こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
巷では診断メーカーなどでIQを測定する遊びがありますが、心理学にもIQを測定する知能検査がいくつか存在します。
今回は、医療機関でも使われやすいウェクスラー式知能検査の概要についてざっくり解説。
✓WPPSI
✓WISC
✓WAIS
一般の人でも聞いたことあるかも?
※「ワイス」呼びはヤメテー
ウェクスラー式知能検査の概要は、院試や資格試験で問われやすいため、心理系大学院受験生は要整理です!
福祉・教育など関連領域の人も要チェック。
見聞きしたことのある人にとっては、検査を少しでも知るきっかけになれば幸いです。
こんな人におすすめ!
・ウェクスラー式知能検査が分からない人
・WPPSI・WISC・WAISを聞いたことがある人
・発達や知能に関心がある人
・心理や関連領域のたまご
・当検査を受検した人やその家族
※心理系大学院受験生は必須!
ウェクスラー式知能検査(Wechsler intelligence scales)とは
ウェクスラー式知能検査は、D. ウェクスラーが開発した知能検査です。
ウェクスラー式では、知能=思考や情報処理などあらゆる機能の集合体と捉えており、知能を能力ごとに評価する目的があります。
個人の得意・不得意を見やすいのが特徴ね
大まかな知的能力を診るビネー式と対比して、ウェクスラー式は診断的知能検査と呼ばれることも。
テスターは要フィードバック!受検者は検査結果聞く権利大アリ!
\ ビネー式はこちら /
また、主に児童が対象のビネー式に対し、ウェクスラー式は幼児・児童・成人用に分かれているのも特徴です。
それぞれ細かな検査内容は異なりますが、全体的なIQである全検査IQや、能力ごとの指標得点などを求めるのはウェクスラー式の共通事項。
✓全検査IQ
同年代での平均をIQ=100とする、知的発達の指標
✓指標得点(以下など)
・言語理解(VCI)
言葉に関する理解や説明の力
・知覚推理(PRI)
目で見た情報の理解や操作する力
・ワーキングメモリ―(WMI)
耳で聞いた情報の記憶や注意・集中力
・処理速度(PSI)
作業の速さや正確さなど情報処理力
心理のたまごは指標得点ちゃんと覚えよう!
全検査IQだけで判断する心理シにはならないように!
また、ウェクスラー式知能検査の結果は、偏差知能指数(DIQ)で示されます。
↑ビネー式の記事に説明あるよ
下記では、WPPSI、WISC、WAISの大まかな特徴を解説しておきます(問題構成は割愛。WAISは別途記事化するかも…?)。
WPPSI-Ⅲ
WPSSI-Ⅲは2017年に改定された幼児用の知能検査です。
対象は2歳6ヶ月~3歳11ヶ月と、4歳0ヶ月~7歳3ヶ月の2部構成。
(幼児なら田中ビネー・新版K式発達検査の方が多いかも?)
実施時間の目安は40~70分程度。
全検査IQ、言語理解、知覚推理のほか、処理速度や語い総合得点という指標(言葉や物の名称の理解の発達度合い)を求めます。
▼WPSSIの特徴
・2歳6ヶ月~3歳11ヶ月と4歳0ヶ月~7歳3ヶ月で下位検査が異なる
・語い総合得点(GLC)を求める
・旧版WPPSIと比べて問題構成がガラッと変わった
WISC-Ⅴ
WISC-Ⅴは2021年に改定された児童用の知能検査です。
対象は5歳0ヶ月~16歳11ヶ月。
全検査IQのほか、言語理解、視空間、流動性推理、ワーキングメモリー、処理速度の5つの指標得点を求めます。
実施時間は60~80分程度が目安(補助検査込みなら、90~120分かかることも…)。
▼WISC-Ⅴの特徴
・知覚推理の代わりに視空間・流動性知能の2指標に置き換え
・バランス、パズル、絵のスパンの下位検査が登場
・数唱に数数列も追加
・語の推理、絵の完成は削除
まだWISC-Ⅳ使っている現場もあります
なお、現場ではまだWISC-Ⅳを使用している場合も多く、扱う予定があるなら下記がめちゃくちゃおすすめ(アセスメント用ですが)。
プロフィールの見方や、得点パターンごとの特徴も載っているため、マジモンの必読書です。
WAIS-Ⅳ
WAIS-Ⅳは2018年に改定された成人用の知能検査です。
対象は16歳0ヶ月~90歳11ヶ月。
成人は大体WAIS実施かも
全検査IQのほか、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標得点を求めます。
実施時間は、60~90分程度。
▼WAIS-Ⅳの特徴
・適応年齢が90歳11ヶ月まで拡大
・従来と比べて検査時間が短縮化された
・パズル、バランス、絵の末梢、数唱に数数列が追加
・絵画配列、組み合わせ、符号の補助問題②は削除
WAIS-Ⅳについては、ウェクスラー式で有名な著者による解説本ぐらいしか手掛かりがない(と思われる)ので、勉強したい人は読んでみてください。
対象年齢の重なりについて
幼児用・児童用・成人用と区分されているウェクスラー式は、対象年齢が重なる場合もあります。
検査名 | 対象 |
WPPSI-Ⅲ | 2歳6ヶ月~3歳11ヶ月 4歳0ヶ月~7歳3ヶ月 |
WISC-Ⅴ | 5歳0ヶ月~16歳11ヶ月 |
WAIS-Ⅳ | 16歳0ヶ月~90歳11ヶ月 |
どっちやればいいか困る年齢群あるね
5歳0ヶ月~7歳3ヶ月の場合は、対象者の認知能力や背景情報によってWPPSI-ⅢかWISC-Ⅴが選択可能。
16歳0ヶ月~16歳11ヶ月の場合も、同じくWISC-ⅤかWAIS-Ⅳが選択可能です。
対象年齢が重なるときは、対象者の認知能力などを考慮して、どちらを施行するのが好ましいかを判断することが求められます。
ウェクスラー式の実施・分析ポイント
ウェクスラー式は対象年齢によって検査内容は異なってきますが、実施のポイントはいくつか共通しています。
▼検査開始前
・いきなり実施せず、被検者と信頼関係を築く
・検査の説明を行う
・静かで集中しやすい環境を用意する など
説明と同意は基本のき!
▼検査中
・実施手順通りに行う
・被検者の様子を観察しながら進める
・被検者の様子に応じて途中休憩をはさむ
・途中中断の場合、再検査は1週間以内に行う
・決められた問題以外では回答を教えない など
実施手順を守り、基本的には教示の通りに進める検査なので、案外簡単にできると思う人もいるようですが…
対面でスムーズに行うには、検査への理解と熟練は必須です。
院生は積極的に検査に触れることをマジでおすすめ
また、分析についても各検査によりますが、以下の指標は算出することが多め。
▼分析ポイント
・被検者の検査時の様子
・下位検査ごとの得点
・全検査IQ
・指標得点
・ディスクレパンシー
・強みと弱み
・プロセス分析やGAI、語い総合得点 など
ディスクレパンシーは指標間の差
被験者が問題を一通り解けず、IQの算出が難しい場合でも、分かる範囲で分析します。
ウェクスラー式の特徴は、知能を能力ごとに見れることなので、分析ポイントは丁寧に整理することを心がけましょう。
仮に慣れてきても端折るなよ!
おわりに:ウェクスラー式は知能を能力ごとに見る検査!
ウェクスラー式知能検査は、個人の全体的なIQだけでなく、知能を能力ごとに見れる検査です。
対象ごとに検査内容が分かれているのも特徴の1つ。
検査名 | 対象 | 最新版 | 最新版の対象年齢 |
WPPSI | 幼児用 | WPPSI-Ⅲ(2017年) | 2歳6ヶ月~3歳11ヶ月 4歳0ヶ月~7歳3ヶ月 |
WISC | 児童用 | WISC-Ⅴ(2021年) | 5歳0ヶ月~16歳11ヶ月 |
WAIS | 成人用 | WAIS-Ⅳ(2018年) | 16歳0ヶ月~90歳11ヶ月 |
特にWISC・WAISは現場御用達!
検査の実施や分析は、検査冊子の読み込みだけでは不十分で、ロールプレイや実施を繰り返す必要があります。
心理系大学院受験生は本記事の概要をきちんと抑え、院生は積極的に検査用具や実施機会にふれるようにしましょう!
(WAISはもう少し書きたい願望あり〼~)
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