こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人間関係でトラブルが起きて口喧嘩をするとき、こんな体験はありませんか。
Bさん『そんな風に言ってないだろ?!』
Aさん「言った!」
Bさん『言ってない!』 など
「言った・言ってない」や「証拠がある・ない」などの論争は日常会話ではあるあるですし、発展していけば事件の調査レベルでも起こり得ることです。
しかし、人間の記憶はいい加減なので、いくら主張してもらちが明かないところまでがあるあるですね。
せやな
今回は、①人の記憶のいい加減さに加えて、②言葉や体験によって人の考えや行動は簡単に操作できてしまう、人のチョロさについて解説していきます。
『目撃証言の信ぴょう性』は聞いたことありますか?
犯罪心理学で比較的紹介されやすい内容ですが、知っておくと日常会話にも活かすことができます。
本記事を読むと、少し言い回しを気をつけるだけで人の記憶や言動を少しは誘導できるようになるかもしれません。
危ない記事だね…
言いくるめようとしてくる人の言葉を信用しなくていいよってことやな
・「そう言われるとそうかも…」と言いくるめられやすい人
・記憶のいい加減さに興味がある人
・言葉がどれだけ信用できるのか気になる人
・『目撃証言の信ぴょう性』を聞いたことがある人
『目撃証言の信ぴょう性』は…怪しい
事件などのトラブルで何かを目撃した人の発言・記憶にはどれだけ信ぴょう性があるのか。
実は、目撃者の記憶は、目撃した後の刺激によって簡単に変わってしまいます。
『目撃証言の信ぴょう性』は怪しいってことです
心理学者のE. F. ロフタスは、実験参加者に同じ交通事故の映像を見せた後「車はどのくらいのスピードで走っていましたか」という目撃証言を求める実験を行いました。
結果は以下の通り。
①その車が接触したときの…「51㎞」
②その車がぶつかったときの…「55㎞」
③その車がドスンとぶつかったときの…「61㎞」
④その車が衝突したときの…「63㎞」
⑤その車が激突したときの…「65㎞」
なんと、映像後の質問で言い回しを少し変えただけで、最大10㎞ほど違う証言結果が出ました。
ガバガバやん
『目撃証言の信ぴょう性』の実験から、人は記憶を思い出すときに後から些細な言葉の違いや誇張表現を加えられると想像力を働かせてしまい、記憶が歪んでしまうことが分かったんです。
嘘をつきたくてついている訳ではなくて、言葉の影響を受けて事実と想像とで区別がつきにくくなってしまいます。
「目撃証言って信用ならないね」で終わればいい(?)ですが、日常場面で活かす・用心するには「意図的に、割と簡単に誘導尋問できてしまう」点を知っておきましょう。
誘導、暗示…犯罪のにおいがするね
言葉の影響力が分かる
言い回し以外にも、
✓2択など回答を迫られるような状況
✓何度も似たような状況を思い出すよう促される
✓日時など具体的に問われる など
と誘導に引っかかりやすくなりがちな要素もあるので注意。
B君:「行ってないよ」
Aさん:「でも先週の夜、また元カノと会ったことバレてるよ」
B君:「…バレてたのか」 など
誘導に関しては、言い回しに気をつけると割と簡単にできるので、する側・される側も気をつけましょうね。
また、人の記憶を想像で歪めてしまわないためにも、見たものを語ってもらうときは限局的に質問するより自由に語ってもらう方がいいかもしれません。
\ 記憶の話も要復習 /
プライミング効果
もう1つ、人のチョロさとしてプライミング(priming)について解説します。
プライミング効果は、先に示した情報に影響されて、後の言動などが変わってしまうことを指します。
人の言動は無意識のうちに操作されうるのだ…
プライミングには直接的プライミングと間接的プライミングがあります。
…事前に学習したことが反映されやすくなる
例:焼肉や定食の話ばかりした後に「〇肉〇食」という言葉を見せると「焼肉定食」と答えやすくなる(「弱肉強食」など他に入る言葉が出づらくなる)
…事前に見聞きした情報と似た情報を頭で検索しやすくなる
例:事前に身に着ける物の話をしたり見てから「彼女へのプレゼントどうする?」と聞かれると、指輪やブレスレッドなどのアクセサリーを連想しやすくなる(花束や旅行など他の選択肢が出にくくなる)
直接的の方はうっかりミスを誘う感じですが、間接的の方は知らず知らずのうちに人に操作・誘導されうるのが怖いところです。
人の脳内に蓄積された記憶情報は、関連ある情報同士が結びつき、ネットワークを形成していると考えられています。
人は意識的に記憶を思い出したり発言しているつもりですが、プライミング効果は人の意識が及ぶ前に作用する心的効果です。
人は…自分が思っている以上に無意識の言動を見せている、ということです…。
だんだん怖くなってきた
今のあなたの言動は誰かに誘導された結果かもしれない…と考えだすと疑心暗鬼になりそうですね。
そこがまた心理学の面白さ
おわりに:言葉を意識的にチョイスして上手な対人関係を築こう
言葉のやり取りだけでは簡単に人の記憶や言動はいい加減になります。
目撃証言の信ぴょう性から分かるように、人の目撃情報は後のほんの少しの刺激で簡単に歪められ、プライミング効果では人の意識が及ぶ前に影響を受ける…。
深く考えだせば、あなたの今の言動はあてにならないかもしれません。
あなたは常に何かに操作され続けているかもしれません…が、人は世界から影響され続ける生き物です。
周りからの影響はある程度受けつつ、自分なりに意識的に判断・行動しようと努められれば、それは影響を受けた上でのあなたの意志とも言えますね。
(でも人の「言葉だけ」は絶対的に信用しない方がいいぞ)
誘導尋問もしやすい・されやすいので、大事な話はきちんと証拠になるような物を見せるなど、目で見て分かるようにしましょう。
目撃証言にかんする心理学の本もあるので、気になった人は手に取ってみてください。
割と易しい文章で初学者向きな1冊です。
認知・記憶、犯罪心理学について深めたい人は是非。
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