しいことなのを覚えておきましょう。
細胞レベルで苦手なことをやれと言われても限界があるね…
学習障害の大まかな特徴とその支援について、多いので分けて解説していきます。
なお、支援については発達障害の特徴が人によって違うため、参考程度にご覧くださいね。
断定できんのよ
①なめらかな読み
文字は見えていて文章理解もできるものの、ぎこちない読みになってしまう特徴です。
・読み間違えの多発(あてずっぽうな読みが多い)
・読むスピードが周りと比べてかなり遅い
・発音が極端に苦手
吃音(きつおん:どもり)とは分類が少しちがいます
どもるというより、「読…め…る……よ」みたいに1音1音の発音がぎこちなかったり、読み間違いが多発しやすいと言えます。
日常会話は問題ないことが多く、見た文字を読むことだけが極端に苦手に。
・発音しづらい言葉が多い
・自分が読みやすいように「っ」等小さい文字を飛ばす など
発声のしづらさとか、認識ノシづラさかナ←こんな感覚かも
なめらかな読みへの支援
誰だって極端に苦手なことをやれと言われてもつらいから!
読ませようとせず口頭での会話を増やすもあり
②理解
文字から意味やルールなどを読み取ることが苦手な特徴です。
・読めるが、文の切れ方がおかしい(例:「ぶ / 文 / が / 読めな / い」)
・読んでも意味の理解ができない(ただ読むだけになる)
文節や句読点の理解そのものが困難なため、読み取りもぎこちなくなりがちに。
「文章は追えても意味がさっぱり分からない」経験はある人もいますが、学習障害の場合、何度同じ文章を読んでもまったく理解できないことが多いです。
文字を読んで理解ができないと、学校の勉強は全体的につまづきやすいリスクがあるので、苦手さが分かり次第早めに対応しましょう。
・テストの問題文が理解できない
・周りと一緒に読み合わせが難しい など
本人的には言葉が異国の呪文みたいで苦しいから叱責はNGで
理解への支援
文字に対する行間を広めにとってみたり、「文が / 読めない」など区切りを入れてあげたり、まずは文字を区切ってあげられると、どこまで読めば・理解すればいいのか少しでも分かりやすくなると思われます。
区切りが分からずに読み上げる子も多いよ
「文が 読めない」などマーカーで分けてあげるのも良いですが色で情報量も増えるので、「主語だけ赤マーカー」、「1段落ずつ黄マーカーで囲う」などの方がいいかもいしれませんね。
やりすぎはチカチカして見づらそうな
言葉での理解がどうしても難しい場合は、「タンスに服の写真を貼る」などのイラスト化や、「周りが手を上げるから挙手する時間だ」と周りを見て理解できるように促すのもあり。
教科書 < リスニング学習の方が分かりやすいかも
③読みそのもの
言葉の意味はわかっても、見たままに読むことが苦手な特徴です。
・読みが前後する(例:「どくしょ→くどしょ」)
・読みが抜ける(例:「いってきます→いてきます」)
・不正確な読み(例:「大通り→おうどうり」)
音読みばっかで読むのも多し
・英語の正しい発音ができない(cat→かと等)
・似た字や細かい部分を見分けることが苦手 など
本人に間違っている自覚があまりないのも特徴ですね…。
単なる言い間違いではなくて、毎回読みが前後したり、抜けたり、間違った読みをしてしまいます。
読みそのものへの支援
フォントサイズを大きくしたり、行間を開けるなどとにかく読みやすくする工夫が効果的です。
ひらがな・カタカナ・漢字によって読みやすさも変わることが多いため、読みやすい表記を多めにするのもあり。
読み間違っても意味を正しく理解できていれば大きな支障はないと思われるため、あまりしつこく間違いを指摘しなくていいかも。
自信なくさないように、正しい読み < 正しい理解を優先してもいいかと
④書き
お話は問題なくできるものの、文字を書こうとすると特定の字が書けなかったり、「。」などで文を区切れなかったり、書く順番が分からなくなるなど書きが苦手な特徴です。
・文法や句読点の位置を間違える
・感想文など自由記述が全く書けない
単語も文章もどう書けばいいか全く分からないみたい
・段落ごとに文章を見れない など
書きも、ひらがな・カタカナ・漢字でどれかだけ書きにくいってパターンもあり。
書きへの支援
お手本をなるべく手元に用意して、まずは見ながら書くを徹底すると書きやすくなると思われます。
文章を書く際はいきなり書けと言われても立ち尽くしてしまうことが多いため、「私は…」、「はじめに…」など書き出しを助けてもらったり、「どう思ったの?」とその人が書きたいことを尋ねて少しづつ書く練習が効果的。
やらせるじゃなくて「誰かと一緒に書く」がミソかも
また、マス目を作ってあげると文字が書ける場合も。
⑤数の理解や計算
数そのものの概念が分からず、その結果計算も苦手な特徴です。
・数の概念、大小の理解ができない
・計算が過度に苦手(1桁でも指折り計算など)
1~9まで数えられても10から分からなかったり、数えることはできても2 > 7と思ったり、順位や順番が分からないことがあります。
「1番が最初」とかのラベリングの理解が苦手
・1を「いち」と読めない
・数えられるが意味が分かっていない など
数の理解や計算への支援
頭の中だけで考えたり、置き換えて考える力が弱いため、まずは数の概念を理解するためにも「1=〇」、「2=〇〇」など視覚的に数えやすくして数に慣れていくことが大切です。
計算が全くできないならまず数の概念理解を確認しよう
定規を拡大したようなイラストを使うのも分かりやすいと思われます。
数の概念理解ができたら小さな計算など、とにかくスモールステップで進めましょう。
学校出ちゃえば電卓でも…
⑥数の扱い
文章は読めて数も分かり、計算もできるものの、自分で式を組み立てることが苦手な特徴です。
・数式への当てはめができない
・文章題は理解できても全く式にできない
文字を数に変換するのが苦手なイメージ
・自分で仮説・推論する力が弱い など
苦手に感じる子どもは多いかもしれませんが、学習障害だとテスト全部白紙レベルで困難さがみられます。
苦手の程度の差ははかりづらいから難しい
数の扱いへの支援
その人が考えていることを数に置き換えるために、問題文を人と確認したり「何を求めたいの?」など聞いてもらったり、思考の整理をまずは周りに手伝ってもらえると分かりやすくなると思われます。
自分で考える力を育てるために周りがまずアシストしてみて
自分で考えたり、頭の中で操作する力が弱いため、問題文に下線を引いて「x」と書き込んでみるのもあり。
学生時代はつらいかもだけど社会出たらそんなに…?
学習障害の人が身近にいるあなたへ
本人も「どうしてこれだけできないのか分からない!」と困りやすいのも学習障害の大きな特徴です。
全体的に知的な遅れがない分、なかには「こんな当たり前のことができないの?」、「こんな初歩的なことからやらないとだめなの?」と思う人がいるかもしれません。
縁がない人がそう思うのも無理はない
ですが、誰だって難しいことにチャレンジする時は『できる人から見れば当たり前と思えるくらいの初歩から』はじめますよね。
学習障害をはじめ、発達障害の人は彼らなりに頑張っていることをきちんと知って接することが大切です。
誰だってバカにしてくる人は嫌いよ
対人関係で尊重って大事だね
おわりに:学習障害は「努力不足」ではない!
ただ勉強ができない=学習障害と勘違いしている教育者や親は意外と多いですが、学習障害は知的な遅れがないにも関わらず特定の読能力が著しく低下している症状をさします。
本記事で細かく紹介しましたが大きく分けるなら、
✓書き
✓計算
これらに関して学生時代に支障をきたしやすいです。
(卒後は苦手からうまく逃げるのもあり)
特徴に応じて学校側と相談し課題量を減らしてもらったり、支援級など個別対応で見てもらう配慮も大切。
ちなみにゲームを使ってトレーニングする方法もあるみたいですよ。
ゲームなら集中して楽しくやれそうだね
文字の扱いや頭の中で推論する力が弱い人が多いため、絵カードを使って視覚的にアプローチするのも効果的。
このシリーズは他にもいくつか種類があるので、日常で困ることに合わせて使ってみてください。
② 着替え
③ 清潔・片付け
④ 気持ち
⑤ コミュニケーション
⑥ ルール・約束
定型発達の子でも使える分かりやすい方法だよ
また、学習障害も脳の機能障害のため、どうしても難しいことは無理に強要せず別な切り口での対応もOK!
「書き」が苦手なら「話す」とか
個人的には発達障害の特性をなくすのが目的ではなく、あくまで本人が過ごしやすくなることが重要と思うので、避けられることなら避けても構わないと思います。
暗算できなくたって電卓で生きていけるし
養育者によって考えは違うだろうね
何にしろできないことを本人の努力だけでやらせる発想では発達障害との付き合いは難しいので、親や周りが少し手伝ってあげる感覚も大切です。
苦手は勝手に上達しない。本人以外に周りの協力(努力や理解)も必要
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