こんにちは、臨床心理士・公認心理師のしあんです。
心の勉強をするにあたって精神疾患の知識を身に着けることは、援助面でも予防面でも重要になります。
今回は、精神疾患の中でも有名な統合失調症の症状や援助についてざっくり解説します。
✓精神疾患ってやばい人?
✓統合失調症は幻覚・妄想があるって本当?
✓なんか不気味…
✓ぶっちゃけよく分からない
「うつ病は甘え、怠け」のように、心の病気は目に見えないからこそ誤解を受けやすく、統合失調症もまた「よく分からないけどやばそう」のように偏見を持つ人が多いです…。
心理職を目指す人にとっては必須の知識で、心理系大学院の院試でも頻出分野なので、最後まで読んで概要を抑えておきましょう!
そうでない人にとっても、心の病気を知ることで少しの安心を感じ、身近な人へ対応しやすくなるきっかけになります。
統合失調症は進行性&慢性の病気だからこそ知ることが大事だよ
こんな人におすすめ!
✓統合失調症について知りたい人
✓どんな症状があるか気になる人
✓援助の知識を得たい人
✓心理職を目指している人
※心理系大学院受験生は必須!
統合失調症(schizophrenia)とは
統合失調症とは、幻覚などの精神的な症状、意欲低下や感覚の鈍りなど感情機能の低下などで思考や感情、行動、対人関係などが乱れてしまう精神疾患です。
精神病の代表格で、一般ぴーぽーが抱く怖いイメージの典型かも…
統合失調症は100人に1人がかかる病気と言われており、10代半ば~30代頃の発症が多いとされています。
進行性かつ慢性的な精神疾患のため、発症が早いほど予後は悪いと考えられており、寛解しても再発率も高いのが特徴…。
治療は難しく、統合失調症をよく知らない人からすれば「やばい人」「危ない人」など偏見を持たれやすいですが、症状について知り、適切な対応をすれば病気とうまく付き合っていくことも可能と考えられています。
だからこそ心理関係なくても知ってほしいな!
統合失調症の歴史【院試・資格試験受験生向け】
統合失調症と呼ばれるまでの背景として、元々は以下のような概念が提唱されました(院試や資格試験で特に見かけなかったけど、各概念は覚える価値あり)。
・1852年フランスのB. A. モレルが「早発痴呆」(若者が急に痴呆となる精神病)
・1874年ドイツのK. L. カールバウムが「緊張病」(興奮&昏迷)
・1871年E. ヘッカーが「破瓜型」(意欲減退や感情鈍麻で人格崩壊が進む)
これらをまとめてE. クレペリンが「早発性痴呆」と名付けたのがはじまり。
謎の人格水準の低下に先人たちも動揺…
E. クレペリンと言えば躁うつ病、内田クレペリン検査の人
その後、「早発性痴呆は精神機能が分裂しているのでは?(ただのやばい奴じゃなくて脳の病気なんじゃないか?)」と考えたE. ブロイラーが「Schzophrenie」という語を用い、日本では「精神分裂病」と訳されて定着。
シゾフレニー呼びはドイツ語。英語だとスキゾフレニア。ドイツ語読みは覚えるべし
ところが精神分裂病という呼び方では「人格の分裂した人」などいわゆる「やばい人」の偏見を強める呼び名では?誤解を生みやすいのでは?という意見から「統合失調症」という呼び名に変わった背景があります。
ネーミングも誤解の要素だったね…
また、統合失調症に対して薬を使う前は、インスリンショック(インスリン過剰投与で低血糖からのショックを起こす危険なやつ)やロボトミー手術(脳の一部切り取れば治るんじゃね?という荒業で結果は散々…!)などが行われていたとか…。
昔本当にあった怖い話(震)
当初は「人が急におかしくなる」未知の異常だったのが、「脳の異常で病気なんだ」と少しずつ理解が進んでいます。
怖い病気って偏見が強いのは頷ける背景だね…
病気の自覚も周りの理解も超大事
統合失調症の症状
(急に雑図きたな)
統合失調症の主な症状は、外から見て分かりやすい陽性症状と外から見て分かりにくい陰性症状と呼ばれます(症状の総称よりも具体的な症状をチェック!)。
発症の初期や急性期(症状のピーク)には派手な特徴が見られ、次第にうつっぽい特徴へとシフトしていくことが多め。
段階 | ざっくりとした特徴 |
前兆期 | 不眠や焦りなど違和感 |
急性期 | 陽性症状↑↑数週間くらい |
休息期 | 陰性症状↑↑ |
回復期 | 陰性症状↑症状が残ったり |
図や段階がすべてではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返して安定を目指していきます。
陽性症状
陽性症状は、思考や認知の歪み、奇異な言動など身体の外側から見ても読み取れる独特な症状を指します。
▼陽性症状の例
・幻覚、妄想
・まとまりのない言動
・支離滅裂な話
・めちゃくちゃな理屈
・奇妙な姿勢(カタレプシー)
・目標に向けた活動ができない
・考えが止まらない など
会えば独特な印象を受けるよ
幻覚・妄想
幻覚・妄想は特に多く、
・「教祖様が降りてきて自分は一番の使いだ」
・「監視されている」
・「自分の悪い噂が流れている」など
被害的で自分が世界の中心にいるような体験がよくみられます。
生々しすぎる性の話、ぐちゃぐちゃな虫の話などグロい会話とよく会う筆者。。
「死ねと言われる」「~しろと言われる」など聞こえないはずの声が聞こえる幻聴もあり、大抵あたかも現実かのように体験するため、陽性症状のピーク時は病識は欠如しやすいです。
治まってくると病識もてるようになりやすいよ
自我障害
自分と他人の境界線が曖昧になってしまうことを自我障害と言い、自分の考えや認識が崩れてしまう症状もあります。
✓作為体験…誰かに操られている感覚
例:「教祖様があいつを排除しろって!」
✓思考伝播…自分の考えが広まっている感覚
例:「話してないのにあいつが知ってる!」
✓自生思考…考えが浮かんでは止まらない
例:「○○して××して△△して~…」
他にも「自分の頭の中が人に覗かれている?」と感じるなど、自分の感覚があやふやになってしまう特徴があります。
自分が自分であることの大切さを再認識できるね…
思考の障害やその他
統合失調症はいろいろなまとまりが失われてしまう病気で、言動や思考にも奇妙な様子が見られます。
✓連合弛緩…思考や論理が破綻し辻褄が合わなくなる
例:「掃除が大変で、組長になった」とか謎
✓言葉のサラダ…意味のない語の羅列になる
例:「夜を、犬の、時計に、うまかった」とかぐちゃぐちゃ
幻覚・妄想などの症状の影響もあり独語や独笑が見られたり、集中力や判断力の低下、パニックなどがあることも。
読むだけでも大変そうだよね…
陰性症状
陰性症状は、意欲の低下や感情の鈍りなど身体の外側から見て分かりづらい症状を指します。
▼陰性症状の例
・感情の平板化
・意欲低下
・活動性の低下
感情の平板化は、感情表現や表情の変化が乏しくなったり、抑揚のない話し方、無関心など。
今まで興味あったことへ取り組めなくなったり、塞ぎ込んで引きこもりがちになったり、意欲低下により日常生活や対人関係に支障がでることもあります。
うつ病と間違われることも…
▼統合失調症のタイプ
✓幻覚・妄想など陽性症状が多い→妄想型
✓強い緊張や異常な言動が多い→緊張型
✓思考障害やまとまらない言動が多い→解体型(破瓜型)
統合失調症の原因
統合失調症の発症原因は特定されていません。
以前には育成環境が関係していると考えられ、親が子どもに言語と矛盾する非言語メッセージを送って子ども葛藤させる、G. ベイトソンのダブルバインド(二重拘束説)が統合失調症の原因と考えられていた(嫌そうな顔で「こっちにおいで」って子どもを呼ぶとか)
\ 家族でも二重拘束… /
今では、遺伝やストレス、脳の神経伝達物質の異常など多くの要因が絡み合っていると考えられています。
▼代表的な仮説
・ドーパミン仮説
・ストレス脆弱性モデル
ドーパミン仮説
精神医学的には、統合失調症の代表症状である幻覚・妄想は神経伝達物質ドーパミンの過剰分泌が原因と考えられています。
快感とかやる気を引き出すやつ
覚せい剤でドーパミンアップすると、やたらと気持ち良くなったり幻覚が見えたりすると言われているので、ドーパミンの過剰分泌がよろしくないことは確かでしょう…。
ストレス脆弱性モデル
ストレス脆弱性モデルは、中枢神経に遺伝的に持っている「脆弱性(病気にかかりやすい脆さ)」に過度のストレスがかかることで統合失調症が発症するという仮説です。
ストレス耐性(遺伝要因)×ストレス(環境要因)ってイメージ
人は常に何かしらのストレスに晒されていて、パワハラや退職など嫌な出来事以外に結婚などポジティブな出来事もストレスと言われています。
脆弱性もストレスに感じる度合いも人によるので、一概に「心の弱い奴」と決めつけないように。
同じ出来事でも受け止め方は千差万別
統合失調症への援助
統合失調症の症状や段階によって援助方法は変わってきますが、薬物療法と心理学的な介入が有効と考えられています。
お薬!本当に!大事!
薬物療法では抗精神病薬を利用することで、幻覚・妄想などの陽性症状の軽減が期待できます。
急性期など陽性症状が目立つとき、本人は病識に欠けることが多く、薬を自己中断してしまうこともあるため要観察・要注意
おかしな様子が見られ続ける場合は精神科病院への入院で環境を整えて落ち着かせることも大切になります。
自傷・他害の恐れの前に身の安全を図るのも立派な対応だね
薬物療法は感情の平板化などの陰性症状には効きにくいため、陰性症状には心理学的介入を用いることが多め。
▼心理学的介入の例
・SST
・心理教育
・認知行動療法 など
症状100%の消失を目指すというより、本人が日常生活をしていける程度に症状を和らげたり対応を身につけたりして社会復帰できることを目指していきます。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
SSTは、統合失調症の陰性症状へのアプローチとして社会への適応力を身につけるために行う介入です。
人間関係の問題やコミュニケーション、社会復帰のための振る舞いなどをロールプレイで訓練することが多め。
また、医療機関では工作や料理などの簡単な活動を通して、楽しみを見出したり発散の術を身につけたりして生活能力の回復を目指す作業療法を行うこともあります。
座学だとピンとこないかも。『初対面での挨拶の仕方』とか日常を切り抜いて練習するイメージ
意外と陰キャに需要ありそう(ワイもやりたい)
心理教育
急性期など統合失調症の症状が活発なときは現実的な判断が難しくなりやすく、自分が病気であるという感覚がもてないこともあるため(病識欠如)、病識をもって向き合えるように知識や対応を教える援助も行います。
本人だけでなく、その家族にも統合失調症についてや経過、対応などを伝え、家族の病気への理解も深める必要があります。
あくまで本人・家族のつらさも支持した上で関わりましょう
病識をもつことで薬を定期的に飲むなど治療と向き合うきっかけにもなります。
病気に限らず家族の理解は強い(語彙力)
認知行動療法(CBT)
認知行動療法は歪んだ認知や考え方を修正する心理療法を指し、統合失調症の幻覚・妄想(陽性症状)を対象にアプローチできると考えられています。
幻覚・妄想を否定せずに受け止め、それらが実際にあることかどうかを客観的に検討していくことで別な捉え方を身につけたり、幻覚・妄想への注意を逸らして緩和することを目指します。
現場でのCBT需要は高い
おわりに:症状の理解と援助を知ることが回復の近道!
統合失調症は、自分と他人の境界線が曖昧になり、思考や感情、言動、対人関係などのまとまりが失われてしまう病気です。
その背景や元の精神分裂病という呼び方より「やばい人」という偏見をもたれやすいですが、統合失調症とうまく付き合っていくには本人だけでなく周囲の理解もカギになります。
主な症状は下記の通り。
✓陽性症状…割と派手
・幻覚・妄想
・まとまりのない言動
・支離滅裂な話
・めちゃくちゃな理屈
・奇妙な姿勢
・目標に向けた活動ができない
・考えが止まらない など
✓陰性症状…割と地味
・感情の平板化
・意欲低下
・活動性の低下 など
正直他にもあるけど割愛!
原因は特定されていませんが、神経伝達性物質や遺伝、ストレスなど様々な要因が絡み合っているとか。
▼代表的な仮説
・ドーパミン仮説…ドーパミン過剰分泌説
・ストレス脆弱性モデル…病気になりやすさ×ストレス説
進行性&慢性の病気なため治療には時間がかかりやすく、寛解も難しい特徴がありますが、適切な援助で病気とうまく付き合って生活していくことは可能です。
薬の継続と心理的介入が有効だから、医療機関を頼るのがベストだね
心理職を目指す人にとっては、座学も大切ですが病院実習など統合失調症の人と関わる体験が一番大切かもしれません。
援助者になるなら知ることには貪欲に
身近に統合失調症の人がいる場合は、頭ごなしに否定したりきつい態度で当たったりせず、まずは話を聞いて医療機関につなげてみてください。
勉強お疲れ様!
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