こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
人の心の悩みや相談を聴く心理士を目指す人や心理職に興味のある人にとって、こんな疑問はありませんか?
✓心理士って病まないの?
✓クライエントとの距離感をどう保っているの?
✓心理士の主観100%でカウンセリングしてるの?
実は、臨床心理士や公認心理師は専門性の維持・向上や、精神衛生の安定のためにスーパービジョンという指導を受けています。
今回は、スーパービジョンについてざっくり解説します。
心理系大学院受験生にとっては座学でピンとこないテーマですが、現場で働くほど重要なテーマになるので、何度も見返しましょう。
専門家(のたまご)向けの記事です
こんな人におすすめ!
・スーパービジョンの役割について知りたい人
・心理士の工夫に興味がある人
・カウンセリングで不安を感じやすい人
・心理士初心者
※心理系大学院受験生は必須
スーパービジョンとは
スーパービジョン(SV:supervision)は、心理士が専門性の向上のために、より多くの経験をもつ心理士から指導や助言を受けることを指します。
指導する側(経験豊富な心理士)がスーパーバイザー、指導を受ける側(若手など)がスーパーバイジーです。
師弟みたいだね
そもそも、臨床心理士の4つの業務のうちの1つには「専門性の向上・研鑽」があります。
人の心の悩みや相談を扱う心理士にとって、精神疾患について勉強したり、カウンセリングや心理検査を適切に行うための助言・指導を受けたりするのは、専門性向上のために必要な活動です。
知識だけあってもカウンセリングは難しい
カウンセリングの方向性ややり方に不安を覚える心理士は多いので、支えの意味でもSV大事
臨床心理士・公認心理師を養成する心理系大学院でも、カウンセリングの実践およびスーパービジョンは必須科目です。
スーパービジョンでは、心理士が担当しているカウンセリング1ケースを、継続的にスーパーバイザーに報告・検討し、助言・指導を得たり、スーパーバイジーが気づきを得ます。
カウンセリングをしている心理士が、クライエントの悩みをスーパーバイザーに話して気づきを得るため、スーパービジョンはカウンセリングの追体験とも言えますね。
カウンセリングを受ける側の気持ちになりやすい=クライエントの気持ちを想像しやすいよ
クライエント自身や心理士への勉強をしている身としては、「カウンセリングって守秘義務があるんじゃないの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、スーパーバイザーもまた守秘義務があるため、スーパービジョン内での守秘義務という形で秘密は守られます。
心理士がスーパービジョンを受けることで、カウンセリングがより良い方向へ向かうこともでき、クライエントの利益になり得ます。
もちろん、(主に若手の)心理士のスキルアップにもなるため、スーパービジョンは心理士・クライエント共にメリットのある活動です。
スーパービジョンの役割
スーパービジョンの役割をもう少し丁寧に解説すると、以下の3つに分けられます。
心理士として活動していくには必要かつ有益な機能なので、しっかり覚えておきましょう。
教育的機能
スーパービジョンを受けることで、スーパーバイザーから新たな気付きや知識を得られます。
スーパーバイジーのカウンセリングを構成する力を高める機能があります。
独りよがりなカウンセリングじゃなくて、クライエントを多面的にみる力が養われるよ
支持的機能
スーパービジョンには、心理士が燃え尽きてしまうなど心の健康を保つ支持的な側面もあります。
心理士や教員、支援員などの対人援助職は、クライエント(仕事で出会う相手)との距離感がつかみにくかったり、仕事とプライベートの線引きがあいまいになるなどで、心の健康を崩しやすい危険が高いです。
心理士の心が疲弊しすぎないように、スーパービジョンでは支持や肯定を受け、スーパーバイジーを支える側面も求められます。
ミイラ取りがミイラにならないようにね
(大学院でのスーパービジョンは支持要素が足りなかった気がする)
心理士に限らず、対人援助職は心を疲弊させやすいため、自分の心のケアのためにも経験豊富な先輩(心理士)がいると安心しますね。
管理的機能
スーパービジョンでは、スーパーバイジーの力量をみて、業務量への助言も期待できます。
もちろん強制ではありませんが、スーパーバイジーが潰れないために、能力をもっと発揮できるようにという管理的な側面もあります。
スーパービジョンの関係性が大事
スーパービジョンの実際
院試や資格試験で問われる内容は上記までがメインで、ここからはもう少し踏み込んだ実際について紹介します。
スーパービジョンもカウンセリングと同様で1回ごとに料金が発生し、値段はばらつきが大きいです。
5000円~1万円程度が多いように感じますが、院卒は3000円程度で比較的安価な場合もあれば、有名なスーパーバイザーだと2,3万円かかる場合もあります。
院生時代のスーパービジョンはタダ(学費)
頻度もカウンセリング同様、週1、隔週、月1、2~3月に1回など様々です。
筆者は月1で5000円~が多かった
どうやってスーパーバイザーを探すの?
これが最難関!
正直、多くの場合は横のつながりで紹介のパターンが多いと思われます。
大学院修了後も大学院時代のスーパーバイザーに頼んだり、先輩心理士や教授から紹介してもらうがメジャーです。
所属する学会内でスーパーバイザーを探してくれるサービスがある場合もあります。
その他、自分が「この人のもとで成長したい!」と思える心理士に頼んでみたり、個人開業している心理士がスーパービジョンの申し込みの対応をしている場合もあります。
行動力が試されるね…!
スーパーバイザーの中にはダメ出しするだけ、上から目線など「ん…?」と思える人もいます。
「この人になら相談できそうだ」「この人の考え方や見方を得たい」と思える人のもとで続けてみましょう。
値段じゃなくて結局は人柄も大事ってこと
スーパービジョン受けてみてどう?
筆者は①大学院時代の教授、②気になる先生、③スーパービジョンない時期のパターンを体験しているので、一参考として解説します。
何故か若手や同期から「SVして!」と言われるパターンもある…
あくまで個人的な体験として見てみてくださいね。
相性の大切さが伝わればいいな!!
①大学院時代の教授
大学院ではスーパービジョンは科目としても必修で、枠は下記の通りでした。
頻度:週1回
時間:1回50分
料金:無料(学費)
やり方:カウンセリングの逐語を起こして読み上げる
大学院内でスーパーバイザーを選ぶだけでスーパービジョンを受けることができ、料金もかからず、始めやすかった点は良かったです。
大学院や教授の方針にもよりますが、修了後も頼めば引き受けてもらえる点も魅力的でした。
しかし、教授の体調不良が多くあまりスーパービジョンを受けられなかったことと、教授の数少ない助言は筆者の中で納得できず、教授への不信感をもってしまったことから、実りある活動にはあまりなりませんでした…。
スーパーバイザーとの関係がうまくいかなかったんです
スーパーバイザーは健康体がいいとも思った
②気になる先生
筆者がスーパービジョンを受けてみたいと思った先生に頼んだパターンの枠はこちら。
頻度:隔週~月1回
時間:1回60分
料金:5000円(+交通費)
やり方:カウンセリングの概要を口頭で伝えて、スーパーバイザーと対話
自分が伝えたカウンセリング内容や自分の姿勢について助言・指導、支持を受けることができ、安心して活動することができて良かったです。
また、心理検査の解釈に役立つ知見も得ることができ、とにかくモチベーションをキープできました。
信頼できる相手を見つけられると仕事にもいい影響が出る不思議
自分が気になる先生を選び、信頼もできたため、デメリットは特に感じませんでした。
自ら行動って勇気はいるけど、満足いく経験をしやすいかも
③スーパービジョンのない時期
筆者の転居に伴い、本記事執筆の時点で実はスーパービジョンを受けていません(探したい)。
スーパービジョンを受けないと不安で仕方がない意見もありますが、個人的にはつぶれることなく落ち着いてやれる感覚もあります。
カウンセリングで苦しい場面もあるけどね
ある程度冷静に実践できる感覚もありますが、やはりスーパービジョンがあるのとないのでは視点が違い、クライエント理解の幅も異なる印象があります。
やれるならやる方が自分とクライエントのためだな
おわりに:いくつになっても向上心をもとう
スーパービジョンは、経験豊富な心理士のもとで助言や指導など学びを得る機会です。
初学者はもちろん積極的に受ける方がいいですが、どれだけ経験を積んでもスーパービジョンからの卒業はないと思います。
慢心とは油断
スーパービジョンはただ教育的なものではなく、心理士の質を高める効果や心理士を支える効果もあります。
また、「いつも相談を受ける側の心理士」が「相談する側」の立場にもなることで、クライエントの感覚を意識し続けることも可能です。
自分の専門性を高めるためにも、クライエントのためになるためにも必要な制度だよ!
勉強お疲れさん
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