こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
今回はSNS利用の注意喚起的な回です
インターネットの普及が進み、世は大SNS時代ですね。
学校ではネットいじめが起きるようになって、SNS上では過激な発言・動画も増えており、問題になることも増えてきました…。
これが原因!という訳ではありませんが、今回は没個性化や匿名性が人を攻撃的にさせやすい心理のお話を紹介します。
SNSの利用にあたって、本記事が参考になると幸いです。
こんな人におすすめ!
・SNS利用にあたって何か気をつけたい人
・人の心に興味がある人
・過激な発言を見て心配になる人
・ネット上では普段言えないことが言いやすい人
没個性化とは
没個性化(deindividuation)とは、個人が大勢の中にいることで埋もれたように感じるとき、自分に注意が向かずにアイデンティティが希薄になる状態を指します。
集団内にいると、だんだん「自分」という個人の感覚が薄れること、ありませんか…?
▼没個性化の例
・顔も名前もバレないSNSなら普段言えないことも言える
・匿名なら気軽に発言できる
・皆で言えば怖くない(むしろ正当な気さえする)など
結構あるある?!
個性が大勢に埋もれた感覚になると、他者から評価される感覚も薄れて、恥や罪、恐怖、責任なども鈍り、衝動的・感情的・非合理的な行動が現れやすくなるようです。
・SNSで人を傷つけることを言っちゃう
・対面では言わなくても、ネット上で特定の人の悪口を何度も言ったり拡散したりしてしまう
・人の失敗や問題に反応して、過剰に叩いてしまう など
大勢を隠れ蓑にして、自分の中で律していたことが無意識に緩む感じ
P. ジンバルドーの実験
没個性化に関連して、アメリカの心理学者P. ジンバルドーは、匿名状態での人の行動特性を実験しています。
スタンフォード監獄実験っていうのでも有名人
▼ざっくりとした実験内容
完全に顔と名前を隠した群(没個性化群)と、名札をつけて誰か認識できる群(公開群)に分けて、良い印象・悪い印象の人に対してどれだけ電気ショックを流せるか。
▼結果
・没個性化群の方が、公開群の2倍の電気ショックを浴びせた
・没個性化群は、印象の良し悪し関係なしに電気ショック浴びせた(なんなら浴びせる時間はどんどん延びた)
・公開群は、悪い印象の方に多く電気ショックを浴びせた
※実際には電気ショックは流さず、電気ショックの受け手は顔をしかめるなどで演じたとか。実験後に本当のことを説明→謝罪してるとか。ご安心を…。
実験・研究での倫理!
上記の実験では、没個性化群の方が明らかに攻撃的な行動に出やすいような結果に見えます…。
P. ジンバルドーによると、以下の4要因で没個性化が生じやすいとのこと。
✓匿名性が保障される
✓責任が分散する
✓興奮時
✓刺激が多いとき
自分がしたとバレず(=罰や攻撃を受けず)、自分のしたことに特に責任を持たなくていいとき。
何度も叩いたり、モヤっとする意見や態度を見て気が高まったときなど。
集団内で自分という存在を仮面で隠してしまうと、普段は抑制されていた言動が出やすくなるようです。
匿名でも自分の言動には変わりないって覚えとこう
その他の要因
攻撃的になりやすい要因は、没個性化のほかにももちろん考えられます。
✓相手の気持ちの読み取りにくさ
✓ストレス発散のはけ口
✓有名人などキラキラした人に対する嫉妬
✓自分の意見が正しいなど偏った価値観による排除
✓同意見の多さ
✓マウント取りや優位に見られたい承認欲求
✓愉快犯やちょっとした出来心 etc.
そもそも、ネット上では相手の顔が見えない=表情や仕草から感情を読み取りにくいため、気持ちのすれ違いから争いのもとになることもありますね。
動画で顔見れても一方的なコミュニケーションは勘違いのもと
日常では面と向かって言えない不満を、代わりにSNSで発散している可能性もあり得ます。
「有名人も言ってるから」「バズった意見だから」と時に自分の言動を正当化したり、言葉の重みが分からなくなって無意識にキツイ言葉を遣うことも。
仲間がいると心強いような…ね
目立つためなどあえて攻撃的な発言をすることも、傷つける気満々で怒りをぶつけることも…。
悪意あるのはヤメテー(焦)
怒りたくなることは勿論あると思いますし、気持ちの制御は難しいですが、極力言い方は気をつけられてもいいかもしれません。
明らかな暴言は引っ込められたらなぁ
気持ち良くSNSを利用するために振り返りたいこと
SNSでは身元がバレない安心感や、自分1人じゃないと思える責任の拡散などで、普段の自分では言えないことも言いやすくなりがちです。
つい気が緩んで言ってしまうこともあるかもしれませんが、以下3点は今一度再認識できてもいいかもしれません。
✓SNSでも発言の先には人がいる
✓匿名でも自分の発言はあくまで自分のもの
✓発言によって人を傷つけている可能性がある
対面でも大切なこと
実名でなくても、インターネットの海での一発言だとしても、あなたの発言はあなたのもので、誰かの目にはふれるものです。
「鍵垢だから」「後で消すから」というのは、無責任な発言をする免罪符にはなりません…。
誰かは見てる
また、SNSは相手の顔や素性なども見えないため、相手の存在や気持ちを考えづらく、気づかぬうちに傷つけてしまう可能性もあります…。
自分も相手も匿名同士だとやりとりの実感乏しそう…
「ただ不満を発散したいだけ」でも、あえて不特定多数に見えるやり方をする必要はなくて、友人や限られた範囲に話すでも十分かも。
(もっと共感を得たいとか、自分が正しいと思い込みたい・知らしめたいとか、不満の発散以上に下心はないか…?)
特定個人を指した執拗な悪口は、ネット上でも名誉棄損や侮辱罪などのトラブルに発展する可能性もあります…(匂わせも×)。
軽い気持ちが大問題イイイ
SNSで承認欲求を満たしたい、他人を見て妬み嫉みが湧き上がるなど…、そうやって感情的になってしまう場合は一旦SNSから離れることも大切です。
発言の前に「これ言ったら相手を傷つけるかな?」と一度考えたり、鏡を見て自分の存在感覚や感情に少しでも気づけたら、踏みとどまりやすいかもしれません。
「本当に発言して良いですか?」とかアラート出たらいいなぁ
おわりに:匿名でも自分の言動は自分のもの!
個人が大勢の中にいるとき、自分という個人的な感覚が薄れていくことを没個性化といいます。
その状態では普段の自己統制力が低下してしまうため、衝動的・感情的・非合理的な言動が現れやすい特徴があります。
また、P. ジンバルドーによれば没個性化は以下の場合で生じやすいとか。
✓匿名性が保障される(自分が安全な錯覚)
✓責任が分散する(他人にも責任がある錯覚)
✓興奮時(最早冷静さを失う)
✓刺激が多いとき(いろんな感情に飲まれて自分を見失う感じ)
人目があるから良くも悪くも自分を保てるのかもな
SNSやインターネットでは、没個性化やそれに伴い相手を傷つけうる発言も生じやすいです…。
自由な表現も確かに大切ですが、匿名だからといって何を言っても、攻撃的な言葉を示しても言い訳ではありません。
✓SNSでも発言の先には人がいる
✓匿名でも自分の発言はあくまで自分のもの
✓発言によって人を傷つけている可能性がある
改めて、上記3点を認識してみてください。
自分がしていること、他人の存在を認識できれば、今より多少でも思いやった言動ができるかと思います。
ネット上でも日常でできる配慮を!
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