こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心理学と言うと心に注目した学問に思えますが、実は人の発達過程の勉強も必要です。
人の発達に焦点を当てた心理学は発達心理学というカテゴリ
今回は、乳児期の愛着理論や正常な発達過程について段階的に解説していきます。
✓生後何ヶ月でどんな反応があるといいのか知らない
✓乳児期の一番の課題が何か興味ある
産まれてからの心身の正常な発達過程を知ることで、子育てをしたり、乳児と関わる場合の不安感を拭い去ることができますよ。
発達過程を知ることで発達障害の見極め参考にもなるね
・人の発達過程に興味がある人
・赤ちゃんが好きな人
・赤ちゃんのいるパパママや教育関係者
※臨床心理士・公認心理師試験受験生は必須!
生理的早産(physiological premature delivery)
心理学の発達理論には、青年期をメインとしたE. H. エリクソンのライフサイクル(人が生まれてから死ぬまでの流れの発達課題と危機)の理論があります。
また、乳幼児の認知発達に焦点を当てたJ. ピアジェの認知発達理論もあり、人の発達知識は心の勉強にも必須です。
心を知るには身体のことも知ろう
人は、動物学的な観点から見た場合、他の哺乳類の発育状態と比べて約1年早く生まれていると考えられ、この状態を生理的早産(by A. ポルトマン)と言います。
乳児期はまだ発育状態的に未熟という意味では、乳児期=子宮外胎児という表現もありです。
他の哺乳類より大脳の発達が成熟しているのも知っておこう
脳の断面図で見たときに人の脳は他よりでこっぱち
生理的早産=発育が不十分の状態で生まれた乳児は養育者からの世話なしで生きていくことは難しいです…。
親などから養育を受けて、初語や初歩などの身体の成長が見られてきます。
はじめは誰からの世話でも乳児は喜びますが、次第に特定の人からの世話を喜び、特定の人に特別な感情を向けるようにもなります。
愛情ある関わりを通して心の発達も見られるため、心身の健全な発達には愛情ある養育は必要と言えますね。
乳児は動物学的に未熟なままこの世に生を受けているからこそ、お世話は大切なんだよってことを再認識しよう
ネグレクト(育児放棄)は虐待やで
愛着理論の4段階
乳児は時間をかけて外の世界を知り、親をはじめとした特定の養育者に特別な絆である愛着を感じ始めます。
ベビ様「トゥンク」
そして、形成された愛着を心のよりどころとし、養育者を絶対的に安心できる安全基地と捉え、徐々に外の世界に興味を持ちます。
ベビ様「ママ大好き」
次第に、養育者以外に友人などの関わりももつようになり、養育者の元に帰らなくても心のうちに安心感をもてるようになり(内的作業モデル)、心の安定化が働きます。
キッズ「ママは僕の心の中に…」
このような愛着→安全基地→内的作業モデルの流れをJ. ボウルビィは愛着理論として考えており、本記事でもう少し段階的に解説していきます。
愛着の意味やパターンについては下記記事で復習を。
第1段階(生後3ヶ月間)
自分と他者(パパママなど)との区別が不十分で、愛着はまだ形成されない時期です。
誰に対しても同じように泣いたり、生理的微笑といって笑っているように見えたりします。
生まれたてはろくに目が見えていないみたいだし、自我境界がぼんやりするのも仕方ないね
親が楽しい時期です
ちなみに、2ヶ月頃には「あー」、「うー」などのクーイングが見られます。
何か言った?って感じのやつね
また、乳児は先天的にもっている原始的反射があり、生後3~4ヶ月など比較的すぐに消失してしまうものもあるため合わせて紹介。
✓把握反射…乳児の掌に触れると強く握りしめる反射
✓モロー反射…急に大きな音など強い刺激を与えると、両手を広げて抱き着く格好をする反射
✓バビンスキー反射…乳児の足の裏を刺激すると、足の指を扇のように広げる反射
✓ルーティング反射…乳児の口の端に触れると、振れた側に顔を向けて指を吸おうとする反射
心理関連の試験でも保育士試験でも出る内容なので受験生は覚えよう
しあんは乳児見ると原始的反射の確認したくなる奴
第2段階(生後6ヶ月~1、2歳)
母など養育者に対してよく笑いかけるようになり、今までよりも人を凝視する時期です。
ベビー開眼
養育者に愛着を抱き始め、「あぶー」などクーイングよりももう少しはっきりとした喃語(babbling)を発するようになります。
だいぶ喋ろうと頑張りだすね
1歳頃には愛着形成は見られるので、養育者と乳児が慣れていない見知らぬ人(お爺ちゃんお婆ちゃんなど)での反応を見て、愛着の型を探ることも可。
そして、特定の養育者以外は避けがちになり、8ヶ月不安といっていわゆる人見知りのはじまりです。
ママと愛着できてるとパパぷいってされることもあって悲しいやつね
人見知りを不安がる人もいますが、「養育者が誰か分かっている」、「養育者に愛着を抱いている」ことの現れなので正常な発達と言えます。
(養育者(母)も避けがちなら怪しいかもしれない…)
1歳前後までにはハイハイ→伝い歩き→立つや初語も見られます。
1歳頃に生理的早産分を取り戻すんだね
第3段階(2~3歳頃まで)
母など養育者を安全基地として、養育者から一定の範囲内では安心して行動し始める時期です。
この時期家の中荒しまくるのは、赤ちゃんなりの安全確保の上での探索行為かも
しかし散らかせば怒られる(解せぬ)
養育者との距離は発達とともに遠くなり、養育者の目が届かない場でも活動し、不安を感じれば泣いて養育者を呼んだり、自ら養育者の元へ戻ったりする行動も見られます。
第4段階(3歳以上)
身体的な接触は徐々にいらなくなっていき、主に母子間の愛着がきちんと形成されていると、養育者の様子を見たり、人とのちょっとした協調性が形成されていく時期です。
理論的には、乳幼児が養育者(母)に対して肯定的に感じられていると、人全般に対する基本的信頼感(basic trust)を得ることができるとされます。
乳幼児に対して笑いかけたり保護的であったり母親らしい世話(マザーリング)を十分にできずに放置気味だと、乳幼児は人全般に対して不信感や不安を抱きやすいともされます。
こう見ると養育者(母)のプレッシャーが重そうだね…
おわりに:乳幼児の発達過程を少し知るだけでも安心できる!
乳児にとって初めて親密になる生き物と言えば、多くは両親であり、母です。
親も子もどちらも選べませんが、養育者との関係は乳児にとって初の人間関係であるため、うまくいくのといかないのでは今後の発達や対人関係に影響するのは確かです。
乳児を養育する場合は、なるべく乳児をよく面倒見てあげて、楽しく遊んであげるなど温かい関わりができると愛着形成がうまくいきやすいと思われます。
基本的信頼をGETだぜ!
また、乳幼児との関わりは親でも未知がいっぱいで、不安になりやすくなります。
「どのくらいの時期にどんなことが見られるのか」を少しでも知っておくと、乳幼児の発達過程を知ることができるので、気になる行動は覚えてみてください。
・2ヶ月頃…「あー」、「うー」などクーイング
・3ヶ月頃…生理的微笑で笑顔振りまく
・3~4ヶ月頃…生まれもった原始的反射が消えだす
・4~6ヶ月頃…喃語でもう少し意味ある発声
・8ヶ月頃…8ヶ月不安で人見知り
・9ヶ月頃…「マンマ」などの初語スタート
・1歳頃…立ち歩きスタート
・2~3歳頃…2語文、3語文、安全基地で進撃
・3歳~…他人との協調性見られだす etc.
心理や保育関係者は基本暗記でね
仕事でも、実際の子育てでも、乳幼児と関わる場合はかれらの生態を少しでも知っておけると、落ち着いて対応しやすくなりますよ。
また、乳幼児や愛着に関する参考単行本として紹介します。
いわゆる育児ノウハウ本ではなく、発達心理学としての色味が濃い単行本なので、発達心理学の入門読み物としておすすめです。
乳幼児の心理学についてしっかり書いてあるので、知識をつけるには最適です。
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