こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人は自分や他人を理解したり、考えや状況を整理したりするために、カテゴリー分けをよくします。
✓「こんな人は○○」などのタイプ別診断
✓「××診断」
✓「B型だから性格悪い…」 など
パンピー御用達
(闇しあんひねくれてるなぁ)
人の性格を把握するための考え方は心理学でも多くあり、その1つを類型論と呼びます。
今回は類型論のメリット・デメリットを解説していくので、心理系大学院受験予定の人は最後まで読んでしっかり理解しましょう。
そうでない人にとっても、カテゴリー診断の落とし穴を再確認することで人への理解度を1段階深めることができます。
こんな人におすすめ!
・性格類型論について勉強したい人
・カテゴリー診断が好き、よくやる人
・人への理解を深めたい人
※心理系大学院受験生は必須
性格類型論(personality typology)とは
性格類型論とは、性格をタイプ別に分類する方法全般を指し、人の特徴の全体像を理解しやすいメリットがあります。
ハンターハンターの水見式的な
考え方としては「B型の人は性格悪い…」などの分類ですが、当然、B型でも性格悪くない人はいますよね。
類型論のデメリットを直観的に理解できるような例にしたけど、全B型のみなさんごめんね!
このように、一見性格特徴をぱっと見で把握できる便利な性格類型論ですが、すべての人を分類することができない(=個々人にフォーカスできない)デメリットがあります。
他にも、2つ以上の分類に該当する中間タイプの軽視、分類が変わっても性格もその通り変わるとは言い切れない面があり、人への客観的な理解がしづらい特徴があります。
精神疾患の診断と手引きである『DSM‐Ⅳ-TR』までは多軸診断と言い、「精神疾患にどれだけ現症が当てはまるか」を見ていました。現在のDSM‐5では廃止され、多元的診断として、現在の症状の重さや軽さを診るようになりました
これまでの精神疾患の診断は、カテゴリー診断だったんだよ…。気分落ち込んで意欲もなくて、不眠とかあるならはい、うつ病ってする医師もいた…
ワイより闇深い診断だな!
脱線するけど、心理士たるもの目の前のクライエントの状態はしっかり見ようね
病院かかる人はいい加減な医者とは離れよう
もちろん、大雑把に分類するには最適な方法です。
個人的には、類型論はあまり鵜吞みにせず参考程度に聞けると良いと思います。
性格類型論の代表
心理学の中でも有名な性格類型論をざっくり3つほど紹介します。
・クレッチマーの気質類型
・シェルドンの類型論
・ユングの機能類型
心理系大学院を目指したり、心理学に興味あったりする人に向けてもう少し補足していきます。
他にもシュナイダーやシュプランガーなど類型論関連あり
クレッチマーの気質類型
ドイツの精神科医E. クレッチマーが提唱した類型論です。
20世紀頃、分裂病(統合失調症)、躁うつ病、てんかんを3大精神病と言い、E. クレッチマーは精神病患者の体型と性格の違いを研究し、分類したとか。
体型 | 関連疾患 | 性格特徴 | 気質 |
肥満型 | 躁うつ病 | 大らかで社交的。活発。気分の浮き沈みがある。 | 循環気質 |
細長型 | 分裂病 | 繊細で社交的ではない。内気。 | 分裂気質 |
闘士型 | てんかん | 頑固で几帳面。粘り強い。 | 粘着気質 |
体型の肥満はふくよかなタイプ、細長は細長いタイプ、闘士は筋肉質なタイプの3体型の性格をまとめた類型論ですが、知識としてだけ覚えておけば十分です。
普通がいない
やれやれ、普通なのはぼくだけか
気質(temperament)は、性格が後天的に形成されていくものに対して、先天的な性質を指します。
類型論1発目ですが、知れば知るほど鵜呑みにできないことが分かりますね…。
シェルドンの類型論
E. クレッチマーの気質類型に「精神病患者の分類だけじゃおかしい!正常な人の分類も!」と異議を唱えたのが、心理学者W. H. シェルドンの類型論です。
シェルドン「人の胚葉発達を参考に分類します」
細胞レベルの類型論(学力バカ筆者には最早分からん)
体型 | 気質 | 性格 |
外胚葉型(細身型) | 神経緊張型 | 控えめで非社交的。焦りや疲労を感じやすい。 |
内胚葉型(肥満型) | 内臓緊張型 | 社交的。生活に満足できている。 |
中胚葉型(闘士型) | 身体緊張型 | 活動的で、自己主張が強い。 |
クレッチマーのは試験で見かけたけどシェルドンはあまり見かけない
本当に細胞レベルで気質や性格が決まるならリセマラしたいなぁ…←
ユングの機能類型
精神科医C. G. ユングは夢分析や分析心理学で有名ですが、実は類型論も提唱しています。
しっかりした類型論だけどその分難しいのでざっくりと紹介します
心的なエネルギーが内側か外側かどちらに向くかという向性と、外(世間)から刺激を受けたときにどんな心の作用が目立つかという4つの心的機能(思考・感情・直観・感覚)を組み合わせて、計8つのタイプに人を分類するものです。
▼合理的な心的機能
✓思考…論理的で判断
✓感情…好き嫌いで判断
▽非合理的な心的機能
✓直観…思いつきで判断
✓感覚…見聞きしたままに判断
ぷすぷす…(by 感覚的に拒絶反応起こす筆者)
タイプ | 性格 |
外向×思考 | 客観的事実に基づいて行動しやすい。規則に厳しく、失敗や他人にも厳しい傾向。 |
内向×思考 | 主観重視で考えるため独特。頑固で、人から理解されにくい傾向。 |
外向×感情 | 深く考えず、周りの価値観を取り入れることができる。意見の変わりやすさで周りが困りやすい傾向も。 |
内向×感情 | 近寄りがたく見えるが他者思い。自己犠牲的な傾向が強い。 |
外向×直観 | 閃きがあり、カリスマ的なタイプ。可能性を求める。長続きが課題なタイプ。 |
内向×直観 | インスピレーションに頼る芸術家タイプ。変わり者とみなされ、人から遠ざけられる傾向も。 |
外向×感覚 | 外部への関心があり、現実を受け入れやすい。楽しむことが好きで奔放な傾向。 |
内向×感覚 | 自分の世界を大事にしていて表現も独特。周りとの共有や適応が難しい傾向も。 |
ちなみに、ユングの機能類型を元に、MBTI(Myer-Briggs Type Indicator)という性格検査が生まれ、それをさらに簡略化した16 Personalitiesという診断は、インターネット上でも可能です。
アフィじゃないので興味ある方はお気軽にどうぞ
おわりに:大雑把な特徴を知って、鵜呑みには気をつけよう
「○○診断」など、人の性格をカテゴリー化する性格類型論は、大まかな性格特徴を知るのには最適な方法です。
しかし、個々の能力を細かく見ることはできず、正確な能力把握方法としては向いていません。
個々の特性を把握する性格特性論については下記記事を参考にどうぞ。
類型論はあくまで大雑把に全体像を捉える分類法なので、鵜呑みにしないように気をつけましょう。
また、分類は便利ですが、当てはめることばかりに夢中になってしまうと本質を見失いがちです。
たとえば、自分をうつ病の診断基準に当てはめにいくことと、うつ病の症状と自分を照らし合わせていくことは違います。
私たちが向き合いたいのは基準や本ではなく自分自身なので、類型論の落とし穴にはまらないようデメリットはきちんと理解しておきましょう。
参考文献
心理検査やパーソナリティについて、初学者向けの1冊はこちら。
ミネルヴァ書房のよくわかるシリーズはどれも詳しく書かれているので、心理学を勉強したい人や心理系大学院受験生に向いています。
the 参考書という感じなので一般向けとは言い難いですが、勉強してみたい気持ちのある人は手に取ってみてください。
十分お腹いっぱいになれる内容量だよ
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