こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人の性格を把握する方法として、大まかなタイプを知る性格類型論がありますが、より細かい性格特徴を知るには性格特性論があります。
本記事では性格特性論のメリット・デメリットや特性論の代表を解説するため、性格類型論の記事と合わせて読むとより分かりやすく、楽しめますよ。
心理系大学院への進学希望者は、類型論と特性論のメリット・デメリットを覚えましょう。
そうでない人にとっても、自分の性格特徴を把握する機会になるため、要所要所ご覧ください。
こんな人におすすめ!
・性格を細かく知りたい人
・類型論と特性論の違いを学びたい人
・自己理解を深めたい人
※心理系大学院受験生は必須!
性格特性論(personality trait theory)とは
性格特性論では、性格を「明るい」「元気」など複数の性格特性の集合体と考え、その性格特性を測ることで個人の詳細な性格を把握する方法です。
偏差値は50だけど、英語が得意で数学が苦手みたいに個人差があるイメージ
ポケモンの600族でもそれぞれ種族値配分が違うイメージ
性格類型論では人の大まかな性格特徴を把握でき、細かな分類は難しいという特徴がありました。
性格特性論では反対に、細かな部分を把握することが可能で、個人の全体像は捉えにくいデメリットがあります。
種族値だけパッと見て強みと弱みは分かっても、合計600族とはすぐに分からんだろ?
(ポケモンネタでどれだけ伝わるのか…)
特に、性格特性論の場合、性格特性を数値化して捉えられるため分かりやすいメリットがあります。
▼性格特性論の例
性格特性を数値化してみる。
Aさん…「抑うつ気分10点」「劣等感5点」「のんきさ2点」
Bさん…「抑うつ気分3点」「劣等感5点」「のんきさ9点」
同じ性格特徴を測っても、AさんとBさんの特性が異なるのはよく分かりますね。
このように詳細を数値化することで「Aさんは抑うつ気分が高くて、のんきさが低い」という個人内での比較や、「BさんよりもAさんの方が抑うつ気分が高い」という個人間での比較が可能です。
大まかな全体像の把握 | 細かな特徴の把握 | |
類型論 | 〇 | × |
特性論 | × | 〇 |
また、性格特性を数値化できるため、統計処理を行いやすいポイントもあります。
卒論や修論で性格研究を行う場合は性格特性論の場合が多いので、心理学生は覚えておきましょう。
因子分析とか因子分析とか因子分析とか(そのうち記事化します)
性格特性論の代表
性格特性論の代表例として3つ紹介します。
✓オールポートの特性論(からの流れ)
✓YG性格検査
✓ビッグファイブ
心理系大学院進学希望者や臨床心理士・公認心理師、その他近接する資格試験でも出題率が高いので、関係者はしっかりみてください。
人名や専門用語も多く座学になるため、耐えられない方は「おわりに」までどうぞ
オールポートの特性論からの流れ
「特性」という言葉を初めて使用したのはG. W. オールポートです。
G. W. オールポートは、人の性格特徴に関する単語を辞書から約18000語抽出・分析して、約4500語に絞ったそうな。
中でも、他人と比較しがたい個人的な性格特徴を個人特性、多くの人に共通してみられやすい共通特性を見出しました。
特性論の祖として覚えておこう
G. W. オールポートの考えを受けて、次にR. B. キャッテルが因子分析を用いて、人の性格特徴は16の特性で説明できると提唱しました。
R. B. キャッテルは、新しい場面への適応に必要とされる流動性知能と、今までの学習や経験による結晶性知能の2因子を見出した人でもある!
R. B. キャッテルは知能の方が有名かも
さらに、H. J. アイゼンクも因子分析を用い、人間の性格は情緒の安定性を指す「神経症傾向」と、社会性の向き「外向性・内向性」の2つの特性で説明できると提唱しました。
H. J. アイゼンクは、MPI(モーズレイ人格目録)を作成した人でもある!
人によって性格特徴の因子数はバラバラなんだよなぁ
YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)
YG性格検査とは、J. P. ギルフォードらが作成した検査を矢田部達郎が内的整合性を重視して、日本用に標準化した性格検査の質問紙です。
回答は「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3件法。
検査者が質問文を読み上げ、そのペースで回答していくやり方ですが、社内検査等で実施する際は配って終わりなところも。
現場での心理検査実施は雑なところが多いなぁ…
質問項目は120問あり、12の性格特性を測ります。
抑うつ(D) | 陰気で悲観的 |
回帰的傾向(C) | 非常に気分屋であること |
劣等感(I) | 自身の低さや自己の過小評価 |
神経質(N) | 心配性で、過敏なこと |
客観性(O) | 客観的か主観的(空想的)か |
協調性(Co) | 協調的か非協調的(不満が多い)か |
攻撃性(Ag) | 攻撃的かどうか |
のんきさ(R) | 気軽かつ衝動的か |
一般的活動性(G) | 心身の活発さ |
思考性(T) | 思考が内向的か外向的か |
支配性(A) | リーダーシップがあるか服従的か |
社会性(S) | 対人面で外向的か内向的か |
(これは覚えなくても…)
特性論に基づいた検査ですが、結果は5類型に分類されるため類型論的性質をもちます。
A型 | 平均型 | プロフィールは中央寄り | 平均的 |
B型 | 不安定積極型 | 右寄り | 情緒不安定で不適応傾向 活動的で外向的 |
C型 | 安定消極型 | 左寄り | 情緒は安定し適応的 控えめ |
D型 | 安定積極型 | 右下がり | 情緒は安定し適応的 活動的でもあり好ましい性格 |
E型 | 不安定消極型 | 左下がり | 情緒不安定で控えめ 神経症気味 |
プロフィール特徴は院試や資格試験でも出るよ!
B・E型はやばめ、D型が理想くらいは抑えとこう
YG性格検査には、MMPIのように妥当性尺度はないため、質問紙特有のデメリットである回答の歪みを判断しがたい面もあり
ビッグファイブ
L. R. ゴールドバーグが提唱したビッグ・ファイブは、有名な性格特性論なので聞いたことある人もいるかもしれません。
ビッグ・ファイブは人の性格特徴を5つの特性で表すものです。
✓外向性
✓協調性
✓勤勉性
✓開放性
✓神経症傾向
これら5つの高低を数値化して性格を測りますが、5つの特性の呼び方は訳し方によって異なる点は注意しましょう。
おわりに:自分の性格を知って自己分析に活かそう
性格特性論では、性格=複数の性格特徴があると考えています。
人の性格は1つの言葉では言い表しがたいですし、「明るい」と「暗い」など相反する性格特徴をもっていることも十分に考えられます。
大切なのは、自分にどんな一面があるかを客観的に知り、受け止めることです。
インターネット上にも性格診断は多くあり、仕事の適性から恋愛診断までさまざまあります。
あまり鵜呑みにせず参考程度に捉えようね
より根拠のある性格検査を受けたいという場合は、メンタル系の医療機関で相談してみる方がいいかもしれません。
座学お疲れさん
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